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第二部
102.43 VSプロプレイヤー
しおりを挟む43 VSプロプレイヤー
不敵な笑みを浮かべるジョーカーは、以前と同じように宙に浮いている。。
ジョーカーがBCOに干渉できる権限は、モンスターのステータスとプレイヤーへの会話と、ある程度のシステムロックだけである。
そこは、JPサーバーのように見えるが、テストサーバーで見た目は始まりし街に見えなくもない、というか、そのものであるのかもしれない。
そこにいる人数は8人、ジョーカーの依頼によって集まったプロプレイヤーたち。
そして、口元が隠れる黒いファンタジーコートを身に纏ったヤト。
今回ヤトが制限されているのは以前と同じで、始めから強制的に素手の戦闘を強いられていた。強いられるといっても、ヤト自身装飾のアイテムのおかげで都合が悪くなるという訳ではなかった。
ただ、前回のように簡単には倒されてくれないのがプロプレイヤー。
「もらった!!」
水平切りを回避したヤトが宙に舞っているところに、スキルを発動するエルフ風アバターのプレイヤー。
振りかぶられた歪剣を回避する方法は一つ。歪剣がその身に触れる寸前でそれ自体を基点として、蹴るか殴るかし自身を移動させる。
圧倒的な反射神経がなければできないその芸当、そんなことができるのはヤトを置いてこの世界では他にはいない。
地面に着地するヤトに、大刀を振るう赤鬼のようなアバターのプレイヤー。
「はぁあああああああ!!」
それが振り下ろされるより早く間合いを詰めたヤトは、左足で踏ん張ると勢いと速さで地面のテクスチャーが荒れ、その足を軸に肩を大刀を振るうプレイヤーに右手をぶつける。
触れただけに見えたその瞬間、見た目以上の衝撃で吹き飛ぶプレイヤーは、街中の建物へと叩きつけられて倒れる。
「八極拳の寸勁をやっているのか――」
そんな中、打撃だけで色々な武術を繰り出すヤトをじっくりと、冷静に観察しているプレイヤーが一人いた。金髪に赤い道着を着ているそのプレイヤーは、他のプレイヤーが一斉に戦うのを1人眺めている。
「眺めているだけなのか【バウンティハンター】ともあろう男が――」
立ち上がった赤鬼のようなプレイヤーが、そう言って金髪にの男に近寄る。
「俺は後でいい、今はもう少し観察していたいんだ」
「観察……、体幹だが、アレはチートにしては正面から戦っているように思える」
「ああ、アレはチートじゃないだろうな、しかし、それはどうでもいいことだ。敵は強い方が戦い甲斐があるからな」
クラークは、そう言うと笑みを浮かべるが、内心ではふと疑問に思ったことを考えていた。
以前、俺がSFRで戦った時よりもずっと強くなっているかもしれない。
彼がそう思うのも無理はない、彼が戦ったのはAIの【YATO】で、目の前にいるヤトはそれとは別なのだから。そして、さすがのプロといえども、このBCOのアシストなしの環境が戦闘での足かせになっていた。
「アシストがないのは痛いな、他のタイトルでなら、素手相手にリーチのある武器で負けることはおそらくないはずだ」
赤鬼の男がそう言うと、クラークは笑みを浮かべて「どうかな」と言う。
「あのプレイヤー、おそらくまだ本気を出してはいないだろうな」
「な!アレで手を抜いているというのか?」
鮮やかな青い鎧に長剣を装備した男が、ヤトに片手で投げられて地上を仰ぎ見る。
その瞬間に低い位置にある頭を蹴り飛ばすと、風車のように体が回転して地面に激突する。
その様子を目の当たりにした赤鬼の男は、「……チートよりも凄いぞ」と目を丸くする。
「いや、あれはチーターだ、それも存在そのものが――」
「存在がチート……」
赤鬼の男は恐怖、もしくは〝畏怖〟を感じたのか表情を歪める。
左手の操作でアンプルを出してHPを回復すると、大刀を肩に担いだ。
「さてと~もう少し粘ってみるかな――」
「ふっ……前座としてはもう少し粘ってくれれば、攻略法も見えてきそうだ」
クラークがそう言うと、赤鬼の男は左手を上げてヤトへと向かって行った。
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