【完結】ざまぁなんて、おかしいですわ!!

紫宛

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本編

ざまぁなんて、おかしいですわ!! 3

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謁見室を出て、白磁の廊下を足早に通り過ぎた。カツカツとヒールの音を響かせ、辿り着いた場所は、謁見室から少し離れた所にある、色とりどりの薔薇が見渡せる庭園だった。

(きゃ~~~!なんで?なんで?なんで?)

「~~~~~~っ!」


先程までの緊張と、最後の陛下のお言葉で顔面爆発寸前だったアリアシアは、声にならならい声を上げて座り込んだ。

座り込んで悶絶してる私を、少し後方で眺めている御方がいるなんて、その時の私には分からなかった。



※※※※※※※※※※※※※


謁見室を足早に出て行くアリアシア嬢。
王妃が喉を詰まらせながら、父上に問いかけた。

「あ、あなた?まさか、アリアシアはグレイルと?」
「ああ、恋仲と聞いている」
「そう……」


叔父上と、アリアシア嬢が……
そんな2人の声を背後にして、私は謁見室を出て行く。……アリアシア嬢を追ってだ。

そして、薔薇園にて彼女を見つけた。

ドレスが汚れるのも厭わず、地面に座り込むアリアシア嬢を見て、やはり令嬢にはキツい状況だったか、と思った。

その時は……

私は彼女に声をかけるのを躊躇い、その場からそっと離れ……王城の兵舎に向かった。




「叔父上」
「ん?レオか、どうした?」

訓練広場では、剣の手合わせや駆け足等、様々な訓練を兵士達が行っていた。その中にいた目的の人物に声を掛け、共に兵舎を後にした。

「叔父上は、アリアシア嬢とどこで会ったのですか?」
「戦場だな」
「え?……」

薔薇園に向かう途中……、グレイル叔父上に2人は何処で会ったのか聞くと、予想外の言葉が帰ってきた。


「お前にも話した事があるだろう?戦場で会った女性の話を」
「あの……叔父上にも叱責し戦場を駆け抜けた女性の話ですか?」
「そうだ」
「……」
「その女性がアリアだ。想像つかんか?」
「ええ、まぁ、今さっき会った女性とかけ離れている気がしますので……」
「あれは、殺気飛び交う戦場を駆け抜けた女だ。兄上には申し訳ないが、王や貴族の視線如きで倒れるような柔な女じゃない」

全く想像出来ません。
叔父上の語るアリアシア嬢と、先程会ったアリアシア嬢が一致しません。

ですが……

薔薇園の方から、ドゴォという音が聞こえ……そちらに視線を移すと、アリアシア嬢が地面を凹ませていた所だった。

「グレイルのバカぁ!」

と言うアリアシア嬢の声が聞こえ、視線を叔父上に移す……

「……な?」

すると叔父上は、「ほらな」と言わんばかりの得意げな顔で豪快に笑って、アリアシア嬢の元に歩いていった。
彼女の背に手を添えて、2人連れ添って離れていくのを、私は柱の影から見送った。





そして迎えた卒業の日。


卒業生代表として、レナレイナ様が在校生の皆さんに、挨拶とこれから先の未来を話しをしていました。
それを憎々しげに見つめるリガート様……

本来なら、第2王子で王太子になる予定のリガート様が代表になるはずでした……

ですが、……成績が……その、残念な結果でしたので、最優秀なレナレイナ様が務めることになったんです。

「では皆様、実りある学園生活を送って下さいね」


卒業式は無事に終わりました。

私達は直ぐに家に帰り、準備をしなければいけません。この後……私達卒業生は、社交デビューを兼ねた卒業パーティがありますので。

まず、私達学生とその親で構成されたパーティが行われ、雰囲気に慣れさせる。そして、王族や他の貴族も参加した夜会が行われるのだ。両陛下に挨拶をして、ファーストダンスを踊るのだけど……夫や婚約者がいる場合は、その方と。居ない場合は、王様達王族の血を持つ方々が相手になってくれます。

私は……あの方と…踊れるかしら?
でもその前に、一悶着ありそうだけど……

チラッと横目でリガート殿下を盗み見ると、隣に居た私の腰を抱き寄せ、側近の方達を連れて広間の中央付近に陣取った。

(触らないで欲しいのですけど……これ以上触れるなら、投げ飛ばしても問題ないかしら…)

ふと側近の方達の方を見れば、皆青ざめている。

だいぶご両親から絞られたみたい……けれど、彼らの状態にリガート様は気付いてない。

なぜ気づかないのかしら?

この後の未来に思いを馳せて、魂を何処かに飛ばしているような、そんな表情をしてますね。

だから、気づかないのかしら?

すると、入口の方が少し騒がしくなった。
レナレイナ様が会場入りしたみたい。


「レナレイナ!!」

リガート様が、声を大きくしてレナレイナ様を呼び付けた。
優雅な足運びで、リガート様の元に歩いてくると「なんです?」と問いかけた。

最初は学生と家族のみのパーティな為、婚約者のエスコート無しでも問題は無いけれど、レナレイナ様がお一人で入場する事に周りは戸惑っていた。

その相手方であるリガート様は、私をエスコートしてましたし……

「リガート様、婚約者が居ながら他の方をエスコートするのは、問題があると思いませんか?」

静かに威厳のある声で、リガート様を諫めたレナレイナ様でしたが、リガート様の耳には届いてないみたいです。

「レナレイナ・アグレシア!そうやって、余裕で居られるのも今のうちだ!

俺は、貴様との婚約、今日限りで破棄させて貰う!そして、アリアシア・レグナスと新たに婚約するものとする!

更にお前は、アリアシアを虐め貶めた罪で国外追放だっ!証拠は上がってるんだぞっ!」

ザワっと周りがザワつく……
女性は扇子で口元を隠し、隣に居た者と話だした。男性達もまた、「うそだろ?」「だが、殿下は本気みたいだぞ?」「アリアシア様に手を出すとか、バカじゃないのか?」と囁きあっていた。

最後の言葉を言った者は、恐らく騎士で……グレイルとアリアシアの仲を知っているから、言える言葉なのだろう。

レナレイナは、リガートの言葉を聞いても涼しい顔だった。
この後の展開を、知っているからだろう。


そこに、透き通るような静かな声が響いた。





「お断りします」




と。




「……は?」


たっぷりと時間をあけて、リガートが訳が分からないと言う顔で、アリアシアの方を向いた。

「え?……」

リガートは、まさか自分に懸想している女性が断ると思っていなかったため、呆然とアリアシアを見つめた。


(あら、馬鹿丸出しでしてよ?リガート様。思い込みも、ここまで来ると流石ですわね)

レナレイナは、口元を扇子で隠し、心の中でリガートを罵った。

「ですから、お断りします。と言っているのです」

もう一度、ハッキリと。
リガートにも分かるように、一音ずつハッキリと発音し、アリアシアは答えた。

「な、何故だ?!」
「迷惑だからです」
「俺の事が好きだろう!」
「いいえ」

再びの否定の言葉に、リガートの思考が停止し、一瞬沈黙が場を支配した。

だがしかし……

「照れてるんだな?大勢の前で、言ってしまったからな。でも、照れて否定しなくてもいいんだぞ?俺が幸せにしてやるからな」
「違います、結構です。だいたい、私には想い人が居ますから」
「それが俺だろう!」
「違います」

復活したリガートの言葉に、この場にいた全ての者の理解の範疇を超えた。
ハッキリと断られているのに、リガートは見当違いの返事ばかり。

「で、でんか!アリアシア様の言葉を、真摯に受け止めてください!」
「リガート様!アリアシア様の言葉に耳を傾けて下さい!」
「自分の世界に入ったらダメです!」

側近の方達が必死にリガート様を止めようとしていますが……リガート様の耳には入ってないようです。

「大丈夫だ!レナレイナとは直ぐに別れるからな!」

そう言って、アリアシアの腰に回した手に力を込めて更に自分の方に抱き寄せた。

それを見た側近や周りの騎士達が戦慄した。

彼らは知っているのだ。
アリアシアを深く愛し、分別を弁えぬ者には容赦をしない、王弟グレイルの存在を。
彼が知れば、王子と言えど鉄拳が飛んで来ることを。

そして、
アリアシアもまた、度を行き過ぎれば……

「リガート様、婚約もしていない女性に無闇に触れるものではありませんよ」
「うるさい!貴様は黙っていろ!いつもいつも、俺のする事にダメ出ししやがって!うるさいんだよっ!
だいたい貴様、アリアに、様々な嫌がらせをした事は分かってるんだぞ!早く破棄に同意しろよ!」

アリアシアの事情を知っているレナレイナが、リガートを止めようとしたが彼は聞こうともしない上に、アリアシアを俺のもの発言をし愛称呼びまでした。

「…………はぁ、分かりましたわ。婚約破棄致しましょう」

レナレイナは、王族専門の入口に視線を流し、ため息をつき、破棄を了承した。そして、自分の従者を呼ぶと婚約破棄の書類にサインをしリガートに渡した。

リガートは、何の疑いもなく書類にサインをし婚約破棄は成立した。

本来ならば、国王陛下が決めた婚約を、勝手に破棄する事は出来ないとなぜ気づかないのか……ましてや、書類が準備されている事にも疑問を感じないなんて…

「よし!さぁ、アリア!俺と婚約し結婚しよう」
「お断りします。あと、勝手に愛称で呼ばないで下さい。それから、いい加減離して下さい」
「ふぇ?!」

(もう、蹴り飛ばしても許されるかな!?我慢も限界!好きでもない男に抱き寄せられている状況に、吐き気がするわ!)




────

申し訳ありません。
1話が6000文字超えしそうだったので、分けましたm(_ _*)m゛
本日中に2話目も投稿し、完結予定ですので、よろしくお願いします。
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