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第195話
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◆神坂冬樹 視点◆
土曜日でお互いに予定がなかったので美晴さんと不動産仲介業者の営業所を訪ねていた。
美晴さんにはあまり出歩いて欲しくなかったけど、適度に運動した方が良いし僕が一緒だから『デート気分になれて嬉しい』と言われてしまっては拒むことはできなかった。
そして、不動産取得についての話が終わったところで、不動産会社の提携しているリフォーム業者の営業さんがドタキャンされて空いているからと呼び出してくれた。
「身体が空いてたからお嬢ちゃん達の新婚さんごっこにお付き合いしますけど、学生さんのお小遣いじゃドア1枚交換できませんよ」
挨拶にきて名刺を渡された直後にその様な発言をされた。若い僕らを見て冷やかしだと思った様で、皮肉を言ったつもりなのかもしれない。もしかすると、過去にお金もその意思もないのに学生の冷やかしに付き合わされて徒労に終わったことが何度もあったのかもしれない・・・そういう意味では以前の対応で労力を無駄にさせられた事は気の毒だと思うし、学生だから無駄な時間を過ごさせられるという気持ちを持ってしまったのかもしれないが、僕らは本気だから偏見で軽くあしらわれたのは残念だし、美晴さんをバカにするような態度は不快だ。
「お客様になんて無礼な!
こちらの神坂様は既に売買合わせて5件のお取引をしていただいているお得意様なんだぞ!
しかも、今回のこの新しいお住まいと今お住まいのマンションについても仲介のご依頼をいただく予定でもあるんだ!
どなた様であってもお客様には丁寧に対応するべきだが、こちらの方は特にバカにする様なことを言って良い相手じゃないぞ!
今すぐそこへ手を突いて詫びろ!」
営業担当の高野さんはリフォーム業者氏へ対して恐ろしいほど激しく叱責し、今度は僕達の方へ振り向いて先の発言通り手を床へ突き、頭を床へ叩きつけるような勢いで下げていわゆる土下座と呼ばれる姿勢を取った。
「神坂様、申し訳ございません。弊社に連なる者が不快な思いをさせる事となり申し訳ございませんでした!
この者の会社へは私から責任を持って報告し、その後の対応についても私が責任を持って対応とご報告をさせていただきます!」
「どうか頭を上げてください。学生の僕相手でも、いつも丁寧に対応してくださっていて感謝しているんですから。
それに、こちらの方の様に若さを理由に見下してこられる大人には何度も対してきましたし、慣れていますから」
「いや、でも・・・」
高野さんへ近付き、頭を上げて立つ様に促すために身体を軽く引き上げる様に力を入れたら、その流れで高野さんは立ち上がってくれた。
「それに、高野さんが僕の代わりに怒ってくれたので清々していますから」
その後、騒ぎを聞いて駆け付けてきた他の営業さんが高野さんの様子に驚いていて、聞くと高野さんは僕の印象通り温和で優しい人という認識で、同僚として長年付き合っていても怒ったところを見たことがなかったそうだ。
そんな怒らないと思われていた人が客である僕らがいるのに怒鳴るというのは異例のことで、丁度出先から戻ってきた営業所長も謝罪と合わせて挨拶をしてくれた。
その間、部屋の隅で僕らのやり取りを見ていたリフォーム業者氏は震えていた。
ちょっとしたアクシデントはあったものの概ね問題なく不動産取得についての話を終えられて、帰る前に少し休みましょうと提案して喫茶店へ入った。
二人して注文したホットミルクが給仕されたので飲みながら雑談として先程の高野さん達とのやり取りの事を話していたら、美晴さんのスマホが通話着信した。
「鷺ノ宮那奈さんから、出るね」
美晴さんが那奈さんからの着信であり通話することを告げてきたので、僕が頷いて了承の意を伝えると美晴さんは応答した。
「岸元です。はい、大丈夫です。
・・・ええ?目を覚まされないのですか?
・・・もちろん、それはさせていただきますが、むしろ妹と高梨先生へ那奈さんの連絡先をお伝えしてもよろしいですか?
