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第106話
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◆神坂冬樹 視点◆
「百合恵の生徒さんが同じマンションに住んでいたなんて驚きだね」
「ええ、ここに先生がお住まいと知らずに越してきてお会いした時は驚きました。
とは言え、問題があって近々引っ越してしまう予定なのですが・・・」
「ええ?ここは分譲だよね?
そんな簡単に引っ越せないのではないかな?」
「普通ならそうですよね。
僕はちょっとお金に余裕がありますので・・・」
「親御さんとは別居なの?」
「少し前にちょっとありまして、今はこの美晴さんと二人暮らしで、先生のご友人の赤堀さんが一時的に居候しています」
旦那さんは先生の方を向いた。
「赤堀さんって、あの?」
「ええ、みゆきのことです」
「なんで、その赤堀さんが百合恵の生徒のところに居候しているの?」
「詳しいことは言えませんけど、みゆきがご両親と仲違いすることがあって実家を飛び出したのだけど、行くところがなくてわたしを通じてたまたま知り合っていた神坂君のところにお世話になったというところですね」
旦那さんは再びこちらを向きなおして話を続けてきた。
「せっかくだし、よかったらうちで一緒に夕食を摂らないか?」
「僕は構いませんが・・・」
「私も構わないです・・・いいんですか?先生?」
応諾しつつ美晴さんの方を伺うと美晴さんも応諾しつつ今度は先生に確認の伺いを立てた。
「ええ、主人が良いならもちろんわたしは歓迎ですよ。
みゆきもそのうち帰ってくるのでしょう?
連絡を入れておけば、あの娘は来るでしょうし、そうしましょう」
突如高梨先生の家で一緒に夕食を摂ることになったので、一度帰宅してから冷蔵庫の中からすぐに調理できそうな物を少し持って先生の家へお邪魔した。
「神坂君は、料理が上手なんだね。こんなに美味しい料理を作れるなんて尊敬するよ」
「そうおっしゃっていただいて恐縮です」
「そうなんですよ、冬樹くんは昔から料理も得意で私も女として悔しくなるんですよ」
「岸元さんの気持ちはわかるわ。わたしもそれなりに料理はできるつもりだけれど、神坂君の手料理の前には自信をなくしてしまうもの」
「私は嫉妬のしようもないわね」
「まぁ、みゆきはそうよね」
「感想はともかく、お口には合ったようで良かったです」
「それで、食事が済んだところで神坂君に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
高梨先生のご主人から切り出された。
◆春日悠一 視点◆
百合恵が懇意にしているという神坂冬樹という生徒と偶然会うことができたので夕食へ誘った。
ただご馳走になるだけなのは恐縮なのでと言って、下準備を終えた食材を持ち込んで手早く調理するという大人でもなかなかできないであろう社交性を見せ付けられた。
これが事前に予定されていたことならそれに合わせて用意する人もそれなりにいるだろうけど、誘って荷物を置きに一旦家に帰ると言って別れてから10分も経たずに現れた時には手元に食材が有ったのだからどれだけ手慣れているか驚愕させられる。
しかも、味付けの好みを超えて誰が食べても美味しく食べられる様な工夫がされていて、百合恵も神坂君の恋人だという岸元さんも悔しいというのは理解できる様に思う。
食事が終わり、百合恵との関係を探ろうと話をしたら思いのほか闇深い情報が飛び出してきた。
神坂君が二之宮凪沙嬢に偏執的に好かれ、それが発端でゴールデンウィーク明けから色々な出来事があり、その中で百合恵との関係も出来上がってきていたらしい。
親密になった最初のきっかけは神坂君の私物を汚損させられたのを見て、百合恵が自分の管理する音楽準備室へ匿う様になったというのだから我が事のように誇らしく思う。
まだ証拠がなく断定できない部分もあるとのことだけれど、高校生らしからぬ知恵と行動力で対応しているのはすごいと思った。
部外者に言いにくいことなどは割愛しているようだけど、およそ百合恵と神坂君の関係や一連の出来事において百合恵の関わり方についてはおおよそ掴めたように思う。
恐らく先日俺に声を掛けてきた女子生徒は件の二之宮凪沙嬢その人で、神坂君に関わる何かを調べるためにこのマンションまで来ていたのだと想像でき、俺を百合恵の夫として何か利用しようとして近付いたのではないかということだ。
もしかすると、二之宮嬢と思われる女子生徒はまた俺に接触してくるのかも知れないが、せめて百合恵の足を引っ張らないようにしたいと思う。
「百合恵の生徒さんが同じマンションに住んでいたなんて驚きだね」
「ええ、ここに先生がお住まいと知らずに越してきてお会いした時は驚きました。
とは言え、問題があって近々引っ越してしまう予定なのですが・・・」
「ええ?ここは分譲だよね?
そんな簡単に引っ越せないのではないかな?」
「普通ならそうですよね。
僕はちょっとお金に余裕がありますので・・・」
「親御さんとは別居なの?」
「少し前にちょっとありまして、今はこの美晴さんと二人暮らしで、先生のご友人の赤堀さんが一時的に居候しています」
旦那さんは先生の方を向いた。
「赤堀さんって、あの?」
「ええ、みゆきのことです」
「なんで、その赤堀さんが百合恵の生徒のところに居候しているの?」
「詳しいことは言えませんけど、みゆきがご両親と仲違いすることがあって実家を飛び出したのだけど、行くところがなくてわたしを通じてたまたま知り合っていた神坂君のところにお世話になったというところですね」
旦那さんは再びこちらを向きなおして話を続けてきた。
「せっかくだし、よかったらうちで一緒に夕食を摂らないか?」
「僕は構いませんが・・・」
「私も構わないです・・・いいんですか?先生?」
応諾しつつ美晴さんの方を伺うと美晴さんも応諾しつつ今度は先生に確認の伺いを立てた。
「ええ、主人が良いならもちろんわたしは歓迎ですよ。
みゆきもそのうち帰ってくるのでしょう?
連絡を入れておけば、あの娘は来るでしょうし、そうしましょう」
突如高梨先生の家で一緒に夕食を摂ることになったので、一度帰宅してから冷蔵庫の中からすぐに調理できそうな物を少し持って先生の家へお邪魔した。
「神坂君は、料理が上手なんだね。こんなに美味しい料理を作れるなんて尊敬するよ」
「そうおっしゃっていただいて恐縮です」
「そうなんですよ、冬樹くんは昔から料理も得意で私も女として悔しくなるんですよ」
「岸元さんの気持ちはわかるわ。わたしもそれなりに料理はできるつもりだけれど、神坂君の手料理の前には自信をなくしてしまうもの」
「私は嫉妬のしようもないわね」
「まぁ、みゆきはそうよね」
「感想はともかく、お口には合ったようで良かったです」
「それで、食事が済んだところで神坂君に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
高梨先生のご主人から切り出された。
◆春日悠一 視点◆
百合恵が懇意にしているという神坂冬樹という生徒と偶然会うことができたので夕食へ誘った。
ただご馳走になるだけなのは恐縮なのでと言って、下準備を終えた食材を持ち込んで手早く調理するという大人でもなかなかできないであろう社交性を見せ付けられた。
これが事前に予定されていたことならそれに合わせて用意する人もそれなりにいるだろうけど、誘って荷物を置きに一旦家に帰ると言って別れてから10分も経たずに現れた時には手元に食材が有ったのだからどれだけ手慣れているか驚愕させられる。
しかも、味付けの好みを超えて誰が食べても美味しく食べられる様な工夫がされていて、百合恵も神坂君の恋人だという岸元さんも悔しいというのは理解できる様に思う。
食事が終わり、百合恵との関係を探ろうと話をしたら思いのほか闇深い情報が飛び出してきた。
神坂君が二之宮凪沙嬢に偏執的に好かれ、それが発端でゴールデンウィーク明けから色々な出来事があり、その中で百合恵との関係も出来上がってきていたらしい。
親密になった最初のきっかけは神坂君の私物を汚損させられたのを見て、百合恵が自分の管理する音楽準備室へ匿う様になったというのだから我が事のように誇らしく思う。
まだ証拠がなく断定できない部分もあるとのことだけれど、高校生らしからぬ知恵と行動力で対応しているのはすごいと思った。
部外者に言いにくいことなどは割愛しているようだけど、およそ百合恵と神坂君の関係や一連の出来事において百合恵の関わり方についてはおおよそ掴めたように思う。
恐らく先日俺に声を掛けてきた女子生徒は件の二之宮凪沙嬢その人で、神坂君に関わる何かを調べるためにこのマンションまで来ていたのだと想像でき、俺を百合恵の夫として何か利用しようとして近付いたのではないかということだ。
もしかすると、二之宮嬢と思われる女子生徒はまた俺に接触してくるのかも知れないが、せめて百合恵の足を引っ張らないようにしたいと思う。
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