18 / 44
第17話 ルナファルナ
しおりを挟む
メシアがプルフンフォレストで魔獣と対峙していた頃……ルナファルナ帝都には、ある国の使者が訪れていた。
「何だと?」
ルナファルナ帝国の王ナファールは、相手の言葉に怒りを抑えられずにいた。
「ですから、我々と致しましてはメシアを我が国ソルシエラに返して頂きたいと申しております。そして、聖女様を欲するならば他の者を提供致しますので」
こいつらは、聖女を何だと思っている?!
代わりのきく道具か何かか?!
しかも、使者の分際でメシアを呼び捨てとはな!
ふざけている!
だいたい、メシアを無能だ役立たずだと言いながら連れ戻す理由はなんだ?
「提供って……道具じゃないのですから…………」
王妃エリスが堪らず使者に抗議の言葉と視線を投げてよこすと、使者は顔を顰めたが直ぐに表情を取り繕った。
「何の問題があるのですかな?聖女なんて、いくらでも替えの聞く……ひぃ」
ソルシエラの使者は、ナファールとルジャイから発せられる殺気を感じ取り、短い悲鳴をあげて後ずさる。しかし、足が言うことを聞かないのか、そのまま後ろに倒れ尻もちをついた。
「む、無能なメシアより……有能な聖女を、か、代わりにくれてやると言っているのです!こ、断る理由がどこに?」
「全てだ」
「は?」
「我々は、聖女メシア様をお前らに返す気は一切ない!帰れ」
ソルシエラの使者は、ルナファルナの王が聖女メシアに敬意を払っているのに疑問を持った。あんな無能に敬意を表す人間などいないと思っていたからだ。
そして、無能で役立たずのメシアなら、直ぐに要らないと返してくると使者は思っていた。だがしかし、宛が外れた。
ルナファルナの王は、聖女メシアをソルシエラに返す気は一切なかったのだ。
「無能が、何の役に?」
「貴様に言う必要は無い、帰れ」
メシアは、役立たずなんかじゃない。だが、こいつらに言う必要は無いだろう。メシアの実力を知り、馬車馬が如く扱き使うのは目に見えているのだから。
「メシアに会わせて頂けますかな?」
「断る」
「何故ですかな?」
「聖女メシア様は、我が国の聖女。貴様らは、引っ込んでてもらおう。無理にでも連れて行こうとすれば、我らは全力で聖女メシア様を守る」
ナファールは、毅然とした態度でソルシエラの使者を見据えた。当然、隣に座っていたエリスもナファールの手を握り使者を見据えた。
ルジャイ、ナジュルミもまた、使者の言葉に腹を立てているが、それらを隠し王と王妃の後ろで静かに立っていた。
「……大聖女の呼び声高い聖女クレアを、こちらに送ると言ってもですかな?」
「当然だ、メシア様以外の聖女など要らぬ」
「天才で優秀ですぞ?」
「ならば、貴様らで囲っていればいい。何故、優秀なクレアを我が国に送り、無能と蔑むメシア様を連れ戻す?」
その時点で、彼らがメシアを優秀だと認めているという事だろうに。というか、時代の大聖女と噂の日暈の聖女であったが……その功績は全てメシアのものなんだろうな。こんなクソ共にメシアは絶対に渡せんな。たとえ、メシアが行くと言っても全力で止める。
「そ、それは……グッ」
「帰れ」
「…………」
「ルジャイ」
「はっ」
退室するよう促しても動く気配のない使者に、ナファールはしびれを切らし大将軍であるルジャイに連れ出すよう命令を下した。
「ナジュルミ……アレから情報を手に入れられるか?」
「お任せ下さい、陛下」
使者は、ルジャイによって強制的に連れ出され、謁見室は静けさを取り戻した。使者を追い出すと、ナファールはナジュルミに使者から情報を手に入れるよう命令を下した。
なぜ彼らが、メシアを連れ戻そうとするのか……その理由を……
「メシア様は、あの国でどういう扱いを受けたのでしょうね?」
