106 / 252
第106話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
「百合恵の生徒さんが同じマンションに住んでいたなんて驚きだね」
「ええ、ここに先生がお住まいと知らずに越してきてお会いした時は驚きました。
とは言え、問題があって近々引っ越してしまう予定なのですが・・・」
「ええ?ここは分譲だよね?
そんな簡単に引っ越せないのではないかな?」
「普通ならそうですよね。
僕はちょっとお金に余裕がありますので・・・」
「親御さんとは別居なの?」
「少し前にちょっとありまして、今はこの美晴さんと二人暮らしで、先生のご友人の赤堀さんが一時的に居候しています」
旦那さんは先生の方を向いた。
「赤堀さんって、あの?」
「ええ、みゆきのことです」
「なんで、その赤堀さんが百合恵の生徒のところに居候しているの?」
「詳しいことは言えませんけど、みゆきがご両親と仲違いすることがあって実家を飛び出したのだけど、行くところがなくてわたしを通じてたまたま知り合っていた神坂君のところにお世話になったというところですね」
旦那さんは再びこちらを向きなおして話を続けてきた。
「せっかくだし、よかったらうちで一緒に夕食を摂らないか?」
「僕は構いませんが・・・」
「私も構わないです・・・いいんですか?先生?」
応諾しつつ美晴さんの方を伺うと美晴さんも応諾しつつ今度は先生に確認の伺いを立てた。
「ええ、主人が良いならもちろんわたしは歓迎ですよ。
みゆきもそのうち帰ってくるのでしょう?
連絡を入れておけば、あの娘は来るでしょうし、そうしましょう」
突如高梨先生の家で一緒に夕食を摂ることになったので、一度帰宅してから冷蔵庫の中からすぐに調理できそうな物を少し持って先生の家へお邪魔した。
「神坂君は、料理が上手なんだね。こんなに美味しい料理を作れるなんて尊敬するよ」
「そうおっしゃっていただいて恐縮です」
「そうなんですよ、冬樹くんは昔から料理も得意で私も女として悔しくなるんですよ」
「岸元さんの気持ちはわかるわ。わたしもそれなりに料理はできるつもりだけれど、神坂君の手料理の前には自信をなくしてしまうもの」
「私は嫉妬のしようもないわね」
「まぁ、みゆきはそうよね」
「感想はともかく、お口には合ったようで良かったです」
「それで、食事が済んだところで神坂君に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
高梨先生のご主人から切り出された。
◆春日悠一 視点◆
百合恵が懇意にしているという神坂冬樹という生徒と偶然会うことができたので夕食へ誘った。
ただご馳走になるだけなのは恐縮なのでと言って、下準備を終えた食材を持ち込んで手早く調理するという大人でもなかなかできないであろう社交性を見せ付けられた。
これが事前に予定されていたことならそれに合わせて用意する人もそれなりにいるだろうけど、誘って荷物を置きに一旦家に帰ると言って別れてから10分も経たずに現れた時には手元に食材が有ったのだからどれだけ手慣れているか驚愕させられる。
しかも、味付けの好みを超えて誰が食べても美味しく食べられる様な工夫がされていて、百合恵も神坂君の恋人だという岸元さんも悔しいというのは理解できる様に思う。
食事が終わり、百合恵との関係を探ろうと話をしたら思いのほか闇深い情報が飛び出してきた。
神坂君が二之宮凪沙嬢に偏執的に好かれ、それが発端でゴールデンウィーク明けから色々な出来事があり、その中で百合恵との関係も出来上がってきていたらしい。
親密になった最初のきっかけは神坂君の私物を汚損させられたのを見て、百合恵が自分の管理する音楽準備室へ匿う様になったというのだから我が事のように誇らしく思う。
まだ証拠がなく断定できない部分もあるとのことだけれど、高校生らしからぬ知恵と行動力で対応しているのはすごいと思った。
部外者に言いにくいことなどは割愛しているようだけど、およそ百合恵と神坂君の関係や一連の出来事において百合恵の関わり方についてはおおよそ掴めたように思う。
恐らく先日俺に声を掛けてきた女子生徒は件の二之宮凪沙嬢その人で、神坂君に関わる何かを調べるためにこのマンションまで来ていたのだと想像でき、俺を百合恵の夫として何か利用しようとして近付いたのではないかということだ。
もしかすると、二之宮嬢と思われる女子生徒はまた俺に接触してくるのかも知れないが、せめて百合恵の足を引っ張らないようにしたいと思う。
「百合恵の生徒さんが同じマンションに住んでいたなんて驚きだね」
「ええ、ここに先生がお住まいと知らずに越してきてお会いした時は驚きました。
とは言え、問題があって近々引っ越してしまう予定なのですが・・・」
「ええ?ここは分譲だよね?
そんな簡単に引っ越せないのではないかな?」
「普通ならそうですよね。
僕はちょっとお金に余裕がありますので・・・」
「親御さんとは別居なの?」
「少し前にちょっとありまして、今はこの美晴さんと二人暮らしで、先生のご友人の赤堀さんが一時的に居候しています」
旦那さんは先生の方を向いた。
「赤堀さんって、あの?」
「ええ、みゆきのことです」
「なんで、その赤堀さんが百合恵の生徒のところに居候しているの?」
「詳しいことは言えませんけど、みゆきがご両親と仲違いすることがあって実家を飛び出したのだけど、行くところがなくてわたしを通じてたまたま知り合っていた神坂君のところにお世話になったというところですね」
旦那さんは再びこちらを向きなおして話を続けてきた。
「せっかくだし、よかったらうちで一緒に夕食を摂らないか?」
「僕は構いませんが・・・」
「私も構わないです・・・いいんですか?先生?」
応諾しつつ美晴さんの方を伺うと美晴さんも応諾しつつ今度は先生に確認の伺いを立てた。
「ええ、主人が良いならもちろんわたしは歓迎ですよ。
みゆきもそのうち帰ってくるのでしょう?
連絡を入れておけば、あの娘は来るでしょうし、そうしましょう」
突如高梨先生の家で一緒に夕食を摂ることになったので、一度帰宅してから冷蔵庫の中からすぐに調理できそうな物を少し持って先生の家へお邪魔した。
「神坂君は、料理が上手なんだね。こんなに美味しい料理を作れるなんて尊敬するよ」
「そうおっしゃっていただいて恐縮です」
「そうなんですよ、冬樹くんは昔から料理も得意で私も女として悔しくなるんですよ」
「岸元さんの気持ちはわかるわ。わたしもそれなりに料理はできるつもりだけれど、神坂君の手料理の前には自信をなくしてしまうもの」
「私は嫉妬のしようもないわね」
「まぁ、みゆきはそうよね」
「感想はともかく、お口には合ったようで良かったです」
「それで、食事が済んだところで神坂君に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
高梨先生のご主人から切り出された。
◆春日悠一 視点◆
百合恵が懇意にしているという神坂冬樹という生徒と偶然会うことができたので夕食へ誘った。
ただご馳走になるだけなのは恐縮なのでと言って、下準備を終えた食材を持ち込んで手早く調理するという大人でもなかなかできないであろう社交性を見せ付けられた。
これが事前に予定されていたことならそれに合わせて用意する人もそれなりにいるだろうけど、誘って荷物を置きに一旦家に帰ると言って別れてから10分も経たずに現れた時には手元に食材が有ったのだからどれだけ手慣れているか驚愕させられる。
しかも、味付けの好みを超えて誰が食べても美味しく食べられる様な工夫がされていて、百合恵も神坂君の恋人だという岸元さんも悔しいというのは理解できる様に思う。
食事が終わり、百合恵との関係を探ろうと話をしたら思いのほか闇深い情報が飛び出してきた。
神坂君が二之宮凪沙嬢に偏執的に好かれ、それが発端でゴールデンウィーク明けから色々な出来事があり、その中で百合恵との関係も出来上がってきていたらしい。
親密になった最初のきっかけは神坂君の私物を汚損させられたのを見て、百合恵が自分の管理する音楽準備室へ匿う様になったというのだから我が事のように誇らしく思う。
まだ証拠がなく断定できない部分もあるとのことだけれど、高校生らしからぬ知恵と行動力で対応しているのはすごいと思った。
部外者に言いにくいことなどは割愛しているようだけど、およそ百合恵と神坂君の関係や一連の出来事において百合恵の関わり方についてはおおよそ掴めたように思う。
恐らく先日俺に声を掛けてきた女子生徒は件の二之宮凪沙嬢その人で、神坂君に関わる何かを調べるためにこのマンションまで来ていたのだと想像でき、俺を百合恵の夫として何か利用しようとして近付いたのではないかということだ。
もしかすると、二之宮嬢と思われる女子生徒はまた俺に接触してくるのかも知れないが、せめて百合恵の足を引っ張らないようにしたいと思う。
0
あなたにおすすめの小説
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる