9 / 252
第9話
しおりを挟む
◆神坂春華 視点◆
フユが二之宮さんに襲いかかろうとしてたところを鷺ノ宮が捕まえたという話を聞いた時は信じられなかった。
だから、幼なじみの美波ちゃんと一緒にフユに直接話を聞きに行ったんだ。
「冬樹、二之宮さんに襲いかかったって嘘だよね?」
美波ちゃんがフユに尋ねたら驚くべき返答があった。
「ふたりとも落ち着いて聞いて欲しいんだけど、僕が二之宮さんの触れるべきでないところを触ってしまったというのは事実だ。だけ」
「冬樹、最低だよ!」
「そうだよフユ!それは人として絶対にダメなことだよ!」
「冬樹のことを信じたかったけど、そんなんだったなんて!」
「ちょっと、美波、落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられるわけ無いでしょ!」
「そうだよ、フユ!」
「二度とわたしに話しかけないで!」
「あたしにも話しかけないでね!お姉やパパママにもちゃんと言うから!」
後になって思えば、この時ちゃんとフユの話を聞いていなかった。
フユの口から出てきた衝撃的な内容で思考が吹き飛んでしまって、美波ちゃんとふたりで興奮し勢いで話を打ち切ってしまった。
そして、その冷静さを失ったまま『フユがクラスメイトの女子に襲いかかった』と家族に言ってしまったのが大きな間違いだった。
お姉もパパママもあたしがフユ本人から直接聞いたと言って話をしてしまったから、フユから直接話を聞かずに家族みんなの感情が荒れるままに暴言で批難し絶縁するとまで言ってしまった。
フユはろくに言い返すこともなく『お世話になりました。でも、話をちゃんと聞いて欲しかったです』と言ってその日の内に家を出ていってしまった。その後、ほぼ毎日登校しているから傷病なく過ごしているのはわかっていたけど、どうしているのかは家族の誰も知らなかった。
学校ではフユが二之宮さんに襲いかかったことが事実として広まっていき、しかも日に日にそれが事実として定着していった。
後になって考えれば双子のあたしや幼馴染みの美波ちゃんが事実として受け止めて振る舞っていたのだから、それを見ていた学校のみんなが事実だと思ってしまうのは当然のことで、それに気付かずみんなが事実だと思っているのだから事実なんだと思い込む悪循環に陥っていた。
また、鷺ノ宮も噂を広めるように動いていたのだと今ならわかる。
よくよく考えれば二之宮さんが襲われていたのが真実ならパパママが呼び出されフユは停学や退学などの処分を受けていたはずだけど、そんなこともなかったのだから学校が処分をしないだけの状況だったわけで、その事にだって気付くべきだったのだけど、あたしが気付いたのはしばらく経ってからだった。
フユが家を出ていってから家は雰囲気が重くなり、お姉は生徒会役員の仕事だと言っては帰宅が遅くなって、パパママは仕事をたくさん入れるようにしたのか留守が多くなっていたので家族で話をする時間は激減したし、また美波ちゃんもあたしと話すのが気まずいのか全く交流しなくなってしまった。
落ち着いたらフユが悪くないことは確信できていたし、早く仲直りがしたかった。あたしが強く否定した引け目があったので尻込みしてしまっていたけど、夏休みに入ったら1ヶ月以上姿を見ることすらできなくなることに思い至り、期末テストが終わったらちゃんと話をしてもらおうと思っていた。
そうしたら、フユを捕まえた鷺ノ宮が警察に捕まり二之宮さんが真実を語ってフユの疑いは晴れた。それはすごく嬉しいのだけど、タイミングとしては最悪だ。これから話をしてもらおうと思っていたのに、今話しかけても疑いが晴れたから手のひらを返した様にしか思えない。
更には美波ちゃんが鷺ノ宮にハメられて多くの男子生徒に辱められていたという事まで知り泣き出したくなった。
とは言え、どんなに悪い状況でもフユと話をしないわけにはいかないので、真実を知った翌朝フユのクラスまで行き話しかけたけど素気無く拒絶された。美波ちゃんもあたしと同じ様に拒絶されててもうどうしようもないのかと思ったけれど、それでも諦めきれなくて休み時間に出直したら家に顔を出してくれると約束してくれた。美波ちゃんも話をしてもらえるとのことだし、良かったと思う。それにしても出直した時のフユはすごく機嫌が良い感じでいくら疑いが晴れたからと言っても不自然な気がして少し引っ掛かった。
フユが二之宮さんに襲いかかろうとしてたところを鷺ノ宮が捕まえたという話を聞いた時は信じられなかった。
だから、幼なじみの美波ちゃんと一緒にフユに直接話を聞きに行ったんだ。
「冬樹、二之宮さんに襲いかかったって嘘だよね?」
美波ちゃんがフユに尋ねたら驚くべき返答があった。
「ふたりとも落ち着いて聞いて欲しいんだけど、僕が二之宮さんの触れるべきでないところを触ってしまったというのは事実だ。だけ」
「冬樹、最低だよ!」
「そうだよフユ!それは人として絶対にダメなことだよ!」
「冬樹のことを信じたかったけど、そんなんだったなんて!」
「ちょっと、美波、落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられるわけ無いでしょ!」
「そうだよ、フユ!」
「二度とわたしに話しかけないで!」
「あたしにも話しかけないでね!お姉やパパママにもちゃんと言うから!」
後になって思えば、この時ちゃんとフユの話を聞いていなかった。
フユの口から出てきた衝撃的な内容で思考が吹き飛んでしまって、美波ちゃんとふたりで興奮し勢いで話を打ち切ってしまった。
そして、その冷静さを失ったまま『フユがクラスメイトの女子に襲いかかった』と家族に言ってしまったのが大きな間違いだった。
お姉もパパママもあたしがフユ本人から直接聞いたと言って話をしてしまったから、フユから直接話を聞かずに家族みんなの感情が荒れるままに暴言で批難し絶縁するとまで言ってしまった。
フユはろくに言い返すこともなく『お世話になりました。でも、話をちゃんと聞いて欲しかったです』と言ってその日の内に家を出ていってしまった。その後、ほぼ毎日登校しているから傷病なく過ごしているのはわかっていたけど、どうしているのかは家族の誰も知らなかった。
学校ではフユが二之宮さんに襲いかかったことが事実として広まっていき、しかも日に日にそれが事実として定着していった。
後になって考えれば双子のあたしや幼馴染みの美波ちゃんが事実として受け止めて振る舞っていたのだから、それを見ていた学校のみんなが事実だと思ってしまうのは当然のことで、それに気付かずみんなが事実だと思っているのだから事実なんだと思い込む悪循環に陥っていた。
また、鷺ノ宮も噂を広めるように動いていたのだと今ならわかる。
よくよく考えれば二之宮さんが襲われていたのが真実ならパパママが呼び出されフユは停学や退学などの処分を受けていたはずだけど、そんなこともなかったのだから学校が処分をしないだけの状況だったわけで、その事にだって気付くべきだったのだけど、あたしが気付いたのはしばらく経ってからだった。
フユが家を出ていってから家は雰囲気が重くなり、お姉は生徒会役員の仕事だと言っては帰宅が遅くなって、パパママは仕事をたくさん入れるようにしたのか留守が多くなっていたので家族で話をする時間は激減したし、また美波ちゃんもあたしと話すのが気まずいのか全く交流しなくなってしまった。
落ち着いたらフユが悪くないことは確信できていたし、早く仲直りがしたかった。あたしが強く否定した引け目があったので尻込みしてしまっていたけど、夏休みに入ったら1ヶ月以上姿を見ることすらできなくなることに思い至り、期末テストが終わったらちゃんと話をしてもらおうと思っていた。
そうしたら、フユを捕まえた鷺ノ宮が警察に捕まり二之宮さんが真実を語ってフユの疑いは晴れた。それはすごく嬉しいのだけど、タイミングとしては最悪だ。これから話をしてもらおうと思っていたのに、今話しかけても疑いが晴れたから手のひらを返した様にしか思えない。
更には美波ちゃんが鷺ノ宮にハメられて多くの男子生徒に辱められていたという事まで知り泣き出したくなった。
とは言え、どんなに悪い状況でもフユと話をしないわけにはいかないので、真実を知った翌朝フユのクラスまで行き話しかけたけど素気無く拒絶された。美波ちゃんもあたしと同じ様に拒絶されててもうどうしようもないのかと思ったけれど、それでも諦めきれなくて休み時間に出直したら家に顔を出してくれると約束してくれた。美波ちゃんも話をしてもらえるとのことだし、良かったと思う。それにしても出直した時のフユはすごく機嫌が良い感じでいくら疑いが晴れたからと言っても不自然な気がして少し引っ掛かった。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる