学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
136 / 252

第136話

しおりを挟む
神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

今回の件は松本まつもとさんの悪ふざけで、松本さん自身も美晴みはるさんを飲み会に誘った経緯があり松本さんの友人でもある津島つしまさんも深く反省しているということで美晴さんは許すことにし、それで納得して欲しいと美晴さんが懇願したことで小父さんも許したので、姉さんも母さんも口出しはしなかった。

僕としても美晴さんが良いなら異論はなく、むしろ騒動を招いた側とは言え一時僕らが心配をしたくらいで被害らしい被害もないのに深い反省で顔色が真っ青になっている松本さん達の方が気の毒に思えるくらいだった。


津島さん達との話も終わった時点ではまだ電車は残っていたけど、小父さんが車で送ってくださると言うのでその好意に甘えてマンションまで送ってもらうことになった。

小父さんの車の助手席に母さんが乗り、後ろの席に右から姉さん、美晴さん、僕が乗り込んだ。


「初めて知ったが、意外と近いところに住んでいたんだな」


カーナビの道案内のために小父さんへ住所を告げたら姉さんが話しかけてきた。


「そうだね。美晴さんの大学の事を考えるとあまり変なところへは行きたくなかったし、不動産屋さんにお勧めしてもらって良かったから決めた感じだね。
 あと、契約した時は考えてなかったけど、僕も学校に通いやすかったから結果的に良かったかもしれないね」


「そうだな・・・まぁ、私としては冬樹に家へ帰ってきて欲しい気持ちがあるのだが・・・」


夏菜かな、それを言ったらダメでしょ」


助手席から振り向いた母さんが会話に入ってきた。


「母さん、いいよ。深層心理がどうかはわからないけど、姉さんの気持ちは嬉しいからさ」


そう返したら母さんは苦しそうな表情になり続けた。


「冬樹、わたし達を責めていいのよ。冬樹にはその権利があるのだから」


「そうは言っても、すぐに家から出ていったし、しばらくは一切の連絡を拒否して無視し続けたのだから責めていたと思うよ」


「そうじゃないの。それはあの時のわたし達がされて当然の拒絶。
 家へ帰ってきて苦しむくらいにわたし達を拒絶していたのに全く責めていないのよ」


「そんなことはないよ。信じてくれなかった母さん達には怒りを覚えていたし、それを責める気持ちがあったからすぐに家を出ていったんだよ。
 今になって責めて欲しいと言われても、もう終わったことだと思うんだよね」


「冬樹、私が言えた義理じゃないのはわかっているが、母さんの言う通り私もちゃんと責めて欲しいと思っている。
 そういう意味では、先程の松本さんをあっさり許した美晴さんにも通じますけど、責められないことも存外に辛いものです」


途中から姉さんの視線が美晴さんへ移っていき、美晴さんが応えた。


「夏菜ちゃんが言うことはわかるけど、アキラさんは悪ふざけをしただけで実害はなかったわけだし、謝られてそれでも責める方が悪くない?」


「違います!
 たしかに松本さんは女性でしたし、結果的には美晴さんは何もされていない。
 でも、冬樹が電話して出た時に不埒な男だと思わせる様に振る舞ったせいで、冬樹や小父様や私達はそれこそ強姦や監禁でもされてしまったかもしれないと、大事な人が取り返しがつかない事をされているかもしれないと恐怖していたんですよ!
 ほんのいたずら心ですぐにネタばらしをするつもりだったのは聞きました。運悪くバッテリーが切れただけにしても私達が血相を変えて駆け付けたのは事実で、松本さん達はその重大さを理解できていたからもっとちゃんと責めて欲しかったと思います」


「そうだね。夏菜ちゃんの言う通りだよ。まぁ、俺はそれがわかっていたから美晴に乗って許したし、俺が許したから夏菜ちゃん達も何も言えなくなって彼女たちにはキツいお灸になったと思うよ」


「え?お父さん、それ本当なの?」


「ああ、そうさ。いくら女の子だからって、いや女の子だからこそ冗談でもやってはいけないことの分別ができてるべきだと思って内心は怒ってたよ・・・と言うか、今でも怒りは残っているよ。
 俺からしたら美波みなみの件があって『またか』という気持ちもあったしね」


「配慮が足りなくてごめんなさい・・・」


「まぁ、実害がないのに怒り続けるのも大人気おとなげないから、良かったところでもあるけどね。
 もう許したのだから、松本さん達のことは美晴が好きにすれば良い」


「はい・・・」


小父さん達のやり取りを聞いていて、責めた方が良いということについて考えてみたけどわからないなと思っていたら僕にも振られた。


「俺は冬樹君が家族を責めたくないという気持ちがあるんだと思ってる。
 だけど、夏菜ちゃんや穂奈美ほなみさんが責めて欲しいと思っている気持ちもわかる。
 すぐに答えは出ないだろうけど、考えてあげて欲しいと思っているよ・・・将来の義理の父親ちちおやとしても神坂家とは良好な親戚関係を築きたいしね、ははっ」


「小父さん、気が」

「お父さん!」

「早いですよ。でも、小父さんの言葉はよく考えてみます」

美晴さんのツッコミが入ったけど、返答した通り小父さんの言葉はよく考えてみようと思う。


そこからは美晴さんが小父さんに怒っていたり、その様子を見て姉さんや母さんが笑っていたりしていたらマンションまで着いた。


「みんな、心配をかけてごめんなさい」


「今日はありがとうございました。
 それと、姉さん。僕は姉さんが電話した時にすぐに意を汲んで対応してくれた時や、一緒に美晴さんを探していた時にとても頼もしく思えて心強かったよ。
 まだギクシャクしてしまっているところはあるけど、僕は姉さんのことを尊敬している頼れる人だと思っているから忘れないでいてくれると嬉しいかな」


「あ、ああ。冬樹にそう思ってもらえていたなら少しは救われる思いだ。
 これからもっとお前に頼ってもらえるように精進するよ」


「ははっ、もう十分だと思うけど、姉さん自身のために頑張ってね」


「ああ、わかった。ありがとう、冬樹」



◆神坂夏菜 視点◆

冬樹と美晴さんが降り、小父様と母さんの3人になった車内で改めて小父様へ謝意を口にした。


「小父様、今日は夜遅い時間に引っ張り出してしまいすみませんでした。
 お陰で冬樹がまた壊れることがなく済みそうで助かりました」


「何を言っているの、夏菜ちゃん。
 礼を言うのは俺の方だよ。
 夏菜ちゃんが素早く動いてわかりやすく話をしてくれたから早く駆け付けることができたんだよ。
 結果的には子供のいたずらだったけど、もし本当に悪いヤツが美晴をどうかしてたと思うだけで気が狂いそうなくらい重大なことだよ。
 そんな時に適切に動けた最大の功労者は夏菜ちゃんだ。
 だから、夏菜ちゃんは誇って良いと思う。うちの美晴よりも余程しっかりしたお姉さんだ」


「いえ、美晴さんは私が尊敬する人ですよ。
 今回は珍しくしでかしましたけど、すごく立派な人です」


「夏菜ちゃんほどのしっかり者にそう言ってもらえるのは親として嬉しいよ」


「恐縮です・・・
 それと話は変わるのですが、美波みなみはどうですか?
 普段私たちが接している感じでは前とあまり変わらない雰囲気ではあるのですが・・・」


「まぁ、夏菜ちゃんになら良いか・・・
 穂奈美さんは既に知っていることだけど、美波は例の事件の時に妊娠させられてて中絶おろしている」


「そうですか・・・」


「その様子だと美波から聞いてた?」


「いえ、美波からは聞いていませんが、美波の部屋で産婦人科の説明資料を見たので察していました。春華はるかも同じです」


「そうか、ふたりには美波からは言ってないけど、知られちゃっている状況だったか・・・
 それで美波の状況だよね。正直なところ、よくわからない。
 ただ、冬樹君への気持ちが強くなっている気がするんだよね。
 事件が表沙汰になってからも距離を置かれていた時は暗い表情で会いたがっていたし、交流が増えるに連れて楽しそうに冬樹君のことを話すことが増えてきていたし、今週は一緒に学校へ行くようになって久しぶりに絶好調という感じだね。
 美晴と付き合い始めているから複雑だけど、少し前まではふたりが相思相愛でそのうち付き合いだすかなと見ていたから自然にも思えるし、うん・・・複雑だね」


「そうですか・・・ありがとうございます」


察してはいたけど、私が思っている以上に美波は冬樹への思いが強くなっているかもしれない・・・美波が暴走しないように見張っておかないといけないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...