・・・全然手間ではないですから、はい、冬樹くんにも伝えます。
・・・病院の情報は間違えない様にメッセージアプリで送っていただければと思います。
・・・はい、はい、承知しました。それではお大事になさってください」
美晴さんが通話を終えて、那奈さんからの電話の内容を教えてもらった。
二之宮さんが出先で例の事件で関わっていたサッカー部の高橋先輩の妹に遭遇し、先輩の件で口論になってしまい弾みで激昂した妹から殴られて意識を失い病院へ運ばれたと言うことで、それを美波や高梨先生や僕へ伝えて欲しいという事だった。その流れで那奈さんの連絡先を美波と高梨先生へ教えて良いという了承をもらって、ふたりへそれらの内容のメッセージを送りながら僕へ話をしてくれていた。
「二之宮さんのお見舞いへ行く?」
お見舞いに行くという発想はなかったけど、行くのも良いかもしれない。ただ、今行っても那奈さんの邪魔をするだけになると思う。
「一旦様子を見ましょう。恐らく今行っても、那奈さんの邪魔をするだけだと思います」
「そうだね、たしかに状況が落ち着いてからにするべきだね」
土曜日でお互いに予定がなかったので美晴さんと不動産仲介業者の営業所を訪ねていた。
美晴さんにはあまり出歩いて欲しくなかったけど、適度に運動した方が良いし僕が一緒だから『デート気分になれて嬉しい』と言われてしまっては拒むことはできなかった。
そして、不動産取得についての話が終わったところで、不動産会社の提携しているリフォーム業者の営業さんがドタキャンされて空いているからと呼び出してくれた。
「身体が空いてたからお嬢ちゃん達の新婚さんごっこにお付き合いしますけど、学生さんのお小遣いじゃドア1枚交換できませんよ」
挨拶にきて名刺を渡された直後にその様な発言をされた。若い僕らを見て冷やかしだと思った様で、皮肉を言ったつもりなのかもしれない。もしかすると、過去にお金もその意思もないのに学生の冷やかしに付き合わされて徒労に終わったことが何度もあったのかもしれない・・・そういう意味では以前の対応で労力を無駄にさせられた事は気の毒だと思うし、学生だから無駄な時間を過ごさせられるという気持ちを持ってしまったのかもしれないが、僕らは本気だから偏見で軽くあしらわれたのは残念だし、美晴さんをバカにするような態度は不快だ。
「お客様になんて無礼な!
こちらの神坂様は既に売買合わせて5件のお取引をしていただいているお得意様なんだぞ!
しかも、今回のこの新しいお住まいと今お住まいのマンションについても仲介のご依頼をいただく予定でもあるんだ!
どなた様であってもお客様には丁寧に対応するべきだが、こちらの方は特にバカにする様なことを言って良い相手じゃないぞ!
今すぐそこへ手を突いて詫びろ!」
営業担当の高野さんはリフォーム業者氏へ対して恐ろしいほど激しく叱責し、今度は僕達の方へ振り向いて先の発言通り手を床へ突き、頭を床へ叩きつけるような勢いで下げていわゆる土下座と呼ばれる姿勢を取った。
「神坂様、申し訳ございません。弊社に連なる者が不快な思いをさせる事となり申し訳ございませんでした!
この者の会社へは私から責任を持って報告し、その後の対応についても私が責任を持って対応とご報告をさせていただきます!」
「どうか頭を上げてください。学生の僕相手でも、いつも丁寧に対応してくださっていて感謝しているんですから。
それに、こちらの方の様に若さを理由に見下してこられる大人には何度も対してきましたし、慣れていますから」
「いや、でも・・・」
高野さんへ近付き、頭を上げて立つ様に促すために身体を軽く引き上げる様に力を入れたら、その流れで高野さんは立ち上がってくれた。
「それに、高野さんが僕の代わりに怒ってくれたので清々していますから」
その後、騒ぎを聞いて駆け付けてきた他の営業さんが高野さんの様子に驚いていて、聞くと高野さんは僕の印象通り温和で優しい人という認識で、同僚として長年付き合っていても怒ったところを見たことがなかったそうだ。
そんな怒らないと思われていた人が客である僕らがいるのに怒鳴るというのは異例のことで、丁度出先から戻ってきた営業所長も謝罪と合わせて挨拶をしてくれた。
その間、部屋の隅で僕らのやり取りを見ていたリフォーム業者氏は震えていた。
ちょっとしたアクシデントはあったものの概ね問題なく不動産取得についての話を終えられて、帰る前に少し休みましょうと提案して喫茶店へ入った。
二人して注文したホットミルクが給仕されたので飲みながら雑談として先程の高野さん達とのやり取りの事を話していたら、美晴さんのスマホが通話着信した。
「鷺ノ宮那奈さんから、出るね」
美晴さんが那奈さんからの着信であり通話することを告げてきたので、僕が頷いて了承の意を伝えると美晴さんは応答した。
「岸元です。はい、大丈夫です。
・・・ええ?目を覚まされないのですか?
・・・もちろん、それはさせていただきますが、むしろ妹と高梨先生へ那奈さんの連絡先をお伝えしてもよろしいですか?
・・・全然手間ではないですから、はい、冬樹くんにも伝えます。
・・・病院の情報は間違えない様にメッセージアプリで送っていただければと思います。
・・・はい、はい、承知しました。それではお大事になさってください」
美晴さんが通話を終えて、那奈さんからの電話の内容を教えてもらった。
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「二之宮さんのお見舞いへ行く?」
お見舞いに行くという発想はなかったけど、行くのも良いかもしれない。ただ、今行っても那奈さんの邪魔をするだけになると思う。
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