学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
140 / 252

第140話

しおりを挟む
神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

学校では姉さんやハルが気にかけて様子を見に来てくれたけど、美波みなみがいるのもあって他愛のない話で終始した。

美波は空元気に見えるくらいずっとテンションが高い様子で僕にも話しかけてくる。

さすがに一時期のような無視をするつもりはないけど、以前のような恋慕はなくなっているので鬱陶しく感じることもある。

仲村なかむら先輩と芳川よしかわさんも慣れてきているようで、少しではあるけど僕とも話しをしてくれる様になってきている。



高梨たかなし先生の様子がなんとなく不自然に感じて困ったことがないかと尋ねたけど、そんな事はないから気にしないで欲しいと返された。

違和感があるし恐らく何かあったのだろうと思うのだけど、そこへ踏み込むのは失礼なので困ったことがあったらいつでも協力するので頼って欲しいとだけ言うに留めた。



美晴みはるさんから、先日の件で津島つしまさんと松本まつもとさんが謝罪したいと言っているから家へ連れてきて良いかという打診があり、会ったところでどうなのかという気持ちもあったけど、岸元きしもとの小父さんの言葉を思い出し話を聞くだけ聞いてみようと思い了承した。

そして、早い方が良いということで今日の僕の帰宅に合わせて連れてくる事になった。



家に着くと美晴さん達が先に着いていて、玄関には美晴さんの物の他に見慣れない靴が2足あった。ただ、どちらも先週会った時の津島さんと松本さんのイメージから離れているもので別の人も来ているのかもしれないと思いながらリビングへ顔を出した。


「すみません、お待たせしました」


「おかえり、冬樹くん。急がせちゃってごめんね」


「いえ、いつも通りの時間ですから」


「え!?高校生だったの!」


美晴さんとやり取りしている横から大きな声で呼び掛けられた。


「そう言えば、年下とは言ってたけど、高校生とは言ってなかったね」


「そうよ、みはるん。てっきり1個か2個下くらいだと思ってたわよ。
 ましてや、このマンションを買ったんでしょ?
 そんなの高校生だなんて思わないわよ」


「たしかに、事情を知らなかったらそうなるよね」


いきなり会話を始められてしまったので、まずは紹介をしてもらいたいと思い口を挟んだ。


「あの、申し訳ないのですが、まずは挨拶をさせていただけませんか?」


「そうよね。ごめんなさいね。
 先週会った時と見た目が変わっちゃっているけど、こちらが津島玲香れいかさんで、そっちに居る背が高いが松本明良あきらさん」


「すみません。ずいぶんと印象が違ったので気付けませんでした」


「何言ってるの、アタシ達が謝りに来たのに冬樹君が謝ったらダメでしょ。
 ・・・そして、今日はお時間を作っていただきありがとうございます」



立ち話も難と言うことで、リビングのテーブルに僕と美晴さんが隣り合わせで座り、反対側に津島さんと松本さんが座って相対した。


「先程も少し触れましたけど、この度は大変なご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」


「申し訳ありませんでした。そもそも、ぼ、私がふざけたことが原因です。玲香は美晴さんを飲み会に誘っただけで悪いのは私です。
 自分自身女だと言うのに浮ついて冗談にならないことを言って不安にさせてしまい情けないです」


津島さんと松本さんはそれぞれ深く頭を下げて謝罪の言葉を述べてくれている。


「あのね、冬樹くん。私も雰囲気が楽しくてつい飲みすぎてしまったから私も悪かったの。
 だからふたりのことを許してあげて欲しい・・・」


「まずは、お二人とも頭を上げてください。そんな姿勢では話しづらいです」


そういうと津島さん達は遠慮がちに頭を上げてくれた。


「松本さんの話にしたって、スマホのバッテリーが切れなかったら冗談で終わっていたことですし、そもそも津島さんは松本さんのご友人で美晴さんに紹介しただけですし、美晴さんが量を弁えずに飲みすぎて寝てしまったのも悪かったと思います。
 それなのに、口だけでなくそんな畏まった格好と女性らしい格好をされているのですから、真面目で誠意のある対応だと思います。
 僕から言うまでもなく同じ事が起きないように気を引き締めていらっしゃるのだと思いますし、それ以上言うことはありません。
 ですが、言葉にした方が良いと思いますので言わせていただきます。
 津島さん、松本さん、僕はあなた達を許します」


そこまで言うと、津島さん達の顔の緊張が少し弱まった。


「あのね、冬樹くん。津島さんとアキラさんなのだけど、これからお友達として親交を深めていこうと思うのだけど良いかな?」


「もちろん、良いですよ。
 今回は間が悪くてトラブルになりましたけど、そのあとこれだけ誠意を見せてくださる方が一緒というのは心強いですよ。
 津島さん、松本さん、僕が言うのも変ですけど美晴さんと仲良くしてもらえると嬉しいです」



◆津島玲香 視点◆

アタシは初めて失恋した。

今まで恋とか愛とかわからないと思っていたけど、これが恋に落ちると言うことかということを実感した。

ただ、相手が悪かった。既に相思相愛でお似合いのカノジョがいるからだ。

今日は男女問わず顔を合わす相手にいちいち姿をおちょくられていたというのもあるけど、みはるんへ悪い事をしたという反省の気持ちを汲み取ってくれて、更には気遣ってくれて本当に嬉しかったし、またそのやり取りをしている時の表情がとても優しく柔らかいもので気持ちは完全に掴まれてしまった・・・一人相撲だけど・・・


今はアタシの新しい友人のカレシが最高の男性なことを喜ぼうと思う。



◆松本明良 視点◆

僕は10年ぶりくらいにワンピースを着たと思う。

小学校の時、1人だけ背がグングン伸びていった時に男子達にバカにされてなんとなく女っぽい服を避ける様になり、その頃からスカートを全然履かなくなっていた。

その後も順調に身長が伸びて俗に言う女の子らしい格好よりも男の子らしい格好の方が似合う様になり、周囲の目もあって男の子らしい格好をする傾向が顕著になった。

それでも、女なのだから女の子らしい格好をしたい気持ちは当然あった。

そういう憧れの気持ちもあって中学へ進学する時は中高一貫校の女子校を希望し無事に入学することができた。しかし、義務だからと制服を着ることは抵抗感なく受け入れられていたけど、それ以外の時は男の子らしい格好をすることを求められ続け、それに応えるように男の子らしい格好をし続けて感覚が麻痺していた。


そして、トラブルを起こし美晴さんへの謝罪をするのにどうしたら良いかと考えた時、男の子らしい格好ばかりしていて求められるがままに男の子っぽい言動をし続けていた事が原因のひとつだろうと思い至り女の子らしい格好をすることにした。

憧れていたはずなのに、自分でも違和感があり大学でも玲香をはじめ男女問わず『似合わない』とか『変』とか言われそんなものかと思い込んでいたところで、謝罪で顔を合わせた神坂君にも自虐で「似合わないでしょ」と言ったら「そんなことないですよ。モデルさんみたいで見惚れてしまいます」と本心からと思える雰囲気で言ってもらえて心の底から救われた思いがした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...