97 / 252
第97話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
まったく気が乗らないけど、この期に及んで避けて通れない美波とのビデオチャット約束の時間になった。
こちらは、いつもの通り僕と美晴さんで、すぐ近くには仕事から帰ってきて寛いでいるみゆきさんがスマホ片手にこちらの様子を見ている。
パソコンの向こう側はビデオチャットでははじめてのやり取りとなる美波と、既に恒例になりつつある姉さんとハルも一緒の予定だ。
「もしもし、冬樹です。映像や音声は大丈夫?」
『夏菜だ。こちらは見聞きできてる』
「良かった。こっちは隣に美晴さんもいるけど見えてる?」
『美晴お姉も見えてるよ』
「美波もいるのかしら?」
『うん、いるよ。お姉ちゃん』
「それじゃあ、準備もできたし始めようか。まずは美波、久しぶり」
『うん、久しぶり。冬樹は元気そうだね』
「そうだな。美晴さんのおかげもあって割りと落ち着いた気持ちで日々を過ごせてるよ。
美波はどうなんだ?」
『わたしはあんまりよくないかな?
二之宮さんとは仲良くなってるけど・・・』
「その二之宮なんだけど、姉さんから話を聞いてないか?
鷺ノ宮達を利用して僕の痴漢冤罪をでっちあげたらしいって」
『あのさ、それ本当なの?
二之宮さんがそんなことをした様には思えないんだけど・・・』
「そうか?少なくともはっきりしていることだけでも、1年以上前から多くのオジサンを相手にパパ活をやっててその内のひとりに拉致監禁されたんだぞ?
そんな奴のどこを信じられるんだ?」
『それは・・・そうかもしれないけど、話せばきっとなんか理由があるんじゃないかな?』
「どんな?」
『それはわかんないけど・・・』
「じゃあ、美波はわからないけどとにかく二之宮は信じられると言うんだな?」
『・・・うん』
わかっていたことだけど、美波は単純接触効果で二之宮に靡いてしまっているみたいだ。
ここからは賭けになるけど切り出すしかなさそうだ・・・
「わかった。じゃあ、二之宮の件で白黒がはっきりするまで、僕は美波とも距離を置く。
どれだけ時間がかかるかわからないけど、美波が二之宮を信じるというのなら決着するまでは関わらない様にするよ」
『なんで!?
そんなひどいことを言うの!?』
「なんで?
僕は現時点でも証拠がないだけで二之宮がクロだと思っている。
そのクロだと思っている相手を信じるというのなら、その信じると言う人間とも付き合いたくないと思うのは自然な話だろ?」
『わたしと冬樹の仲じゃない!』
「それはもう壊れただろ?
今の美波は僕にとっては、自分を冤罪で陥れた男と交際していて、更にその後ろで冤罪の絵図を描いていた人間を信じると言い、付き合っている人間だ。
それまで長年積み上げてきていた信頼は粉々に砕けているよ。
本当はこうやって話すのだって不快だよ。
それでも大事な美晴さんの妹だし、岸元の小父さん小母さんにもお世話になっていた感謝の気持ちがあるから話しているんだ」
『それは鷺ノ宮君が・・・わたしを陥れたから・・・
わたしだって鷺ノ宮君にひどい目に合わされたんだよ!
鷺ノ宮くんの友達たちに酷いことをされたんだよ!
それで妊ッ・・・
・・・とにかく大変だったの!可哀想だったの!何でわかってくれないの!』
「美波、僕だって二之宮と鷺ノ宮のせいで学校中が敵になり、姉さんやハルに美波だって見て見ぬふりをしていて孤立していたんだよ。
しかも、美波はわかるどころか、鷺ノ宮と付き合ってただろ?」
『だからっ!』
「もういいよ、美波。これ以上は平行線だよ。
姉さん、ハル、美晴さん。悪いけど、僕はこれで失礼するね。
あとは美晴さん、お願いします」
「ええ、わかったわ。
と言っても、私からも特に話すべきと思うことがないのだけど、そっちにはある?」
『いえ、今日はこれ以上話してても荒れるだけだと思いますので・・・
美波のことは私と春華に任せてください』
『うん、そうだね。美波ちゃんのことはあたし達で話してみるから、また今度お話してください』
「ふたりともごめんなさいね、駄目な妹で・・・よろしくお願いね」
そう言うと、美晴さんは早々にビデオチャットを切断した。
「すみません、美晴さん・・・やっぱり、美波のことは理解できないです」
「こっちこそ妹がごめんね。
ほんと、どうしちゃったのかしら・・・?」
「冬樹も美晴ちゃんも身内のことだからかしら?
単純な事が見えてないのね?」
まったく気が乗らないけど、この期に及んで避けて通れない美波とのビデオチャット約束の時間になった。
こちらは、いつもの通り僕と美晴さんで、すぐ近くには仕事から帰ってきて寛いでいるみゆきさんがスマホ片手にこちらの様子を見ている。
パソコンの向こう側はビデオチャットでははじめてのやり取りとなる美波と、既に恒例になりつつある姉さんとハルも一緒の予定だ。
「もしもし、冬樹です。映像や音声は大丈夫?」
『夏菜だ。こちらは見聞きできてる』
「良かった。こっちは隣に美晴さんもいるけど見えてる?」
『美晴お姉も見えてるよ』
「美波もいるのかしら?」
『うん、いるよ。お姉ちゃん』
「それじゃあ、準備もできたし始めようか。まずは美波、久しぶり」
『うん、久しぶり。冬樹は元気そうだね』
「そうだな。美晴さんのおかげもあって割りと落ち着いた気持ちで日々を過ごせてるよ。
美波はどうなんだ?」
『わたしはあんまりよくないかな?
二之宮さんとは仲良くなってるけど・・・』
「その二之宮なんだけど、姉さんから話を聞いてないか?
鷺ノ宮達を利用して僕の痴漢冤罪をでっちあげたらしいって」
『あのさ、それ本当なの?
二之宮さんがそんなことをした様には思えないんだけど・・・』
「そうか?少なくともはっきりしていることだけでも、1年以上前から多くのオジサンを相手にパパ活をやっててその内のひとりに拉致監禁されたんだぞ?
そんな奴のどこを信じられるんだ?」
『それは・・・そうかもしれないけど、話せばきっとなんか理由があるんじゃないかな?』
「どんな?」
『それはわかんないけど・・・』
「じゃあ、美波はわからないけどとにかく二之宮は信じられると言うんだな?」
『・・・うん』
わかっていたことだけど、美波は単純接触効果で二之宮に靡いてしまっているみたいだ。
ここからは賭けになるけど切り出すしかなさそうだ・・・
「わかった。じゃあ、二之宮の件で白黒がはっきりするまで、僕は美波とも距離を置く。
どれだけ時間がかかるかわからないけど、美波が二之宮を信じるというのなら決着するまでは関わらない様にするよ」
『なんで!?
そんなひどいことを言うの!?』
「なんで?
僕は現時点でも証拠がないだけで二之宮がクロだと思っている。
そのクロだと思っている相手を信じるというのなら、その信じると言う人間とも付き合いたくないと思うのは自然な話だろ?」
『わたしと冬樹の仲じゃない!』
「それはもう壊れただろ?
今の美波は僕にとっては、自分を冤罪で陥れた男と交際していて、更にその後ろで冤罪の絵図を描いていた人間を信じると言い、付き合っている人間だ。
それまで長年積み上げてきていた信頼は粉々に砕けているよ。
本当はこうやって話すのだって不快だよ。
それでも大事な美晴さんの妹だし、岸元の小父さん小母さんにもお世話になっていた感謝の気持ちがあるから話しているんだ」
『それは鷺ノ宮君が・・・わたしを陥れたから・・・
わたしだって鷺ノ宮君にひどい目に合わされたんだよ!
鷺ノ宮くんの友達たちに酷いことをされたんだよ!
それで妊ッ・・・
・・・とにかく大変だったの!可哀想だったの!何でわかってくれないの!』
「美波、僕だって二之宮と鷺ノ宮のせいで学校中が敵になり、姉さんやハルに美波だって見て見ぬふりをしていて孤立していたんだよ。
しかも、美波はわかるどころか、鷺ノ宮と付き合ってただろ?」
『だからっ!』
「もういいよ、美波。これ以上は平行線だよ。
姉さん、ハル、美晴さん。悪いけど、僕はこれで失礼するね。
あとは美晴さん、お願いします」
「ええ、わかったわ。
と言っても、私からも特に話すべきと思うことがないのだけど、そっちにはある?」
『いえ、今日はこれ以上話してても荒れるだけだと思いますので・・・
美波のことは私と春華に任せてください』
『うん、そうだね。美波ちゃんのことはあたし達で話してみるから、また今度お話してください』
「ふたりともごめんなさいね、駄目な妹で・・・よろしくお願いね」
そう言うと、美晴さんは早々にビデオチャットを切断した。
「すみません、美晴さん・・・やっぱり、美波のことは理解できないです」
「こっちこそ妹がごめんね。
ほんと、どうしちゃったのかしら・・・?」
「冬樹も美晴ちゃんも身内のことだからかしら?
単純な事が見えてないのね?」
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる