207 / 252
第207話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
二之宮さんの行方不明騒動は思いのほか呆気ない終り方だった。
結局は病院での連絡の行き違いや運悪く二之宮さんが看護師さんに見付けられないところで寝てしまっていた事が原因であったとの事で、二之宮さんや鷺ノ宮那奈さんと直接やり取りをしている美晴さんと美波から説明をしてもらった。
入院するきっかけになった高橋先輩の妹が両親と共に二之宮さんの元へ謝罪に来たとのことだけれど、二之宮さんは自業自得だからと許す姿勢を見せたものの那奈さんが『それとこれとは別だ』と激怒して、二之宮さんとしてはそれが怖かったらしい。
また、高橋先輩の妹はお兄ちゃん子で二之宮さんに唆されるまでは体育会系特有の粗暴さがありながらも面倒見が良いお兄ちゃんだったのに、二之宮さんと関わるようになって人間性を壊された事が恨めしかったらしい。
那奈さんとしてもその点は理解できると激昂してしまったことを謝罪したという。
今後のこととして、那奈さんは今のアパートでは通勤が不便でセキュリティにも不安があるからと引っ越しを検討していると言うので、僕らが近々引っ越して空ける予定の今住んでいるマンションを売らずに鷺ノ宮家に貸すことを提案した。最初は遠慮されたものの、家賃相場通りの金額でも不動産業者へ支払う手数料などを浮かせることでメリットが有ると言う説明をして、決して知り合いだから安くする様な事をしないという事で納得してもらって貸し出すことにした。
説明した事には嘘はないけれど、実際にはマンションを売却しその資金を運用した方が稼ぎやすいというのはある。那奈さんや再起しようとしている二之宮さんを見ていて絆されたと言うのもあるし、美波も二之宮さんが近いところに住んでいた方が良いだろうという身内への配慮もあって、総合的には悪い判断ではないと思う。
余談で、仲介業者の高野さんに予定していた契約がなくなって申し訳ないと言う連絡をしたら、逆にそれで件のリフォーム業者へ契約がなくなったから責任を取る様にと言えるし、『既に多くの契約をしてもらっているのにわざわざ連絡をしていただいてありがたいです』とまで言われ気持ちの良い方だと再認識し、最初の時は偶然だったけど良いご縁だったのだなと実感した。
・・・そして、それから何事もなく時間が流れ期末テストが始まった。
・・・そして、何事もなくテストが終わり・・・今学期も残りわずかとなった。
◆岸元美晴 視点◆
二之宮さんが行方不明になった事は思いのほか問題なく解決して良かった。
協力してくれた明良さんや佐々木先輩には申し訳なかったけど、この件がきっかけで明良さんが佐々木先輩との事を真剣に考える事にしたとのことで逆にお礼を言われた。ふたりはまず友達からと言うことで、これから時々会って交流をしていくそうだ。
意外にもそれを聞いた玲香さんは驚くこともなく『ちゃんと噂話とかを選り分けて見るべきところを見れば良い男だし悪くないと思う』と言って陰ながら応援するつもりだという。応援すると言う割には態度に引っ掛かりを覚えるけど、玲香さんと明良さんは付き合いの長い親友同士だし親友が取られそうで嫉妬しているのかな?と思った。
転居は佐々木先輩の伝手で良い業者さんが丁度キャンセルされて空いていたところを紹介してもらえてすぐに着工でき、年内には引っ越しできて年末年始は3年ぶりに実家にも居られる状況になりそうだ。
佐々木先輩については、玲香さん達以外の知り合いにも話を聞いてみたところ、背が高くてカッコよくて仕事ができるので人気があって女性からも交際相手に望まれるけど、仕事や付き合いを優先しがちで交際している女性が我慢できなくて短期間で破綻してしまうことが多く、中には自分から別れると切り出したのに未練たらしくつきまとって次の交際相手とトラブルを起こしたりする事もあって女性関係がだらしないという噂が流布してしまっているらしいという話を聞かされ、やはり玲香さんや景子先輩とした話の通りようだった。
以前は、言い寄られるままに付き合っていたからそういう事になってしまっていて、最近は自分から声を掛けるようになっていたけど、佐々木先輩と言えど自分から交際したいと思う相手は既に交際相手が居て断られたり、趣味じゃないからと断られたりしていて、最近はフリーだったらしい。
佐々木先輩は私にも興味を持っていたとは聞いてたけど、私は冬樹くん一筋なのでその時はフリー期間が伸びていたはずなので、フリーの明良さんへ気持ちが行ったのはお互いのために良かったと思う。
明良さんの見た目は女性らしい格好をする様になって可愛くなっていたけど、佐々木先輩を意識するようになってから内面も乙女みたいな感じで可愛さが増してきて、それは私だけでなく大学内でも最近すごく可愛くなったと評判になっているのを見聞きする。私の感覚からすると中学生くらいで通過する恋愛への憧れを今からしようとしている様にも見えるけど、それがギャップですごく可愛くなっているのだから悪くはないと思う。
いよいよ過去を振り切って交際を申し込む男子もいるみたいだけど、明良さんは佐々木先輩のことを考えるからと全てお断りしていて、誠実さを感じている。
冬樹くんはテスト勉強があるのに私のことを第一に気遣ってくれて、それに対して申し訳ない気持ちになりつつも何よりも大事にされているという実感で幸せを感じている。今まで生きてた21年間で一番幸せな時期だと思う。
未来に向けての準備として玲香さんに乳幼児の子育てをしながらできる仕事がないか紹介をお願いしていて、近い内にプレゼンをしてくれるという・・・やはり、ビジネスについてはずっとやってきている玲香さんは頼りになると思う。
ただ、その玲香さんから『せっかく貸しができているのだから佐々木先輩にも紹介をお願いした方が良いよ』と勧められていて、玲香さんの紹介案件が不発に終わったらお願いしようかとは思っている。
冬樹くんのテストが終わり、いよいよ引っ越しに向けての動きが本格的に動き出した。
二之宮さんの行方不明騒動は思いのほか呆気ない終り方だった。
結局は病院での連絡の行き違いや運悪く二之宮さんが看護師さんに見付けられないところで寝てしまっていた事が原因であったとの事で、二之宮さんや鷺ノ宮那奈さんと直接やり取りをしている美晴さんと美波から説明をしてもらった。
入院するきっかけになった高橋先輩の妹が両親と共に二之宮さんの元へ謝罪に来たとのことだけれど、二之宮さんは自業自得だからと許す姿勢を見せたものの那奈さんが『それとこれとは別だ』と激怒して、二之宮さんとしてはそれが怖かったらしい。
また、高橋先輩の妹はお兄ちゃん子で二之宮さんに唆されるまでは体育会系特有の粗暴さがありながらも面倒見が良いお兄ちゃんだったのに、二之宮さんと関わるようになって人間性を壊された事が恨めしかったらしい。
那奈さんとしてもその点は理解できると激昂してしまったことを謝罪したという。
今後のこととして、那奈さんは今のアパートでは通勤が不便でセキュリティにも不安があるからと引っ越しを検討していると言うので、僕らが近々引っ越して空ける予定の今住んでいるマンションを売らずに鷺ノ宮家に貸すことを提案した。最初は遠慮されたものの、家賃相場通りの金額でも不動産業者へ支払う手数料などを浮かせることでメリットが有ると言う説明をして、決して知り合いだから安くする様な事をしないという事で納得してもらって貸し出すことにした。
説明した事には嘘はないけれど、実際にはマンションを売却しその資金を運用した方が稼ぎやすいというのはある。那奈さんや再起しようとしている二之宮さんを見ていて絆されたと言うのもあるし、美波も二之宮さんが近いところに住んでいた方が良いだろうという身内への配慮もあって、総合的には悪い判断ではないと思う。
余談で、仲介業者の高野さんに予定していた契約がなくなって申し訳ないと言う連絡をしたら、逆にそれで件のリフォーム業者へ契約がなくなったから責任を取る様にと言えるし、『既に多くの契約をしてもらっているのにわざわざ連絡をしていただいてありがたいです』とまで言われ気持ちの良い方だと再認識し、最初の時は偶然だったけど良いご縁だったのだなと実感した。
・・・そして、それから何事もなく時間が流れ期末テストが始まった。
・・・そして、何事もなくテストが終わり・・・今学期も残りわずかとなった。
◆岸元美晴 視点◆
二之宮さんが行方不明になった事は思いのほか問題なく解決して良かった。
協力してくれた明良さんや佐々木先輩には申し訳なかったけど、この件がきっかけで明良さんが佐々木先輩との事を真剣に考える事にしたとのことで逆にお礼を言われた。ふたりはまず友達からと言うことで、これから時々会って交流をしていくそうだ。
意外にもそれを聞いた玲香さんは驚くこともなく『ちゃんと噂話とかを選り分けて見るべきところを見れば良い男だし悪くないと思う』と言って陰ながら応援するつもりだという。応援すると言う割には態度に引っ掛かりを覚えるけど、玲香さんと明良さんは付き合いの長い親友同士だし親友が取られそうで嫉妬しているのかな?と思った。
転居は佐々木先輩の伝手で良い業者さんが丁度キャンセルされて空いていたところを紹介してもらえてすぐに着工でき、年内には引っ越しできて年末年始は3年ぶりに実家にも居られる状況になりそうだ。
佐々木先輩については、玲香さん達以外の知り合いにも話を聞いてみたところ、背が高くてカッコよくて仕事ができるので人気があって女性からも交際相手に望まれるけど、仕事や付き合いを優先しがちで交際している女性が我慢できなくて短期間で破綻してしまうことが多く、中には自分から別れると切り出したのに未練たらしくつきまとって次の交際相手とトラブルを起こしたりする事もあって女性関係がだらしないという噂が流布してしまっているらしいという話を聞かされ、やはり玲香さんや景子先輩とした話の通りようだった。
以前は、言い寄られるままに付き合っていたからそういう事になってしまっていて、最近は自分から声を掛けるようになっていたけど、佐々木先輩と言えど自分から交際したいと思う相手は既に交際相手が居て断られたり、趣味じゃないからと断られたりしていて、最近はフリーだったらしい。
佐々木先輩は私にも興味を持っていたとは聞いてたけど、私は冬樹くん一筋なのでその時はフリー期間が伸びていたはずなので、フリーの明良さんへ気持ちが行ったのはお互いのために良かったと思う。
明良さんの見た目は女性らしい格好をする様になって可愛くなっていたけど、佐々木先輩を意識するようになってから内面も乙女みたいな感じで可愛さが増してきて、それは私だけでなく大学内でも最近すごく可愛くなったと評判になっているのを見聞きする。私の感覚からすると中学生くらいで通過する恋愛への憧れを今からしようとしている様にも見えるけど、それがギャップですごく可愛くなっているのだから悪くはないと思う。
いよいよ過去を振り切って交際を申し込む男子もいるみたいだけど、明良さんは佐々木先輩のことを考えるからと全てお断りしていて、誠実さを感じている。
冬樹くんはテスト勉強があるのに私のことを第一に気遣ってくれて、それに対して申し訳ない気持ちになりつつも何よりも大事にされているという実感で幸せを感じている。今まで生きてた21年間で一番幸せな時期だと思う。
未来に向けての準備として玲香さんに乳幼児の子育てをしながらできる仕事がないか紹介をお願いしていて、近い内にプレゼンをしてくれるという・・・やはり、ビジネスについてはずっとやってきている玲香さんは頼りになると思う。
ただ、その玲香さんから『せっかく貸しができているのだから佐々木先輩にも紹介をお願いした方が良いよ』と勧められていて、玲香さんの紹介案件が不発に終わったらお願いしようかとは思っている。
冬樹くんのテストが終わり、いよいよ引っ越しに向けての動きが本格的に動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる