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第105話
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◆高梨百合恵 視点◆
「神坂とかいう生徒のところへ行くのか?」
食料品や日用品の買い出しへ行こうとしただけなのに、悠一さんから唐突に冬樹君の名前を出されて思考が停止してしまった。
「おい、どうなんだ!」
あまりに唐突で何を言えば良いのか分からず返事ができないでいると更に悠一さんの追及の声が強くなった。なんとか考えをまとめ返事をした。
「食料品や日用品の買い出しへ行くだけですよ。
神坂君の名前をどこで聞いたのかはわかりませんけど、彼は最近縁があって交流が増えていますけど、ただの生徒です。
なんならついてきますか?
お米も少なくなって買いたいですし、持ってもらえると助かります」
「いや、すまない。
それと、荷物持ちが必要なら一緒に行かせてもらうよ」
口では落ち着いたような事を言うけど、態度が不満そうではあるのでここはひとつちゃんと話をするべきではないかと考え切り出すことにした。
「悠一さん、この際ですから今後のことについてちゃんとお話しませんか?」
「今後のこと?」
「そうです。今後も夫婦としてやっていくのかどうかです。
7月の時はわたしが押し切って有耶無耶にしてしまったところがありましたから」
「俺は別れたくない」
「それはどうしてですか?」
「百合恵を愛しているからに決まっているだろ!」
「わたしは愛されているという実感を持てていませんが?」
「それはすまなかった。実感を持ってもらえるように努力する」
「具体的にはどの様になさるおつもりですか?」
「すまない。どうすれば良いのかわからない・・・
でも、百合恵が言う事なら何でも聞くから言って欲しい」
「今更なんなのですか?
ずっと教師を続けたいと言っていたのを辞めろと言い続けていたのに、今更なんでも聞くなんて言われても信じようがありません。
それに悠一さんはこどもが欲しいと言っていましたけど、そのことについてはどうされるんですか?」
「仕事の件については、本当に申し訳なかった。
あのあと、色んな人に意見を聞いて女性でもやりがいを持って働いている人がたくさんいる事を理解したし、もちろん百合恵もそのひとりだと今はちゃんとわかっている。
こどもについては原因の究明から不妊治療まで視野に入れて欲しいと思っている」
「そのあたりについてはわかりました・・・」
この際なので、色々と深いところまで話をした。わたしが開き直っているからなのか、今までで一番深い話し合いになったと思う。
「・・・ところで、先程神坂君の名前が出てきましたけど、どうして疑われたのですか?」
「それは、先日百合恵のところの生徒が話しかけてきて、こういうやり取りをしているとメッセージアプリのやり取りの一部を見せてもらったんだ」
「その生徒って、見た目がとても美人な女子じゃありませんでした?」
「そうだな。印象的な美人と言って良い見た目だった」
「その生徒は名乗りませんでした?」
「ああ、名前は聞いていないな」
「まぁ彼女なら名乗りそうでもありますけどね。
そんな名乗りもしない相手の言うことに翻弄されないでほしかったですね」
「それは・・・すまない」
「それに、その彼女は恐らく神坂君に対してストーカー行為をしている生徒です。
わたしが彼と親しくなったきっかけだって、その彼女が悪さをしたからというのが可能性として濃厚な状態です。
証拠はまだないですけど、神坂君がその辺りを調べていてその内に明らかになると思います。
これは他言無用でお願いしたいですけど、その娘はパパ活をしていて、そのせいでトラブルに遭っています」
「そんな・・・あんな娘が?」
「人は見た目によらないですよね。わたしもその話を聞いた時には驚きました」
悠一さんとこんなに話したのはいつぶりだろうかと思うくらいに長い時間話し込んで、一段落したところでふたりでスーパーまで買い出しに出掛けた。
◆神坂冬樹 視点◆
鷺ノ宮那奈さんと話をしてからの帰宅で、マンションへ入ろうとしたところで見知った姿を見かけたので挨拶をした。
「高梨先生、こんにちは。この時間だとこんばんはでしょうか?」
「こんばんは、冬樹君、美晴さん」
「こんばんは、先生。先生は買い物だったんですか?」
「ええ、主人と近くのスーパーまでね」
「お隣の方、旦那さんなのですね。
はじめまして、秀優高校OGの岸元と言います」
「はじめまして、秀優高校で高梨先生にお世話になっている神坂と言います」
そう名乗ると、高梨先生の旦那さんの目付きが鋭くなり険しい表情を向けてきた。
「神坂とかいう生徒のところへ行くのか?」
食料品や日用品の買い出しへ行こうとしただけなのに、悠一さんから唐突に冬樹君の名前を出されて思考が停止してしまった。
「おい、どうなんだ!」
あまりに唐突で何を言えば良いのか分からず返事ができないでいると更に悠一さんの追及の声が強くなった。なんとか考えをまとめ返事をした。
「食料品や日用品の買い出しへ行くだけですよ。
神坂君の名前をどこで聞いたのかはわかりませんけど、彼は最近縁があって交流が増えていますけど、ただの生徒です。
なんならついてきますか?
お米も少なくなって買いたいですし、持ってもらえると助かります」
「いや、すまない。
それと、荷物持ちが必要なら一緒に行かせてもらうよ」
口では落ち着いたような事を言うけど、態度が不満そうではあるのでここはひとつちゃんと話をするべきではないかと考え切り出すことにした。
「悠一さん、この際ですから今後のことについてちゃんとお話しませんか?」
「今後のこと?」
「そうです。今後も夫婦としてやっていくのかどうかです。
7月の時はわたしが押し切って有耶無耶にしてしまったところがありましたから」
「俺は別れたくない」
「それはどうしてですか?」
「百合恵を愛しているからに決まっているだろ!」
「わたしは愛されているという実感を持てていませんが?」
「それはすまなかった。実感を持ってもらえるように努力する」
「具体的にはどの様になさるおつもりですか?」
「すまない。どうすれば良いのかわからない・・・
でも、百合恵が言う事なら何でも聞くから言って欲しい」
「今更なんなのですか?
ずっと教師を続けたいと言っていたのを辞めろと言い続けていたのに、今更なんでも聞くなんて言われても信じようがありません。
それに悠一さんはこどもが欲しいと言っていましたけど、そのことについてはどうされるんですか?」
「仕事の件については、本当に申し訳なかった。
あのあと、色んな人に意見を聞いて女性でもやりがいを持って働いている人がたくさんいる事を理解したし、もちろん百合恵もそのひとりだと今はちゃんとわかっている。
こどもについては原因の究明から不妊治療まで視野に入れて欲しいと思っている」
「そのあたりについてはわかりました・・・」
この際なので、色々と深いところまで話をした。わたしが開き直っているからなのか、今までで一番深い話し合いになったと思う。
「・・・ところで、先程神坂君の名前が出てきましたけど、どうして疑われたのですか?」
「それは、先日百合恵のところの生徒が話しかけてきて、こういうやり取りをしているとメッセージアプリのやり取りの一部を見せてもらったんだ」
「その生徒って、見た目がとても美人な女子じゃありませんでした?」
「そうだな。印象的な美人と言って良い見た目だった」
「その生徒は名乗りませんでした?」
「ああ、名前は聞いていないな」
「まぁ彼女なら名乗りそうでもありますけどね。
そんな名乗りもしない相手の言うことに翻弄されないでほしかったですね」
「それは・・・すまない」
「それに、その彼女は恐らく神坂君に対してストーカー行為をしている生徒です。
わたしが彼と親しくなったきっかけだって、その彼女が悪さをしたからというのが可能性として濃厚な状態です。
証拠はまだないですけど、神坂君がその辺りを調べていてその内に明らかになると思います。
これは他言無用でお願いしたいですけど、その娘はパパ活をしていて、そのせいでトラブルに遭っています」
「そんな・・・あんな娘が?」
「人は見た目によらないですよね。わたしもその話を聞いた時には驚きました」
悠一さんとこんなに話したのはいつぶりだろうかと思うくらいに長い時間話し込んで、一段落したところでふたりでスーパーまで買い出しに出掛けた。
◆神坂冬樹 視点◆
鷺ノ宮那奈さんと話をしてからの帰宅で、マンションへ入ろうとしたところで見知った姿を見かけたので挨拶をした。
「高梨先生、こんにちは。この時間だとこんばんはでしょうか?」
「こんばんは、冬樹君、美晴さん」
「こんばんは、先生。先生は買い物だったんですか?」
「ええ、主人と近くのスーパーまでね」
「お隣の方、旦那さんなのですね。
はじめまして、秀優高校OGの岸元と言います」
「はじめまして、秀優高校で高梨先生にお世話になっている神坂と言います」
そう名乗ると、高梨先生の旦那さんの目付きが鋭くなり険しい表情を向けてきた。
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