190 / 252
第190話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
取り立てて変わったこともなく特別でないただの一日だったと思う。強いて取り立てるとすれば美波から二之宮さんも高卒認定試験に合格していて、今日からは本格的に大学受験に取り組んでいくつもりだという話を聞いたことくらいだ。
ハルが一部の男子に好意を寄せられているのも日常の風景となっているし、僕たちのグループが他のクラスメイト達から精神的な隔たりを感じるのも日常の風景になっている。僕らが浮いてしまっていることで教室内の雰囲気が良くなく高梨先生にはその事で心労をかけてしまっていると思うので、不可抗力とは言え原因の一端である身としては心苦しい。
放課後の勉強会まで終わって帰宅すると、既に美晴さんは帰ってきていた。
美晴さんは今日区役所へ行ってきて妊娠に関わる手続きをしてきたということで、そこで役所の人にお祝いの言葉をかけてもらえたとか、別の手続きできていた見知らぬお婆さんに妊娠期間の心得を聞いてきたとか話してくれた。その話す様子は嬉しそうで、ほとんど相槌だけで聞く一方だったけど僕も嬉しい気持ちになっている。
「話は変わって、明良さんが女性らしい格好をする様になっているのは前に話したと思うけど、それで一目惚れした先輩が玲香さんに間に入って欲しいってお願いしてきたのね。
でも玲香さんも明良さんが大事だから嫌だって断ったのだけど、聞いてると玲香さんは先入観でその先輩のことを近付けたくなさそうだったから、一度ちゃんと話をした方が良いのではないかなって言ったら、私にもその話し合いの場に居て欲しいって頼まれちゃったのよね」
「それで美晴さんはどうしたんですか?」
「私が言い出したことだし、玲香さんがお世話になっている先輩ということだったから角が立たないようにと思って一緒に立ち会うことにしたの。
その先輩、佐々木さんって言うのだけど、たぶんこの時期だからクリスマスを一緒に過ごしたいんじゃないかなって思ったのよね」
「たしかに12月はクリスマスを意識して告白する人が増えてカップルも増える傾向があるって言いますよね」
「やっぱりそうよね。でも、この時期はイルミネーションも素敵だし一緒に過ごすといい思い出になりそうって思うよね」
「そうですね。僕らもイルミネーションを見に行きませんか?
クリスマスイブや当日でも良いですけど、混雑しそうだし少し早めのタイミングとかどうですか?」
「たしかに、今の私はあまり混雑するとわかっているところへ行くべきではないよね。でも、無理しない程度にイルミネーションを一緒に見に行きたいかも?」
「じゃあ、様子を見て無理せず行けそうなら行きましょう。来年以降はそれどころじゃなくなっていそうですし」
「たしかに、そんな余裕はなさそうだよね。それはそれで楽しそうだと思うけど、やっぱりロマンチックな夜を一緒に過ごしておきたいな」
「そうしましょう。それと話を戻して、その松本さんの件で津島さんと何かするなら、僕も協力しますよ」
「何かしてもらう事あるかな?
でも、その時はお願いするね」
「はい。それにしても、津島さんが嫌がるってその先輩さんは何か悪い人なのですか?」
「悪い人ではないと思う。でも見た目や言動が軽いかなって印象はあるし、玲香さんが言うには女性関係で良くない噂もある人みたいだからそれでなんだと思うな」
「そうなのですか。でも、得てして噂って本人の耳に入っていなかったり無責任な他人の思い込みで広まっていたりするから、ちゃんと話せば誤解していただけだったとかあるかもしれないですよね」
「そうだね。その佐々木先輩は更にひとつ上の先輩が立ち上げたスタートアップの会社の常務だって言うし、その立ち上げた先輩は知っているのだけど、いくら仕事と関係がなくても本当に女性関係で問題を抱えるような悪い人を常務なんかにしない人だという印象だし、ちゃんと話したらわかりあえるんじゃないかなって思うんだよね」
「僕は今年イヤってほど実感させられましたけど、人って一度と思い込んでしまうとなかなかそれを払拭できなかったりしますし、美晴さんが客観的に中和してあげられると良いですよね」
「うん。玲香さんは明良さんの事を大事にしているのは明らかだし、それで視野が狭くなってしまっているのかもしれないよね。
私にとってもせっかくできたお友達だし、二人にとって良くなる様にできたらって思うよ」
そう言って美晴さんが見せてくれた笑顔はすごく輝いていて幸せだなって改めて感じた。
「そうですよね。
話は変わるのですけど、引越し先の候補でいい物件があったので見てもらえませんか?」
そう言って持っていたタブレットを操作して物件情報を表示させて美晴さんに見てもらった。
「冬樹くんが良いと思うのだったら反対するつもりはないけど、どうしてこの物件なの?」
「物件というよりは場所ですね。この住所を見てください」
そう言いながら物件情報の住所の部分を指差した。
「この住所って、実家のすぐ近くだよね?」
「そうですね。もっと言うと、道路を挟んで反対側です」
「そっか、町名が違ったからすぐに気付かなかったけど、実家のマンションから道を挟んだ反対側はそうなんだよね」
「建物はちょっと古いので建て直すかリフォームをした方が良いかと思いますけど、現状でも部屋が多いですし窮屈にはならないと思います」
「でも、この場所にこれだけの土地が付いてる戸建てだと高いよね?
・・・って、億!?」
「安くはないですけど、そのくらいなら余裕で払える金額ですし、美晴さんや子どものことを考えたら実家から近い方が良いからここが良いなって思ったんですよ」
「うん。お金の面で冬樹くんが大丈夫だって言うなら場所や間取りは良いかな?
私の精神衛生的には追加での支出は抑えて欲しいから、建て直しじゃなくてリフォームにしてもらった方がいいな」
「わかりました、明日不動産屋の担当さんに連絡して物件を押さえてもらって、リフォーム業者の手配もお願いしておきますね」
取り立てて変わったこともなく特別でないただの一日だったと思う。強いて取り立てるとすれば美波から二之宮さんも高卒認定試験に合格していて、今日からは本格的に大学受験に取り組んでいくつもりだという話を聞いたことくらいだ。
ハルが一部の男子に好意を寄せられているのも日常の風景となっているし、僕たちのグループが他のクラスメイト達から精神的な隔たりを感じるのも日常の風景になっている。僕らが浮いてしまっていることで教室内の雰囲気が良くなく高梨先生にはその事で心労をかけてしまっていると思うので、不可抗力とは言え原因の一端である身としては心苦しい。
放課後の勉強会まで終わって帰宅すると、既に美晴さんは帰ってきていた。
美晴さんは今日区役所へ行ってきて妊娠に関わる手続きをしてきたということで、そこで役所の人にお祝いの言葉をかけてもらえたとか、別の手続きできていた見知らぬお婆さんに妊娠期間の心得を聞いてきたとか話してくれた。その話す様子は嬉しそうで、ほとんど相槌だけで聞く一方だったけど僕も嬉しい気持ちになっている。
「話は変わって、明良さんが女性らしい格好をする様になっているのは前に話したと思うけど、それで一目惚れした先輩が玲香さんに間に入って欲しいってお願いしてきたのね。
でも玲香さんも明良さんが大事だから嫌だって断ったのだけど、聞いてると玲香さんは先入観でその先輩のことを近付けたくなさそうだったから、一度ちゃんと話をした方が良いのではないかなって言ったら、私にもその話し合いの場に居て欲しいって頼まれちゃったのよね」
「それで美晴さんはどうしたんですか?」
「私が言い出したことだし、玲香さんがお世話になっている先輩ということだったから角が立たないようにと思って一緒に立ち会うことにしたの。
その先輩、佐々木さんって言うのだけど、たぶんこの時期だからクリスマスを一緒に過ごしたいんじゃないかなって思ったのよね」
「たしかに12月はクリスマスを意識して告白する人が増えてカップルも増える傾向があるって言いますよね」
「やっぱりそうよね。でも、この時期はイルミネーションも素敵だし一緒に過ごすといい思い出になりそうって思うよね」
「そうですね。僕らもイルミネーションを見に行きませんか?
クリスマスイブや当日でも良いですけど、混雑しそうだし少し早めのタイミングとかどうですか?」
「たしかに、今の私はあまり混雑するとわかっているところへ行くべきではないよね。でも、無理しない程度にイルミネーションを一緒に見に行きたいかも?」
「じゃあ、様子を見て無理せず行けそうなら行きましょう。来年以降はそれどころじゃなくなっていそうですし」
「たしかに、そんな余裕はなさそうだよね。それはそれで楽しそうだと思うけど、やっぱりロマンチックな夜を一緒に過ごしておきたいな」
「そうしましょう。それと話を戻して、その松本さんの件で津島さんと何かするなら、僕も協力しますよ」
「何かしてもらう事あるかな?
でも、その時はお願いするね」
「はい。それにしても、津島さんが嫌がるってその先輩さんは何か悪い人なのですか?」
「悪い人ではないと思う。でも見た目や言動が軽いかなって印象はあるし、玲香さんが言うには女性関係で良くない噂もある人みたいだからそれでなんだと思うな」
「そうなのですか。でも、得てして噂って本人の耳に入っていなかったり無責任な他人の思い込みで広まっていたりするから、ちゃんと話せば誤解していただけだったとかあるかもしれないですよね」
「そうだね。その佐々木先輩は更にひとつ上の先輩が立ち上げたスタートアップの会社の常務だって言うし、その立ち上げた先輩は知っているのだけど、いくら仕事と関係がなくても本当に女性関係で問題を抱えるような悪い人を常務なんかにしない人だという印象だし、ちゃんと話したらわかりあえるんじゃないかなって思うんだよね」
「僕は今年イヤってほど実感させられましたけど、人って一度と思い込んでしまうとなかなかそれを払拭できなかったりしますし、美晴さんが客観的に中和してあげられると良いですよね」
「うん。玲香さんは明良さんの事を大事にしているのは明らかだし、それで視野が狭くなってしまっているのかもしれないよね。
私にとってもせっかくできたお友達だし、二人にとって良くなる様にできたらって思うよ」
そう言って美晴さんが見せてくれた笑顔はすごく輝いていて幸せだなって改めて感じた。
「そうですよね。
話は変わるのですけど、引越し先の候補でいい物件があったので見てもらえませんか?」
そう言って持っていたタブレットを操作して物件情報を表示させて美晴さんに見てもらった。
「冬樹くんが良いと思うのだったら反対するつもりはないけど、どうしてこの物件なの?」
「物件というよりは場所ですね。この住所を見てください」
そう言いながら物件情報の住所の部分を指差した。
「この住所って、実家のすぐ近くだよね?」
「そうですね。もっと言うと、道路を挟んで反対側です」
「そっか、町名が違ったからすぐに気付かなかったけど、実家のマンションから道を挟んだ反対側はそうなんだよね」
「建物はちょっと古いので建て直すかリフォームをした方が良いかと思いますけど、現状でも部屋が多いですし窮屈にはならないと思います」
「でも、この場所にこれだけの土地が付いてる戸建てだと高いよね?
・・・って、億!?」
「安くはないですけど、そのくらいなら余裕で払える金額ですし、美晴さんや子どものことを考えたら実家から近い方が良いからここが良いなって思ったんですよ」
「うん。お金の面で冬樹くんが大丈夫だって言うなら場所や間取りは良いかな?
私の精神衛生的には追加での支出は抑えて欲しいから、建て直しじゃなくてリフォームにしてもらった方がいいな」
「わかりました、明日不動産屋の担当さんに連絡して物件を押さえてもらって、リフォーム業者の手配もお願いしておきますね」
0
あなたにおすすめの小説
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる