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2.遠野悠斗という男
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毎朝、家を出る前に、玄関にある姿見で身だしなみの確認をする。
鏡の中には、生白い顔を黒い前髪で隠し、黒縁メガネをかけた男が映っている。ブレザー姿の男子高校生だ。ヒョロリとちびっこい、相変わらず冴えない奴。
……小学校の時から、俺はずっと変われずにいる。
はぁ、とため息を漏らしつつ、通学かばんをしっかりと肩に掛け直す。
「いってきまーす」
誰もいない家に向かって、毎朝の挨拶を唱えながら玄関を出た。
「ハル! おはよ」
「ゆうくん、おはよ」
門扉の向こうには、いつも先に悠斗が待っている。
ぐ、今日もハルが眩しい……! 思わず、微笑んでいる悠斗を見る目を細めてしまう。
長めの前髪は自然とサイドに流れていて、整った顔立ちがよく見える。幼馴染だから、小さい頃は一緒に寝たことだってあるが、悠斗は朝起きた時からこの状態だ。特別な何かをして、このキラキラ悠斗が出来ているわけではない。衝撃的すぎる。
幼稚園の頃から、悠斗は俺のことを『ゆうくん』と呼ぶ。優李だから、ゆうくん。家族も含めて、もうこの呼び方をするのは悠斗だけだ。俺も初めは悠斗を『ハルくん』と呼んでいたが、今ではその呼び方が幼過ぎる気がして、『ハル』と呼ぶようになった。
「やっと涼しくなってきたな~。そろそろカーディガン用意しておこうかな」
朝の住宅街を歩きながら、上着の袖をつまむ。高校2年生の夏が終わり、そろそろ秋がやってくる。朝の空気も少しずつキンと張り詰めてきたように感じる。
通学路では駅に急ぎ足で向かうサラリーマンや、保育園に向かう子どもを乗せた自転車が忙しなく行き交う。そんな道を、悠斗と二人、のんびり歩いて登校する。二人とも、家を出るのは少し早めだ。
なんとなく見渡すと、足早に目的地に向かっていたはずの女性や女子高生の視線が一点に集中している。視線の先には悠斗の顔。
俺は人に見られるのが好きじゃない。いつでも、どこでも知らない人から見つめられる悠斗は大丈夫なんだろうか。思わず、悠斗を見上げるが、俺の視線に気づいた悠斗は何でもないように「ん?」とこちらを見やってくれる。
「ゆうくんはすぐに風邪ひいちゃうから、あったかくしたほうがいいよ」
周りのことなど何でもないように、会話を続けてくれる。俺が気にすると、余計に気になっちゃうかもしれない。俺もあまり気にしないほうがいいんだろうな。
うん。気にしない。気にしない。
「小さい頃はハルの方が風邪ひいて寝込んでたのにな~」
何でもないように、いつもの会話を続ける。
「ふふ、俺は丈夫になったよね
たぶん、ゆうくんのご飯のおかげだよ」
「じゃあ、おばあちゃんに感謝だな~
俺の料理の基本を教えてくれたのは、おばあちゃんだから……」
「毎日僕にご飯を作ってくれてるのは、ゆうくんだよ。
いつもありがと」
有無を言わさない美しい笑顔で、伝えられる。
「……うん。わかった。
どういたしまして……?」
真っ直ぐに悠斗に見つめられ、少しだけ、頬に熱が溜まってしまう。
どうかバレませんように。
「あ、ゆうくん、後ろ、ちょっとハネてる」
「えっ、ぅわ、恥ずかしっ」
ワタワタと両手で髪を触ってみるが、ハネには命中しなかったらしい。ちょっと笑いながら、悠斗は俺の後頭部を優しく撫でて寝癖を直してくれる。
すべての意識が後頭部に集中してしまう。大きな手の優しい温もりが、そっと離れていってしまうのを名残惜しく感じながら、ありがとうを伝えた。
ふう、と気づかれない程度に息を吐く。
悠斗は昔から距離が近い。何気ない優しさに体温が上がってしまう。朝の空気がひんやりとしていて助かった。悠斗の体温を感じて上がった顔と耳の熱を、すっと冷やしてくれる。
幼馴染みという距離が、俺の心臓を何度もダメにしそうになる。慣れてもいいようなもんだけど、なんとなく年々悪化してないか……?
先ほどより歩みがゆっくりになってしまうが、横を見ると変わらずに悠斗が穏やかな表情で歩いている。
悠斗は俺なんかより、ずっと背が高くて脚の長さも全然違う。なのに、俺ののんびりした歩みに合わせて歩いてくれるのだ。
こんな幼馴染み、世界中探したっていないだろ。
朝の澄み切った空気を胸いっぱいに吸い込んで、きらきら光る陽の光と、隣の幼馴染みに目を細めながら、通学路を歩いた。
「おーはよ! 今日も王子とご一緒だったね 優李!」
「おはよ、壮司」
「まじで、あのキラキラ王子とずっと一緒に過ごしてて、目がやられないのが信じられない。
今日だって校門入ってきた途端に、女子がキャーキャー言ってたもんね」
教室に入り、後ろの席の久生壮司に声をかけられる。「アイドルかよ」と呟いているが、そういう壮司もクラスの女子が目で追ってしまうほど、整った顔立ちをしている。でも、王子と呼ばれる悠斗の外見はさらに飛び抜けて特別らしい。
基本的に自分から話しかけに行くことができない俺は、1年の頃はずっとクラスでは一人きりで過ごしていた。悠斗は違うクラスだったからだ。それが、2年生に入ってすぐに、壮司が話しかけてくれた。
そこからは、クラスにいるときには大抵壮司と一緒につるんでいる。きっと他の生徒から見れば、「なんで久生くんとあんな眼鏡が?」という組み合わせだろう。
「「きゃぁーーーーっ!」」
「うわ、すごい歓声」
両耳を押さえる壮司の眉間に皺が寄る。教室の窓がビリビリと振動するほどの歓声だ。
廊下で複数の女子の黄色い声が上がっている。確か、隣の2組は一限が体育。ハルが体育のために移動しているんだろう。
ハルの移動と黄色い声がともに動いているらしい。遠のいていく歓声の後に「静かにしろ」「授業始まるぞ!」というような先生の声も混じって聞こえてくる。
「まぁわかるけどね。あんな綺麗な人間、芸能人でも見たことないもん。」
そう。悠斗は驚くほど美しい顔立ちをしている。
一緒に街中に行けば、100メートル歩くだけでいくつもの芸能事務所からスカウトされる。
悠斗の母親は女優だ。だから、芸能界のいいところ、悪いところをよく知っているのか、芸能事務所のスカウトはすべてキッパリと断っている。悠斗はまったく芸能界に興味がないみたいだ。
でも学校でも、電車でも、カフェでも、どこにいても、ほとんどの人の目線は悠斗に注がれる。
壮司が言ってたことはあながち冗談ではないのだ。悠斗の輝くばかりの美しさに、目が眩んでしまいそうになるという人は多い。
「……ハルのいいところは顔だけじゃないけどね。」
「出た。優李の遠野悠斗強火担発言www」
思わず漏れてしまった言葉を、壮司がすぐに茶化す。壮司に教えてもらったが、『強火担』というのはかなり熱い熱量で特定の人を推すファンのことらしい。そういう意味では、確かに俺は悠斗の強火担だと思う。この十数年、ずっと推し続けている。
「笑い事じゃないんだよ。ハルを語るのに、外見だけで終わるなんて失礼極まりない。
大体、成績だってずっと上位で、体育祭でだってずっと独壇場だったの覚えてる?
そのための努力だって惜しまないし、根っから真面目なんだよ…っ!
それほど、素晴らしい称え崇められる存在なのに、こんな地味な人間ともずっと変わらず友人でいてくれるんだよ?
蔑むこともなく…!間違いなくカースト上位の雲の上の人のはずなのに!
家族みたいに大事にしてもらってるんだ……そんな優しい人間この世に存在するか⁈」
「優李が地味な人間かはともかく……王子が優しい人間ねぇ~…」
思わず熱く早口で推しについて語り始めてしまったが、壮司が目を細めて訝しげにこちらを見つめている。
「なんでそこ納得してないんだ! ……ハルは優しい。
俺が小学生の頃、同級生にからかわれてた時期があってさ。辛い時にいつだって助けてくれたのは、ハルだったよ。」
「は? 優李をいじめてた奴がいるってこと?」
壮司が突然気色ばむ。なに、どこに怒ってんの。
「そこじゃない、今はハルが優しいって話をしてんの!」
「俺だって優李をいじめてる奴がいたら、全力で潰しにかかってやるよ!
俺だって優しい。」
「優しい、優しいけど、発言が過激なんだよな、壮司は……」
「えー、なになに、青山くんと壮司、王子の話してるの?」
「俺も気になる~」
「!」
「だって何気に青山くんて、遠野くんとめちゃ仲良いもんね
ね、遠野くんてお菓子だったら何が好きなの?」
「やだリホ、作ってくる気満々じゃん!」
「えーっ、遠野に断られたら俺にくれよソレ」
「なんでよ~」などと言いながら、俺と壮司の席の周りに4人ほどの生徒が集まってきてしまう。
質問への返事がないまま、瞬く間に次の話題へと転換されて、まったく会話に入る余地がない。俺への質問じゃなかった? え、答えなくていいやつ?一体どうすれば……あやふやな表情のまま、思わず俺は固まってしまった。
「はいはい、お前らアクが強い!!
やめて、俺の優李が怯えるから!話すなら一人ひとり順番に喋って!」
「青山、勝手に久生のものにされてんぞw いいのかwww」
「……よ、よくはない」
「え、俺今フラれた? 人生で初めてフラれた……?」
壮司が胸元を押さえて落ち込むふりをすると、ぎゃははは「絶妙にマウントとってくるじゃん」、と笑いが起こる。
……だめだ、壮司とは普通に話ができるが、いきなり複数人で囲まれるのは俺にはハードルが高過ぎる。
結局、壮司に悠斗の優しさは伝わらないまま、担任が教室に入ってくるまで俺は固まり続けていた。
鏡の中には、生白い顔を黒い前髪で隠し、黒縁メガネをかけた男が映っている。ブレザー姿の男子高校生だ。ヒョロリとちびっこい、相変わらず冴えない奴。
……小学校の時から、俺はずっと変われずにいる。
はぁ、とため息を漏らしつつ、通学かばんをしっかりと肩に掛け直す。
「いってきまーす」
誰もいない家に向かって、毎朝の挨拶を唱えながら玄関を出た。
「ハル! おはよ」
「ゆうくん、おはよ」
門扉の向こうには、いつも先に悠斗が待っている。
ぐ、今日もハルが眩しい……! 思わず、微笑んでいる悠斗を見る目を細めてしまう。
長めの前髪は自然とサイドに流れていて、整った顔立ちがよく見える。幼馴染だから、小さい頃は一緒に寝たことだってあるが、悠斗は朝起きた時からこの状態だ。特別な何かをして、このキラキラ悠斗が出来ているわけではない。衝撃的すぎる。
幼稚園の頃から、悠斗は俺のことを『ゆうくん』と呼ぶ。優李だから、ゆうくん。家族も含めて、もうこの呼び方をするのは悠斗だけだ。俺も初めは悠斗を『ハルくん』と呼んでいたが、今ではその呼び方が幼過ぎる気がして、『ハル』と呼ぶようになった。
「やっと涼しくなってきたな~。そろそろカーディガン用意しておこうかな」
朝の住宅街を歩きながら、上着の袖をつまむ。高校2年生の夏が終わり、そろそろ秋がやってくる。朝の空気も少しずつキンと張り詰めてきたように感じる。
通学路では駅に急ぎ足で向かうサラリーマンや、保育園に向かう子どもを乗せた自転車が忙しなく行き交う。そんな道を、悠斗と二人、のんびり歩いて登校する。二人とも、家を出るのは少し早めだ。
なんとなく見渡すと、足早に目的地に向かっていたはずの女性や女子高生の視線が一点に集中している。視線の先には悠斗の顔。
俺は人に見られるのが好きじゃない。いつでも、どこでも知らない人から見つめられる悠斗は大丈夫なんだろうか。思わず、悠斗を見上げるが、俺の視線に気づいた悠斗は何でもないように「ん?」とこちらを見やってくれる。
「ゆうくんはすぐに風邪ひいちゃうから、あったかくしたほうがいいよ」
周りのことなど何でもないように、会話を続けてくれる。俺が気にすると、余計に気になっちゃうかもしれない。俺もあまり気にしないほうがいいんだろうな。
うん。気にしない。気にしない。
「小さい頃はハルの方が風邪ひいて寝込んでたのにな~」
何でもないように、いつもの会話を続ける。
「ふふ、俺は丈夫になったよね
たぶん、ゆうくんのご飯のおかげだよ」
「じゃあ、おばあちゃんに感謝だな~
俺の料理の基本を教えてくれたのは、おばあちゃんだから……」
「毎日僕にご飯を作ってくれてるのは、ゆうくんだよ。
いつもありがと」
有無を言わさない美しい笑顔で、伝えられる。
「……うん。わかった。
どういたしまして……?」
真っ直ぐに悠斗に見つめられ、少しだけ、頬に熱が溜まってしまう。
どうかバレませんように。
「あ、ゆうくん、後ろ、ちょっとハネてる」
「えっ、ぅわ、恥ずかしっ」
ワタワタと両手で髪を触ってみるが、ハネには命中しなかったらしい。ちょっと笑いながら、悠斗は俺の後頭部を優しく撫でて寝癖を直してくれる。
すべての意識が後頭部に集中してしまう。大きな手の優しい温もりが、そっと離れていってしまうのを名残惜しく感じながら、ありがとうを伝えた。
ふう、と気づかれない程度に息を吐く。
悠斗は昔から距離が近い。何気ない優しさに体温が上がってしまう。朝の空気がひんやりとしていて助かった。悠斗の体温を感じて上がった顔と耳の熱を、すっと冷やしてくれる。
幼馴染みという距離が、俺の心臓を何度もダメにしそうになる。慣れてもいいようなもんだけど、なんとなく年々悪化してないか……?
先ほどより歩みがゆっくりになってしまうが、横を見ると変わらずに悠斗が穏やかな表情で歩いている。
悠斗は俺なんかより、ずっと背が高くて脚の長さも全然違う。なのに、俺ののんびりした歩みに合わせて歩いてくれるのだ。
こんな幼馴染み、世界中探したっていないだろ。
朝の澄み切った空気を胸いっぱいに吸い込んで、きらきら光る陽の光と、隣の幼馴染みに目を細めながら、通学路を歩いた。
「おーはよ! 今日も王子とご一緒だったね 優李!」
「おはよ、壮司」
「まじで、あのキラキラ王子とずっと一緒に過ごしてて、目がやられないのが信じられない。
今日だって校門入ってきた途端に、女子がキャーキャー言ってたもんね」
教室に入り、後ろの席の久生壮司に声をかけられる。「アイドルかよ」と呟いているが、そういう壮司もクラスの女子が目で追ってしまうほど、整った顔立ちをしている。でも、王子と呼ばれる悠斗の外見はさらに飛び抜けて特別らしい。
基本的に自分から話しかけに行くことができない俺は、1年の頃はずっとクラスでは一人きりで過ごしていた。悠斗は違うクラスだったからだ。それが、2年生に入ってすぐに、壮司が話しかけてくれた。
そこからは、クラスにいるときには大抵壮司と一緒につるんでいる。きっと他の生徒から見れば、「なんで久生くんとあんな眼鏡が?」という組み合わせだろう。
「「きゃぁーーーーっ!」」
「うわ、すごい歓声」
両耳を押さえる壮司の眉間に皺が寄る。教室の窓がビリビリと振動するほどの歓声だ。
廊下で複数の女子の黄色い声が上がっている。確か、隣の2組は一限が体育。ハルが体育のために移動しているんだろう。
ハルの移動と黄色い声がともに動いているらしい。遠のいていく歓声の後に「静かにしろ」「授業始まるぞ!」というような先生の声も混じって聞こえてくる。
