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本編
閑話 誘拐された妹(他視点)
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12年前
「父上、父上!まだかな?まだかな?」
「う、うむ……」
「はぁ、レライエ。少しは落ち着けないのですか?父上も……あなた達が、ソワソワしても仕方ないでしょう。ベリアルを見習いなさい」
「…………」
母の陣痛が始まり部屋に籠ってから、かなりの時間が経っている。しかし、部屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてこない事を考えると、難産なのかも知れない。赤ちゃんも母も無事だといいのだけど……
そのせいか、父上も弟も廊下を行ったり来たり……
ベリアルは……無言で壁によりかかってはいるが、心配そうに、何度も部屋の方に視線を向けているところを見ると、落ち着いてはいないようです。
かくいう僕も、人のことは言えないですけど……
「もう既に、部屋に籠ってから15時間以上……レライエが生まれた時は、10時間もかかってなかったはず……」
未だに、産声は聞こえてこない……
「兄上……」
「落ち着きなさい。大丈夫です…」
そう言うけれど、大丈夫な確証なんて何処にもありません。僕だって、不安なんですから……
でも、だからって僕まで不安な顔してる訳にも行きません。
……そう思って顔を上げたら、頭の上に大きな掌が置かれ撫でらました。
父上……
「……大丈夫。ヴィネは、お前たちの母は……強い人だから」
毅然とした表情で、父上がそう言って……部屋のドアに視線を向けた直後……
「……おんぎゃあぁぁぁっ!」
「っ!!!!」
部屋の中から、大きな泣き声が聞こえた瞬間…父上は早かった……
「ヴィネ!」
ドアが破壊される勢いで中に入り、母上の元へ駆けつけ赤ちゃんを見た途端座り込む。
「あなた……あなた待望の女の子ですよ」
「良かった……良かった……」
父上は座り込んだまま放心していました。先程の毅然とした表情はなく、呆然と母上と赤ちゃんを見つめて……
「貴方達も、そこに立ってないで入ってらっしゃい」
放心した父上を放置し、母上が僕達に声をかけました。僕は、?レライエとベリアルと一緒に中に入り母上が抱く赤ちゃんを見た。
ほんの少し生えた髪は、僕やレライエに似たプラチナブロンド……瞳は、よく見えないけど……何となく、僕の右目やベリアルの色と同じ淡い桃色。
「母上!」
「……」
弟達が、ベッド脇父上の隣で赤ちゃんを覗き込む。
ベリアルは、前がちゃんと見えているのでしょうか?いい加減、前髪を切るように言わなければいけませんね。
そんな事を考えながら、僕も母上の元に向かい赤ちゃんを見る。小さな手を僕達に伸ばし、嬉しそうに笑っている……
生まれたばかりの赤ちゃんは、もっと泣いてる筈ですが、この子は泣いてませんね。将来、大物になりそうです。
「母上、父上。この子の名前は決めているのですか?」
「もちろんよ。……この子は、カイム…」
「カイム?」
「この子も、ハイディオス帝国建国の偉人の名前ですか?」
「そうよ…貴方達と同じ。立派な子に育って欲しいわ」
カイム……可愛い僕の妹……
「さぁ、あなた、カイムを抱いてあげて」
父上の手に、赤ちゃんを渡し優しげに微笑む母上。
カイムを抱いて、だらしない笑みを浮かべる父上。
父上の右手にぶら下がりながら、見せてとせがむレライエ。
レライエとは反対側に立ち背伸びしながら父上の腕の中を覗くベリアル。
僕達は気付かなかった……幸せすぎて。
この時から、カイムを狙っている者がいる事に……
この数日後……
「見つかったか?!」
「申し訳ありません!何処にも、見つかりません!」
「乳母もか?!」
「はい!」
母上の出産を手伝った乳母と、カイムが……姿を消した……
僕達は、たった一人の大切な妹を誘拐されてしまったんだ。信頼していた……僕達3人もお世話になった乳母の手によって……
12年後
「父上。ハイディオス帝国は、探し尽くしました」
「あぁ」
「じゃあ、レヴィ兄上……ヴィロン王国まで手を伸ばすのか?」
ハイディオス帝国で、僕達アンフェル家に手を出す馬鹿はいない……とは思っていました。ですが、それでも絶対ではありませんし、何より僕達は……家族以外はもう、誰も信じない事にしたのです。
でも、ハイディオス帝国に僕達を裏切る馬鹿はいませんでした。
なので、隣国……ヴィロン王国に疑いの目を向けたのです。
「ヴィロン王国は……今までも、ハイディオス帝国に喧嘩を売ってきました。ですが……いくらなんでも、子供に手を出すとは思いませんでしたがね。それも、乳母を寝返らせるとは……」
乳母は、何十年もアンフェル家に使えてきた人物でした。どうやって寝返らせたのか……探し出して拷問してでも吐かせます。
僕は、いや僕達は、絶対に許しません。乳母も黒幕も……楽には死なせません。僕達から妹を奪ったその罪…………絶対に…………
そうして僕と、ベリアル、レライエの3人でヴィロン王国に向か……おうとしたのですが、叔父上が、3人だけだと暴走するから自分も行くと言って聞かず、4人で向かいました。
妹が見つかると良いのですが……
「父上、父上!まだかな?まだかな?」
「う、うむ……」
「はぁ、レライエ。少しは落ち着けないのですか?父上も……あなた達が、ソワソワしても仕方ないでしょう。ベリアルを見習いなさい」
「…………」
母の陣痛が始まり部屋に籠ってから、かなりの時間が経っている。しかし、部屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてこない事を考えると、難産なのかも知れない。赤ちゃんも母も無事だといいのだけど……
そのせいか、父上も弟も廊下を行ったり来たり……
ベリアルは……無言で壁によりかかってはいるが、心配そうに、何度も部屋の方に視線を向けているところを見ると、落ち着いてはいないようです。
かくいう僕も、人のことは言えないですけど……
「もう既に、部屋に籠ってから15時間以上……レライエが生まれた時は、10時間もかかってなかったはず……」
未だに、産声は聞こえてこない……
「兄上……」
「落ち着きなさい。大丈夫です…」
そう言うけれど、大丈夫な確証なんて何処にもありません。僕だって、不安なんですから……
でも、だからって僕まで不安な顔してる訳にも行きません。
……そう思って顔を上げたら、頭の上に大きな掌が置かれ撫でらました。
父上……
「……大丈夫。ヴィネは、お前たちの母は……強い人だから」
毅然とした表情で、父上がそう言って……部屋のドアに視線を向けた直後……
「……おんぎゃあぁぁぁっ!」
「っ!!!!」
部屋の中から、大きな泣き声が聞こえた瞬間…父上は早かった……
「ヴィネ!」
ドアが破壊される勢いで中に入り、母上の元へ駆けつけ赤ちゃんを見た途端座り込む。
「あなた……あなた待望の女の子ですよ」
「良かった……良かった……」
父上は座り込んだまま放心していました。先程の毅然とした表情はなく、呆然と母上と赤ちゃんを見つめて……
「貴方達も、そこに立ってないで入ってらっしゃい」
放心した父上を放置し、母上が僕達に声をかけました。僕は、?レライエとベリアルと一緒に中に入り母上が抱く赤ちゃんを見た。
ほんの少し生えた髪は、僕やレライエに似たプラチナブロンド……瞳は、よく見えないけど……何となく、僕の右目やベリアルの色と同じ淡い桃色。
「母上!」
「……」
弟達が、ベッド脇父上の隣で赤ちゃんを覗き込む。
ベリアルは、前がちゃんと見えているのでしょうか?いい加減、前髪を切るように言わなければいけませんね。
そんな事を考えながら、僕も母上の元に向かい赤ちゃんを見る。小さな手を僕達に伸ばし、嬉しそうに笑っている……
生まれたばかりの赤ちゃんは、もっと泣いてる筈ですが、この子は泣いてませんね。将来、大物になりそうです。
「母上、父上。この子の名前は決めているのですか?」
「もちろんよ。……この子は、カイム…」
「カイム?」
「この子も、ハイディオス帝国建国の偉人の名前ですか?」
「そうよ…貴方達と同じ。立派な子に育って欲しいわ」
カイム……可愛い僕の妹……
「さぁ、あなた、カイムを抱いてあげて」
父上の手に、赤ちゃんを渡し優しげに微笑む母上。
カイムを抱いて、だらしない笑みを浮かべる父上。
父上の右手にぶら下がりながら、見せてとせがむレライエ。
レライエとは反対側に立ち背伸びしながら父上の腕の中を覗くベリアル。
僕達は気付かなかった……幸せすぎて。
この時から、カイムを狙っている者がいる事に……
この数日後……
「見つかったか?!」
「申し訳ありません!何処にも、見つかりません!」
「乳母もか?!」
「はい!」
母上の出産を手伝った乳母と、カイムが……姿を消した……
僕達は、たった一人の大切な妹を誘拐されてしまったんだ。信頼していた……僕達3人もお世話になった乳母の手によって……
12年後
「父上。ハイディオス帝国は、探し尽くしました」
「あぁ」
「じゃあ、レヴィ兄上……ヴィロン王国まで手を伸ばすのか?」
ハイディオス帝国で、僕達アンフェル家に手を出す馬鹿はいない……とは思っていました。ですが、それでも絶対ではありませんし、何より僕達は……家族以外はもう、誰も信じない事にしたのです。
でも、ハイディオス帝国に僕達を裏切る馬鹿はいませんでした。
なので、隣国……ヴィロン王国に疑いの目を向けたのです。
「ヴィロン王国は……今までも、ハイディオス帝国に喧嘩を売ってきました。ですが……いくらなんでも、子供に手を出すとは思いませんでしたがね。それも、乳母を寝返らせるとは……」
乳母は、何十年もアンフェル家に使えてきた人物でした。どうやって寝返らせたのか……探し出して拷問してでも吐かせます。
僕は、いや僕達は、絶対に許しません。乳母も黒幕も……楽には死なせません。僕達から妹を奪ったその罪…………絶対に…………
そうして僕と、ベリアル、レライエの3人でヴィロン王国に向か……おうとしたのですが、叔父上が、3人だけだと暴走するから自分も行くと言って聞かず、4人で向かいました。
妹が見つかると良いのですが……
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