学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

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第193話

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江藤瞬えとうしゅん 視点◆

どうも俺は惚れっぽい性格のようだ・・・転校初日に神坂春華かみさかはるかさんに一目惚れして、そのすぐ後に出会った名も知らない大学生のお姉さんに心を奪われてしまった。

出会った時は酔っ払いに絡まれていたお姉さんは最初中学生と見間違えてしまったものの、さりげない気遣いや笑顔から醸し出される大人の雰囲気に惹かれ、懇意になりたいと思ってお姉さんの住むマンションの前をジョギングのコースにしたことがうまく噛み合って月曜にも会えて話すことができたけど、以降火水木の3日は空振りだった。

北海道地元にいた時は言っては失礼だけど周囲には野暮ったい女子しか居なくて、女子と付き合いたいと言っていた男子に対して『彼女なんか欲しいものか?』と思ったけど、魅力的だと思える人に出会ってからはその気持ちがよくわかる様になったし、更に言えば魅力的な人が何人もいたらあの人もこの人もという節操のない気持ちの動き方には我が事ながら呆れもした。

救いは一番はあのお姉さんで、あのお姉さんを好きになってから順序を付けて春華さんへの気持ちは抑えられている・・・とは言え、やっぱり春華さんも魅力的な人であることには間違いないし、もし付き合ってくれると言うなら付き合いたいと思うのは偽らざる気持ちで、自分が惚れっぽいオスザルなのだという自己嫌悪が押し寄せてくる。



秀優しゅうゆう高校へ転校してからの2週目もあっという間に過ぎ去り、今日を終えればまた週末休みに入るという週の最後の登校日。

今日は珍しく梅田うめださんが話題を振ってきて、冬樹ふゆきが休んでいる時にローラン達が見に行くと言っていたアニメのイベントに冬樹は行かないのか?と言う質問をし、その流れで俺にも行かないかと誘ってくれた。

ローラン達が最初にその話をしていた時はあのお姉さんの事を考えていたために話を聞き流していて行きたいと言わなかったから参加メンバーに入っていなかったけど、改めて誘ってもらえたのは素直に嬉しく、アニメのことはよくわからないものの友達と遊びに行くということに魅力を感じて参加したいと意思表示した。チケットが1人で4枚しか申し込めないらしく、元々参加することになっていた春華さん、ローラン、岸元きしもとさん、新谷しんたにで一枠が埋まってしまうので、別でチケットを申し込まないといけないということになり、冬樹と俺の分の2枚だけで申し込むのか他にも声を掛けるかという話になって、結局参加する人は決まってないけどとりあえずもう4枚で申し込んで、当選したらその時改めて誰かに声を掛ければ良いという話になった。

その候補には神坂かみさか兄妹きょうだいの姉の夏菜かな先輩や岸元さんの大学生のお姉さんがいるという。

新谷が高2の俺らの中に大学生がひとり加わったらそのお姉さんは落ち着かなくないのではないかという疑問を口にしていたけど、妹の岸元さんだけでなく神坂姉弟妹きょうだいの幼馴染みで仲が良いし、せっかく仲良くなった俺やローランや新谷を紹介する機会になるから良いのだと言っていた。

岸元さんはどこか陰りのある雰囲気があって同い年だけどやや年上に見える印象があるから、そのお姉さんとなるともっと大人っぽいのではないかと思ったけど、春華さんと岸元さんの話しぶりからすると俺ら高校生に混じっていても浮くことはない容貌の様だ。



放課後はトレーニングをしたい気持ちもあったけど、忙しくて中々参加できていなかった梅田さんが今日は参加するからとテスト向けの要点をまとめた講義を春華さんや新谷が行なってくれるということで、部室での勉強会に最後まで参加することにした。

勉強が目的ということがあって高梨たかなし先生も便宜を図ってくれて、下校時刻を夏の一番遅くまで居られる期間と同じ時間まで延長するように学校へ掛け合ってくれて2時間以上残って勉強できた。

進学校の生徒だけあって講師役をする面々はみんなわかりやすく説明してくれるし、質問にも的を射た適切な回答をしてくれるので範囲が狭い学校の定期テストくらいならこの勉強会に参加しているだけで効率的な対策になると思う。


勉強会が終わり、夏なら明るい時間帯でも外は真っ暗になっていて、皆でまとまって駅まで移動し解散した。


カバンの中にジャージが入っていたのであのお姉さんの住むマンションの最寄り駅まで直接移動してコインロッカーに荷物を入れてジョギングしてから帰ろうと、いつもと違う電車に乗ろうとしたら冬樹も同じ電車に乗るようで東京の電車はいつでも人が多くてびっくりするなどと話していたら、目的の駅に着いたので別れようと思ったけど、冬樹も同じ駅が自宅の最寄りだそうで一緒に降りた。

下車した後、冬樹はスーパーで買物をして帰るからと駅の改札を出たところで別れ、俺はトイレに入ってジャージに着替えて荷物をロッカーへ入れて軽く準備運動をしてからジョギングを始めた。


運良くあのお姉さんを見掛けたので声を掛けた。


「こんばんは!」


「あら、こんばんは。また会ったね」


「はい!お姉さんに会えて良かったです!」


「あら嬉しい。先週の金曜日に会った時よりは早い時間だけど、真っ暗じゃない。
 やっぱり高校生が出歩くには遅い時間だと思うよ」


「そうですけど、まだ遅い時間とは言えないですし、俺は鍛えていますから大丈夫ですよ」


「たしかに、君はしっかりした身体つきだもんね。私の方が危険か・・・はあぁ」


なにか少しトーンが下がってしまったので慌てて話題を変えることを試みた。


「先週ほどではないですけど、今日も遅いですよね。週末だからですか?」


「別に週末だからということではないけど、友達の付き合いで大学の先輩の会社へ行って話をしてきたんで遅くなったんだ」


「先輩さんの会社ですか?
 後輩だからってそんな入れてもらえるものなんですか?」


「ああ、そういう・・・『大学の先輩が勤務している会社』じゃなくて『大学の先輩が経営している会社』だから、その辺りの融通は利くんだ」


年齢としの離れた先輩さんと付き合いがあるのですか?」


「1上と、2上だよ。社長が2上の先輩で、1上の先輩が常務」


「ごめんなさい、お姉さんって見た目よりずっと年上だったりします?」


「そっか、普通はそう思っちゃうよね。私はまだ現役大学生で今は21歳だよ」


「そんなに若いのに社長さんなんですね・・・」


「うん、私も初めて先輩から会社を経営していると聞かされた時は驚いたよ。
 社長の先輩は私が入学した時で3年に上がったところだったんだけど、その時には会社経営を始めてたから。
 その時はまだ仲間内数人の規模だったけど、今はもう300人くらいいるみたいだしすごいよね」


「すごすぎて想像もできないですよ」


「あはは、だよね。
 っと、もう遅いから私は帰るね」


お姉さんは思い出したかのように腕時計を見て時間を確認し、遅いからと別れを切り出してきた。


「すみません、引き止めてしまって。
 またお会いできた時はお願いします」


「うん・・・でも、もう会えないかも?」


「ええ!?どうしてですか!?」


「まだはっきり決まってないんだけど、引っ越しする計画をしててね、そう遠くはないけど君のジョギングコースからは外れるだろうし、多分会うこともなくなるかなって思ったの・・・
 っと、ごめんね。今度こそ私帰るね」


そう言って去っていくお姉さんの後ろ姿を見ているしかできなかった・・・
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