学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
195 / 252

第195話

しおりを挟む
神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

土曜日でお互いに予定がなかったので美晴みはるさんと不動産仲介業者の営業所を訪ねていた。

美晴さんにはあまり出歩いて欲しくなかったけど、適度に運動した方が良いし僕が一緒だから『デート気分になれて嬉しい』と言われてしまっては拒むことはできなかった。

そして、不動産取得についての話が終わったところで、不動産会社の提携しているリフォーム業者の営業さんがドタキャンされて空いているからと呼び出してくれた。


「身体が空いてたからお嬢ちゃん達の新婚さんごっこにお付き合いしますけど、学生さんのお小遣いじゃドア1枚交換できませんよ」


挨拶にきて名刺を渡された直後にその様な発言をされた。若い僕らを見て冷やかしだと思った様で、皮肉を言ったつもりなのかもしれない。もしかすると、過去にお金もその意思もないのに学生の冷やかしに付き合わされて徒労に終わったことが何度もあったのかもしれない・・・そういう意味では以前の対応で労力を無駄にさせられた事は気の毒だと思うし、学生だから無駄な時間を過ごさせられるという気持ちを持ってしまったのかもしれないが、僕らは本気だから偏見で軽くあしらわれたのは残念だし、美晴さんをバカにするような態度は不快だ。


「お客様になんて無礼な!
 こちらの神坂かみさか様は既に売買合わせて5件のお取引をしていただいているお得意様なんだぞ!
 しかも、今回のこの新しいお住まいと今お住まいのマンションについても仲介のご依頼をいただく予定でもあるんだ!
 どなた様であってもお客様には丁寧に対応するべきだが、こちらの方は特にバカにする様なことを言って良い相手じゃないぞ!
 今すぐそこへ手を突いて詫びろ!」


営業担当の高野たかのさんはリフォーム業者氏へ対して恐ろしいほど激しく叱責し、今度は僕達の方へ振り向いて先の発言通り手を床へ突き、頭を床へ叩きつけるような勢いで下げていわゆる土下座と呼ばれる姿勢を取った。


「神坂様、申し訳ございません。弊社に連なる者が不快な思いをさせる事となり申し訳ございませんでした!
 この者の会社へは私から責任を持って報告し、その後の対応についても私が責任を持って対応とご報告をさせていただきます!」


「どうか頭を上げてください。学生の僕相手でも、いつも丁寧に対応してくださっていて感謝しているんですから。
 それに、こちらのかたの様に若さを理由に見下してこられる大人には何度も対してきましたし、慣れていますから」


「いや、でも・・・」


高野さんへ近付き、頭を上げて立つ様に促すために身体を軽く引き上げる様に力を入れたら、その流れで高野さんは立ち上がってくれた。


「それに、高野さんが僕の代わりに怒ってくれたので清々していますから」



その後、騒ぎを聞いて駆け付けてきた他の営業さんが高野さんの様子に驚いていて、聞くと高野さんは僕の印象通り温和で優しい人という認識で、同僚として長年付き合っていても怒ったところを見たことがなかったそうだ。

そんな怒らないと思われていた人が客である僕らがいるのに怒鳴るというのは異例のことで、丁度出先から戻ってきた営業所長も謝罪と合わせて挨拶をしてくれた。


その間、部屋の隅で僕らのやり取りを見ていたリフォーム業者氏は震えていた。



ちょっとしたアクシデントはあったものの概ね問題なく不動産取得についての話を終えられて、帰る前に少し休みましょうと提案して喫茶店へ入った。

二人して注文したホットミルクが給仕されたので飲みながら雑談として先程の高野さん達とのやり取りの事を話していたら、美晴さんのスマホが通話着信した。


鷺ノ宮那奈さぎのみやななさんから、出るね」


美晴さんが那奈さんからの着信であり通話することを告げてきたので、僕が頷いて了承の意を伝えると美晴さんは応答した。


岸元きしもとです。はい、大丈夫です。

 ・・・ええ?目を覚まされないのですか?

 ・・・もちろん、それはさせていただきますが、むしろ妹と高梨たかなし先生へ那奈さんの連絡先をお伝えしてもよろしいですか?

 ・・・全然手間ではないですから、はい、冬樹ふゆきくんにも伝えます。

 ・・・病院の情報は間違えない様にメッセージアプリで送っていただければと思います。

 ・・・はい、はい、承知しました。それではお大事になさってください」


美晴さんが通話を終えて、那奈さんからの電話の内容を教えてもらった。

二之宮さんが出先で例の事件で関わっていたサッカー部の高橋たかはし先輩の妹に遭遇し、先輩の件で口論になってしまい弾みで激昂した妹から殴られて意識を失い病院へ運ばれたと言うことで、それを美波みなみや高梨先生や僕へ伝えて欲しいという事だった。その流れで那奈さんの連絡先を美波と高梨先生へ教えて良いという了承をもらって、ふたりへそれらの内容のメッセージを送りながら僕へ話をしてくれていた。


「二之宮さんのお見舞いへ行く?」


お見舞いに行くという発想はなかったけど、行くのも良いかもしれない。ただ、今行っても那奈さんの邪魔をするだけになると思う。


「一旦様子を見ましょう。恐らく今行っても、那奈さんの邪魔をするだけだと思います」


「そうだね、たしかに状況が落ち着いてからにするべきだね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...