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第二部
92.38 オーダーブレイク
しおりを挟む38 オーダーブレイク
「クラウ……コレはどういうことだ――」
「ケージェイ……コレは――こいつらが攻略組みを馬鹿にした、だから罰を与えているんだ」
「……」
「僕たちオーダーは秩序の代行者だろ?だから、こいつらのように何も考えず他人を侮辱する自己中心的なやつらを――」
ザクッという音がその場に響くと、クラウの右腕が体から切り離された。
クラウは自身の身に何が起きたのか理解できず、「は?」と口にする。
そして、自身に何が起こったのか理解した彼は叫んだ。
「はぁぁああああああああああぁあああ!!」
ケージェイは大剣を一振りし、クラウの腕を切り飛ばしたのだ。そして、もう一度振り上げるとゆっくり大剣を肩に置いた。
「誰が勝手に罰を与えることを許したのだ?ラビットか?それともキミ自身か――」
クラウの取り巻きがケージェイに剣を向ける。
「どうして今更……オーダーを捨てた貴様が!!」
クラウは残った手で剣を手に取るとケージェイに切りかかった。
しかし、ケージェイはこのBCOにおいて強さで言うなら2番目に強い男だ。
「オーダー……それは秩序、しかし、それはもう幻想になった――」
素早い攻撃が2回、ここにいる何人がそれを捉えられたのだろうか。
「クラウ……残念だ――」
三度目の切り返しでクラウは弾けた。
オーダーの面々は後退り、囚われていた4人の内の不細工な面にニキビの痕の男がケージェイに言う。
「あんた!他の奴もだ!他の奴らも悪人だ!」
そうケージェイに訴える男。
俺は嫌な予感がした、おそらくビージェイも――
「何してんだよ!早く――」
一閃。
クラウより呆気なく、男はケージェイの大剣の下で赤や黒や紫の光りの欠片に変わってしまった。
「お前たちの罪は――私の秩序の下で罰してやろう」
俺は前に動いたつもりで、だが体は縛られた様に動けない、いや、誰かに押さえられた。
視野を胴に移すとそこには腕が2本、そして、無意識の内に抜いていた剣を持つ右手にも2本の腕があった。胴の腕はマリシャの腕で、右手のはカイトの腕だった。
「駄目だよヤト!今キミがケージェイと戦ったら――」
「――っ!」
「ヤト!しっかりしなさい!たとえヤトがケージェイに勝ったとしても!」
マリシャの言いたいことは分かる。ケージェイを倒したらこの後も続くマリシアスゲームという名のデスゲームで、繰り上がった者がこの先も勝ち続けられる可能性は少ない。
最近俺の対戦相手も確実に実力を上げている。ケージェイと言えど今は戦力。
分かってはいる、分かってはいるんだ、分かっているんだが――
「くそ!!」
この状況に飛び出したいのは俺だけという訳ではなかった。
「コノヤロー!!」
ビージェイがケージェイに切りかかっていた。
2人はおそらく顔を合わせたのは数えるほどだろう。
ケージェイは、誰だという表情でビージェイを見て、思い当たったらしい彼は言う。
「ファミリアのギルドマスターか……」
「だったらなんだ!」
「キミのことは斬るつもりはない、……そうだな、この場はキミに託そう――」
そう言ったケージェイは、ビージェイを軽くあしらうと転移アイテムを手に持つ。
消え去る前にケージェイの視線が俺に向いていたのは、おそらく気のせいではない。その後、オーダーのメンバーは始まりし街のホームへ逃走し、捕まっていた男たちもビージェイに解放された後で、すぐさまその場から去った。
人ごみも消えたその場に残ったのは、俺とビージェイとマリシャとカイト。
カイトはしばらく俺の腕を掴んでいた。へたり込むビージェイにマリシャが声をかける。
その時、乱れた心も整理できぬまま、俺はいつものように視界にVSの文字が点滅して、37回目のマリシアスゲームへと強制転移された。
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