「まぁわかるけどね。あんな綺麗な人間、芸能人でも見たことないもん。」
そう。悠斗は驚くほど美しい顔立ちをしている。
一緒に街中に行けば、100メートル歩くだけでいくつもの芸能事務所からスカウトされる。
悠斗の母親は女優だ。だから、芸能界のいいところ、悪いところをよく知っているのか、芸能事務所のスカウトはすべてキッパリと断っている。悠斗はまったく芸能界に興味がないみたいだ。
でも学校でも、電車でも、カフェでも、どこにいても、ほとんどの人の目線は悠斗に注がれる。
壮司が言ってたことはあながち冗談ではないのだ。悠斗の輝くばかりの美しさに、目が眩んでしまいそうになるという人は多い。
「……ハルのいいところは顔だけじゃないけどね。」
「出た。優李の遠野悠斗強火担発言www」
思わず漏れてしまった言葉を、壮司がすぐに茶化す。壮司に教えてもらったが、『強火担』というのはかなり熱い熱量で特定の人を推すファンのことらしい。そういう意味では、確かに俺は悠斗の強火担だと思う。この十数年、ずっと推し続けている。
「笑い事じゃないんだよ。ハルを語るのに、外見だけで終わるなんて失礼極まりない。
大体、成績だってずっと上位で、体育祭でだってずっと独壇場だったの覚えてる?
そのための努力だって惜しまないし、根っから真面目なんだよ…っ!
それほど、素晴らしい称え崇められる存在なのに、こんな地味な人間ともずっと変わらず友人でいてくれるんだよ?
蔑むこともなく…!間違いなくカースト上位の雲の上の人のはずなのに!
家族みたいに大事にしてもらってるんだ……そんな優しい人間この世に存在するか⁈」
「優李が地味な人間かはともかく……王子が優しい人間ねぇ~…」
思わず熱く早口で推しについて語り始めてしまったが、壮司が目を細めて訝しげにこちらを見つめている。
「なんでそこ納得してないんだ! ……ハルは優しい。
俺が小学生の頃、同級生にからかわれてた時期があってさ。辛い時にいつだって助けてくれたのは、ハルだったよ。」
「は? 優李をいじめてた奴がいるってこと?」
壮司が突然気色ばむ。なに、どこに怒ってんの。
「そこじゃない、今はハルが優しいって話をしてんの!」
「俺だって優李をいじめてる奴がいたら、全力で潰しにかかってやるよ!
俺だって優しい。」
「優しい、優しいけど、発言が過激なんだよな、壮司は……」
「えー、なになに、青山くんと壮司、王子の話してるの?」
「俺も気になる~」
「!」
「だって何気に青山くんて、遠野くんとめちゃ仲良いもんね
ね、遠野くんてお菓子だったら何が好きなの?」
「やだリホ、作ってくる気満々じゃん!」
「えーっ、遠野に断られたら俺にくれよソレ」
「なんでよ~」などと言いながら、俺と壮司の席の周りに4人ほどの生徒が集まってきてしまう。
質問への返事がないまま、瞬く間に次の話題へと転換されて、まったく会話に入る余地がない。俺への質問じゃなかった? え、答えなくていいやつ?一体どうすれば……あやふやな表情のまま、思わず俺は固まってしまった。
「はいはい、お前らアクが強い!!
やめて、俺の優李が怯えるから!話すなら一人ひとり順番に喋って!」
「青山、勝手に久生のものにされてんぞw いいのかwww」
「……よ、よくはない」
「え、俺今フラれた? 人生で初めてフラれた……?」
壮司が胸元を押さえて落ち込むふりをすると、ぎゃははは「絶妙にマウントとってくるじゃん」、と笑いが起こる。
……だめだ、壮司とは普通に話ができるが、いきなり複数人で囲まれるのは俺にはハードルが高過ぎる。
結局、壮司に悠斗の優しさは伝わらないまま、担任が教室に入ってくるまで俺は固まり続けていた。
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