「良い扱いでは無かったのは、確かだな」
「分かっていたけれど……辛いわね」
「……そうだな……」
メシアを初めて見た時から、良い扱いをされてない事は分かっていた。年齢を聞かされた時は、嘘だと思った。とても15歳には見えないほど細く、小さく軽い女の子だった。
食も細く、食べた物は……野菜。
肉や魚には、最初一切手を出さなかった…
食べられるようになってきたのは、城に来てから1週間ほど経った頃だ。
俺達がどれほど優しく甘やかしても、恐縮し遠慮するばかりだったメシアが、最近やっと笑顔を見せるようになった。食事だって、やっと普通に食べれるようになってきたんだ。
あんな国に返したくはない。
……彼女が本気で望むなら、方法を考えなくもないが……気は進まぬな。
「陛下!」
「どうした?」
「聖女メシア様が!魔獣を討伐なさったそうです!」
「本当か?!」
「ゾファロ将軍様と戻って来ているそうです!」
「あなた、門まで迎えに」
嬉しそうなエリスの言葉に頷き、俺達はメシアを迎える為に城を出て門に向かった。
「おい、ソルシエラの使者は帰ったな?」
「ルジャイ様が、城の外に連れ出したのは確認しております」
「……メシアの目に触れないよ気を付けろ」
「城の中には、絶対に入れさせません」
「ならばいい」と、ナファールは表情を和らげ、メシアが乗った馬車が来るのを心待ちにした。
やがて、湖の向こう側に馬車が見えて、2人は安堵したのだった。
「何だと?」
ルナファルナ帝国の王ナファールは、相手の言葉に怒りを抑えられずにいた。
「ですから、我々と致しましてはメシアを我が国ソルシエラに返して頂きたいと申しております。そして、聖女様を欲するならば他の者を提供致しますので」
こいつらは、聖女を何だと思っている?!
代わりのきく道具か何かか?!
しかも、使者の分際でメシアを呼び捨てとはな!
ふざけている!
だいたい、メシアを無能だ役立たずだと言いながら連れ戻す理由はなんだ?
「提供って……道具じゃないのですから…………」
王妃エリスが堪らず使者に抗議の言葉と視線を投げてよこすと、使者は顔を顰めたが直ぐに表情を取り繕った。
「何の問題があるのですかな?聖女なんて、いくらでも替えの聞く……ひぃ」
ソルシエラの使者は、ナファールとルジャイから発せられる殺気を感じ取り、短い悲鳴をあげて後ずさる。しかし、足が言うことを聞かないのか、そのまま後ろに倒れ尻もちをついた。
「む、無能なメシアより……有能な聖女を、か、代わりにくれてやると言っているのです!こ、断る理由がどこに?」
「全てだ」
「は?」
「我々は、聖女メシア様をお前らに返す気は一切ない!帰れ」
ソルシエラの使者は、ルナファルナの王が聖女メシアに敬意を払っているのに疑問を持った。あんな無能に敬意を表す人間などいないと思っていたからだ。
そして、無能で役立たずのメシアなら、直ぐに要らないと返してくると使者は思っていた。だがしかし、宛が外れた。
ルナファルナの王は、聖女メシアをソルシエラに返す気は一切なかったのだ。
「無能が、何の役に?」
「貴様に言う必要は無い、帰れ」
メシアは、役立たずなんかじゃない。だが、こいつらに言う必要は無いだろう。メシアの実力を知り、馬車馬が如く扱き使うのは目に見えているのだから。
「メシアに会わせて頂けますかな?」
「断る」
「何故ですかな?」
「聖女メシア様は、我が国の聖女。貴様らは、引っ込んでてもらおう。無理にでも連れて行こうとすれば、我らは全力で聖女メシア様を守る」
ナファールは、毅然とした態度でソルシエラの使者を見据えた。当然、隣に座っていたエリスもナファールの手を握り使者を見据えた。
ルジャイ、ナジュルミもまた、使者の言葉に腹を立てているが、それらを隠し王と王妃の後ろで静かに立っていた。
「……大聖女の呼び声高い聖女クレアを、こちらに送ると言ってもですかな?」
「当然だ、メシア様以外の聖女など要らぬ」
「天才で優秀ですぞ?」
「ならば、貴様らで囲っていればいい。何故、優秀なクレアを我が国に送り、無能と蔑むメシア様を連れ戻す?」
その時点で、彼らがメシアを優秀だと認めているという事だろうに。というか、時代の大聖女と噂の日暈の聖女であったが……その功績は全てメシアのものなんだろうな。こんなクソ共にメシアは絶対に渡せんな。たとえ、メシアが行くと言っても全力で止める。
「そ、それは……グッ」
「帰れ」
「…………」
「ルジャイ」
「はっ」
退室するよう促しても動く気配のない使者に、ナファールはしびれを切らし大将軍であるルジャイに連れ出すよう命令を下した。
「ナジュルミ……アレから情報を手に入れられるか?」
「お任せ下さい、陛下」
使者は、ルジャイによって強制的に連れ出され、謁見室は静けさを取り戻した。使者を追い出すと、ナファールはナジュルミに使者から情報を手に入れるよう命令を下した。
なぜ彼らが、メシアを連れ戻そうとするのか……その理由を……
「メシア様は、あの国でどういう扱いを受けたのでしょうね?」
「良い扱いでは無かったのは、確かだな」
「分かっていたけれど……辛いわね」
「……そうだな……」
メシアを初めて見た時から、良い扱いをされてない事は分かっていた。年齢を聞かされた時は、嘘だと思った。とても15歳には見えないほど細く、小さく軽い女の子だった。
食も細く、食べた物は……野菜。
肉や魚には、最初一切手を出さなかった…
食べられるようになってきたのは、城に来てから1週間ほど経った頃だ。
俺達がどれほど優しく甘やかしても、恐縮し遠慮するばかりだったメシアが、最近やっと笑顔を見せるようになった。食事だって、やっと普通に食べれるようになってきたんだ。
あんな国に返したくはない。
……彼女が本気で望むなら、方法を考えなくもないが……気は進まぬな。
「陛下!」
「どうした?」
「聖女メシア様が!魔獣を討伐なさったそうです!」
「本当か?!」
「ゾファロ将軍様と戻って来ているそうです!」
「あなた、門まで迎えに」
嬉しそうなエリスの言葉に頷き、俺達はメシアを迎える為に城を出て門に向かった。
「おい、ソルシエラの使者は帰ったな?」
「ルジャイ様が、城の外に連れ出したのは確認しております」
「……メシアの目に触れないよ気を付けろ」
「城の中には、絶対に入れさせません」
「ならばいい」と、ナファールは表情を和らげ、メシアが乗った馬車が来るのを心待ちにした。
やがて、湖の向こう側に馬車が見えて、2人は安堵したのだった。
18
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?
月白ヤトヒコ
ファンタジー
健康で、元気なお姉様が羨ましかったの。
物心付いたときから、いつも体調が悪かった。いつもどこかが苦しかった。
お母様が側にいてくれて、ずっと看病してくれた。お父様は、わたしのお医者様の費用やお薬代を稼ぐのが大変なんだってお母様が言ってた。
わたし、知らなかったの。
自分が苦しかったから。お姉様のことを気にする余裕なんてなかったの。
今年こそは、お姉様のお誕生日をお祝いしたかった……んだけど、なぁ。
お姉様のお誕生日を祝うのが、なぜ我儘なの?
※『わたくしの誕生日を家族で祝いたい、ですか? そんな我儘仰らないでくださいな。』の、妹視点。多分、『わたくしの誕生日を~』を先に読んでないとわかり難いかもです。
設定はふわっと。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる