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留学と帰還
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シエルは、服を着替えに自室に向かう途中でこの国に来た経緯を思い出していた。
私の名はシエル・ララン。
両親や兄上とは血の繋がりは無いけれど、本当の家族のように愛してくれています。最近は、お義姉様の子供達と仲良く過ごしてたんですの。
こんな言葉使いでドレスも着ていますけれど、歴とした男ですわよ。
ある日、国王陛下である父上に呼び出されましたの。
「シエル、隣国に留学に行かぬか?」
「留学……ですの?」
「そうだ、他国を知る事は、いずれ国を治めるソレイユの力になるはずだ」
「お兄様の……」
お兄様とお義姉様は既に、王太子と王太子妃として公務に励んでいる。
私はと言えば、お義姉様の子供の面倒を見ているだけ……いつも、もどかしい思いでしたわ。
第2王子には、戻らないと決めたのだけれど、お父様達が「良いからいいから」と言って、第2王子の肩書きを戻してしまいましたの!もちろん継承権はありませんけれど。
まぁ、そういう訳で、お兄様たちの力になりたいのに、何も出来ない日々でしたの。
2人の護衛は、他にキチンとした方々が居ますし、影もそうですわ。
「お前が、最近元気が無いとルーナが心配していた」
「お義姉様が...」
「もしお前が、ソレイユの力になりたいというのならば、色々見聞きし見聞を広げてこい。他国に顔を売り、恩も売れれば、交渉も捗ろう」
そういう話しをしたのが、今から3年前の事ですわ。
この国で、私は学べる事は全て学んだつもりです。外国語、地理学、算術学、天文学……学園で首席を争うほどには。
首席を争っていたのは、メイシーナ様ですわ。
ふふ、そんなつもりはありませんでしたけれど、私達はお互いをライバルとし、高めあっていきました。
そんな事もあり、よくお話もしていたんです。もちろん、メイシーナ様の婚約者の話も聞いていました。だから、知ってたんですけど……
私も……、お義姉様の話を良くしてましたの。この世で最も大切で愛しい御方だと。
報われないと分かっていても、決して手放す事など、出来ないのだと。
そんな私の想いを、彼女は笑う事も批判することも無く聞いてくれました。
『不毛ね……けれど少し分かる気がするわ』
だから、一度正直に彼女に申し込んだ事がありますの。1番には愛せないけれど、それでもメイシーナ様をずっと大切にするから…婚約を……と。けれど、自分には婚約者がいて、幼い頃から支えると、決めているからとその時は断られましたわ。
でも……
今なら、答えてくれるんじゃないかと思って……手を差し出したんだが、良かった…。
こんな最低な俺に、付いてきてくれて……彼女の事は、必ず大切にしよう。
自室に戻り、礼装に着替える。
ハーフアップにしていた髪は下ろし、後ろで一つに括る。
マントを羽織り、部屋を出て来た道をもどる。
✾✾✾
一方、会場では……
「おいっ!どういう事だよっ!メイシーナ!お前、浮気していたのか?!」
「する訳ないでしょう。寧ろしていたのは、貴方様ではありませんか」
私の前に、カリエラ伯爵令嬢をくっつけたディオル殿下が立ち塞がりました。
私は、これでも王子妃として立ち居振る舞いには気を付けてきました。男性には2人で会わないようにしましたし、話があっても人気のない場所は選んでませんし、部屋の扉は開けていました。
社交では、殿下の恥にならぬようドレスにも気を使い、公務も手伝って参りました。
カリエラ伯爵令嬢の事は知っていましたが、王家の決めた婚約を勝手に破棄するなんて、正直思いませんでしたわ。
陛下や王妃様から、打診が来るまでは……
あの日、卒業パーティの数日前……
私は陛下に呼び出され、召還に応じました。
「すまんな、メイシーナ嬢」
「いえ……」
「そなたに大事な話があってな」
陛下の執務室に通され待っていたのは、陛下、妃殿下、デュナン第1王子、お父様でした。
「大事は話というのは?」
「ディオルの事じゃ……そなたも知っておろう」
ディオル様がカリエラ様と人目も憚らず、そこかしこで睦み合っている事は知っています。最近ではエスコートも、ファーストダンスも私を選ばなくなりましたから。
「はい」
「あれが、お前との婚約破棄を目論んでおる……とデュナンが調べてきた」
「……え?」
いま、陛下は何と?
私との婚約破棄?
「伯爵令嬢の色仕掛けに、まんまと引っかかりおって情けないっ!…彼奴が婚約破棄を言い出す前に、そなたが望むなら、先に婚約を解消をしておこうと思っての」
「私は、お前のしたいようにすればいいと思っている」
「お父様……」
「最近、オルランディアの王女と仲が良いと聞く。お前はどうしたいんだ?」
「私は……」
あの時に私は……既にシエル様を選んでいる。例えあの方に想い人がいても構わない。
だって、それでも、シエル様は私を愛し大切にしてくれますもの!この男と違ってっ!
「一つ、ディオル様に言っておきます。私は、貴方との婚約を、数日前に解消しております。ですから、婚約破棄は出来ませんわ」
「なっ!!」
「勝手にその方と結ばれて下さい。その場合、王家に名を連ねられるかは分かりませんけれど。では、失礼しますわ」
王族専用の出入口にシエル様を見つけ、私は離れる。
「ちょっ!どういう意味だよっ!待て!」
後ろから、騒がしい声が追いかけて来ますが無視します。もう、私には関係ありませんからね。
「メイシーナ嬢」
目の前の男性に、目を奪われる。
天色の髪は一つに束ねられ、黒を基調とした礼装は腹黒なシエル様に良く似合う。
愛らしい姿は鳴りを潜め、見目麗しい男性がそこにはいた。
彼は右手を差し出し、ダンスに誘う。
「シエル様……」
「今度こそ、この手を取って踊って下さいますね?」
「あら、先程も手は取りましたわよ?踊らなかっただけで」
「!?、そうだったね」
クスクスと笑い、私はシエル様の手を取った。彼のエスコートは完璧で、ダンスも上手でした。学生時代は、女性パートを踊っていたはずですのに、男性パートも完璧ですのね。
足取りも軽く不安もない、シエル様とのダンスは、とても楽しい時間でしたわ。
私はこの数日後、隣国オルランディアに嫁ぎます。シエル様と一緒に、隣国へ参ります。オルランディアには、シエル様から報告すると言っていました。
隣国の王子の結婚だからと、色々準備が必要なのでは?と聞きましたら、……自分は事情持ちだから、結婚相手は自由に選べると。
少し、悲しそうに言っていました。
事後報告で申し訳ないけど……と話してくれた事情に、私は驚いて危うく紅茶を吹き出すところでしたわ。
『巻き込んですまない…その、あまり自由にはならないかも知れない、けど!その、幸せにするっだからっ!』
『はい、大丈夫ですよ。覚悟してシエル様に嫁ぎますから』
『……は、い?』
あの時のシエル様の顔は忘れられませんわね!ふふ
それと同時に、お父様とのやり取りも思い出す。
『お父様、すみません。私、どんな事情があっても……シエル様と一緒に行きたい…です』
『行けばいい。お前があの方の傍で、覚悟を持って支えたいと言うならば、私はもう何も言わん』
『はい、ありがとうございます』
『だが、困ったことがあれば、何時でも頼りなさい。嫁いでもお前は、私の大事な娘なのだからな』
そして迎えた、隣国に旅立つ日
「行ってきますわ、お父様、お母様」
「行ってらっしゃい。気を付けてね。体を大切にしなさい」
馬車に乗り込み、走り出しても私は窓から顔を出しずっと手を振り続けた。
家族が見えなくなって、中に戻るとシエル様と視線が合う。そしてお互いに微笑むと、
「よろしくお願いしますわ、メイシーナ様」
「ええ、よろしくお願いします。シエル様」
シエル様が支えたいと願う方々を、共に、私も共に支えて行きますわ。
────
※1 天文学(占星術含む)
天文学というのが現実にあるかは分かりませんけれど、物語の中では、天気や自然を占い災害を予測する勉強だと思ってください。
調べたけれど、天文という言葉はあれど、天文学は出てこなかったのです。
現実とは異なっていると思います、ご了承ください(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
私の名はシエル・ララン。
両親や兄上とは血の繋がりは無いけれど、本当の家族のように愛してくれています。最近は、お義姉様の子供達と仲良く過ごしてたんですの。
こんな言葉使いでドレスも着ていますけれど、歴とした男ですわよ。
ある日、国王陛下である父上に呼び出されましたの。
「シエル、隣国に留学に行かぬか?」
「留学……ですの?」
「そうだ、他国を知る事は、いずれ国を治めるソレイユの力になるはずだ」
「お兄様の……」
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私はと言えば、お義姉様の子供の面倒を見ているだけ……いつも、もどかしい思いでしたわ。
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まぁ、そういう訳で、お兄様たちの力になりたいのに、何も出来ない日々でしたの。
2人の護衛は、他にキチンとした方々が居ますし、影もそうですわ。
「お前が、最近元気が無いとルーナが心配していた」
「お義姉様が...」
「もしお前が、ソレイユの力になりたいというのならば、色々見聞きし見聞を広げてこい。他国に顔を売り、恩も売れれば、交渉も捗ろう」
そういう話しをしたのが、今から3年前の事ですわ。
この国で、私は学べる事は全て学んだつもりです。外国語、地理学、算術学、天文学……学園で首席を争うほどには。
首席を争っていたのは、メイシーナ様ですわ。
ふふ、そんなつもりはありませんでしたけれど、私達はお互いをライバルとし、高めあっていきました。
そんな事もあり、よくお話もしていたんです。もちろん、メイシーナ様の婚約者の話も聞いていました。だから、知ってたんですけど……
私も……、お義姉様の話を良くしてましたの。この世で最も大切で愛しい御方だと。
報われないと分かっていても、決して手放す事など、出来ないのだと。
そんな私の想いを、彼女は笑う事も批判することも無く聞いてくれました。
『不毛ね……けれど少し分かる気がするわ』
だから、一度正直に彼女に申し込んだ事がありますの。1番には愛せないけれど、それでもメイシーナ様をずっと大切にするから…婚約を……と。けれど、自分には婚約者がいて、幼い頃から支えると、決めているからとその時は断られましたわ。
でも……
今なら、答えてくれるんじゃないかと思って……手を差し出したんだが、良かった…。
こんな最低な俺に、付いてきてくれて……彼女の事は、必ず大切にしよう。
自室に戻り、礼装に着替える。
ハーフアップにしていた髪は下ろし、後ろで一つに括る。
マントを羽織り、部屋を出て来た道をもどる。
✾✾✾
一方、会場では……
「おいっ!どういう事だよっ!メイシーナ!お前、浮気していたのか?!」
「する訳ないでしょう。寧ろしていたのは、貴方様ではありませんか」
私の前に、カリエラ伯爵令嬢をくっつけたディオル殿下が立ち塞がりました。
私は、これでも王子妃として立ち居振る舞いには気を付けてきました。男性には2人で会わないようにしましたし、話があっても人気のない場所は選んでませんし、部屋の扉は開けていました。
社交では、殿下の恥にならぬようドレスにも気を使い、公務も手伝って参りました。
カリエラ伯爵令嬢の事は知っていましたが、王家の決めた婚約を勝手に破棄するなんて、正直思いませんでしたわ。
陛下や王妃様から、打診が来るまでは……
あの日、卒業パーティの数日前……
私は陛下に呼び出され、召還に応じました。
「すまんな、メイシーナ嬢」
「いえ……」
「そなたに大事な話があってな」
陛下の執務室に通され待っていたのは、陛下、妃殿下、デュナン第1王子、お父様でした。
「大事は話というのは?」
「ディオルの事じゃ……そなたも知っておろう」
ディオル様がカリエラ様と人目も憚らず、そこかしこで睦み合っている事は知っています。最近ではエスコートも、ファーストダンスも私を選ばなくなりましたから。
「はい」
「あれが、お前との婚約破棄を目論んでおる……とデュナンが調べてきた」
「……え?」
いま、陛下は何と?
私との婚約破棄?
「伯爵令嬢の色仕掛けに、まんまと引っかかりおって情けないっ!…彼奴が婚約破棄を言い出す前に、そなたが望むなら、先に婚約を解消をしておこうと思っての」
「私は、お前のしたいようにすればいいと思っている」
「お父様……」
「最近、オルランディアの王女と仲が良いと聞く。お前はどうしたいんだ?」
「私は……」
あの時に私は……既にシエル様を選んでいる。例えあの方に想い人がいても構わない。
だって、それでも、シエル様は私を愛し大切にしてくれますもの!この男と違ってっ!
「一つ、ディオル様に言っておきます。私は、貴方との婚約を、数日前に解消しております。ですから、婚約破棄は出来ませんわ」
「なっ!!」
「勝手にその方と結ばれて下さい。その場合、王家に名を連ねられるかは分かりませんけれど。では、失礼しますわ」
王族専用の出入口にシエル様を見つけ、私は離れる。
「ちょっ!どういう意味だよっ!待て!」
後ろから、騒がしい声が追いかけて来ますが無視します。もう、私には関係ありませんからね。
「メイシーナ嬢」
目の前の男性に、目を奪われる。
天色の髪は一つに束ねられ、黒を基調とした礼装は腹黒なシエル様に良く似合う。
愛らしい姿は鳴りを潜め、見目麗しい男性がそこにはいた。
彼は右手を差し出し、ダンスに誘う。
「シエル様……」
「今度こそ、この手を取って踊って下さいますね?」
「あら、先程も手は取りましたわよ?踊らなかっただけで」
「!?、そうだったね」
クスクスと笑い、私はシエル様の手を取った。彼のエスコートは完璧で、ダンスも上手でした。学生時代は、女性パートを踊っていたはずですのに、男性パートも完璧ですのね。
足取りも軽く不安もない、シエル様とのダンスは、とても楽しい時間でしたわ。
私はこの数日後、隣国オルランディアに嫁ぎます。シエル様と一緒に、隣国へ参ります。オルランディアには、シエル様から報告すると言っていました。
隣国の王子の結婚だからと、色々準備が必要なのでは?と聞きましたら、……自分は事情持ちだから、結婚相手は自由に選べると。
少し、悲しそうに言っていました。
事後報告で申し訳ないけど……と話してくれた事情に、私は驚いて危うく紅茶を吹き出すところでしたわ。
『巻き込んですまない…その、あまり自由にはならないかも知れない、けど!その、幸せにするっだからっ!』
『はい、大丈夫ですよ。覚悟してシエル様に嫁ぎますから』
『……は、い?』
あの時のシエル様の顔は忘れられませんわね!ふふ
それと同時に、お父様とのやり取りも思い出す。
『お父様、すみません。私、どんな事情があっても……シエル様と一緒に行きたい…です』
『行けばいい。お前があの方の傍で、覚悟を持って支えたいと言うならば、私はもう何も言わん』
『はい、ありがとうございます』
『だが、困ったことがあれば、何時でも頼りなさい。嫁いでもお前は、私の大事な娘なのだからな』
そして迎えた、隣国に旅立つ日
「行ってきますわ、お父様、お母様」
「行ってらっしゃい。気を付けてね。体を大切にしなさい」
馬車に乗り込み、走り出しても私は窓から顔を出しずっと手を振り続けた。
家族が見えなくなって、中に戻るとシエル様と視線が合う。そしてお互いに微笑むと、
「よろしくお願いしますわ、メイシーナ様」
「ええ、よろしくお願いします。シエル様」
シエル様が支えたいと願う方々を、共に、私も共に支えて行きますわ。
────
※1 天文学(占星術含む)
天文学というのが現実にあるかは分かりませんけれど、物語の中では、天気や自然を占い災害を予測する勉強だと思ってください。
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