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第221話
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◆津島玲香 視点◆
昨日、アキラくんと佐々木先輩が手を恋人繋ぎして歩いていたという情報が入ってきていた。
もちろんアキラくんが佐々木先輩とデートをしていた事は知っているし、何なら後押ししたのはアタシだから一番の原因とも言える。
約束していたわけではないけど、アキラくんからどうなったのかの連絡をもらえないまま翌朝を迎えてしまったので・・・悔しかったり詳しいことを聞きたかったりしたので・・・予告のメッセージだけ送ってからアキラくんのアパートまでやってきた。
アパートの前まで着いてもアキラくんからの返答はなく、インターホンを2度鳴らしたものの出てこないので、もらっている合鍵を使ってドアを開けた。
微かだけど今までに嗅いだことがないやや鼻に刺激を感じる匂いがしたけど、その理由が分からなかった。
とりあえず匂いのことは横に置いて部屋の様子を見ると流し台に昨日使ったまま水に浸けただけと思われるマグカップなどがあって、他には不審なところはなかった。
奥の寝室兼個室への引き戸を開いた。
ベッドに横になって反対側を向いているアキラくん・・・
と、そのアキラくんを抱きしめるようにこちら側を向いて寝ている佐々木先輩がいて、このアパートに入ってから感じていた鼻に刺激的な匂いが強く感じられた。
ここに来て、この匂いの正体に気付いた・・・佐々木先輩のアレの匂いだと。
こちとら処女を21年ほど貫き通しているのでご縁がないけど、さすがに知識としてはある・・・ふたりはそういう関係になったのだとわかった。
とは言え、心の準備をしないまま親友のアキラくんの朝チュンの現場を相手とセットで見てしまっては困惑しないわけがなく戸惑ってしまった。
戸惑って動けなかった時間はわずかだと思うけど、アタシが引き戸を開けたことにより明るくなったので、その光で眠りを妨げられたのか佐々木先輩が目を開けた・・・そしてアタシと目が合った。
「あっ、そのっ、おはよう、津島ちゃん」
「おっ、おはようございます」
佐々木先輩からしたら朝チュンの現場を見られたわけで、意識がしっかりしてくると同時に気不味い状況だと感じているのではないかと思う・・・見てしまった側のアタシも十分気不味い。
「その、何も着てないからアキラを起こして見られる様にするから、少しそっちで待っていてくれないか?」
「そうですよね。すみません、一旦ここを閉めてそっちで待ってますね」
「ごめん、その昨日はずっと雷斗さんと居たからスマホをほとんど見てなかったし、返信し忘れてた」
目を覚まし、最低限の支度をしたアキラくんと佐々木先輩が横に並び、反対側にアタシが座るというポジションでこたつに入って対した。
「いや、アタシこそゴメン。アキラくんと佐々木先輩が恋人繋ぎして歩いていたという書き込みがあったから気になって来ちゃったんだよ」
「そ、そんなのが出回ってるんだ・・・」
「うん、けっこう広がっているみたいだよ。
アキラくんも佐々木先輩も学内では有名人だから気になる人が多いみたい」
「そっか・・・」
「あのよ、津島ちゃん。
津島ちゃんは協力してくれたし相談にも乗ってくれたからちゃんと報告したかったんだよ。
昨日の夜に、アキラとふたりで津島ちゃんと、あと岸元ちゃんにはちゃんと報告しに行こうって相談してたから、その事はわかっていて欲しい」
「大丈夫ですよ、先輩。アキラくんがそんな不義理な人間じゃないことはアタシはちゃんと知ってますから・・・噂で知らされた結果は悔しいですけど、それで含むことはないですよ」
「そっか、そうだよな・・・俺なんかよりずっと関係が長いんだもんな」
「そうですよ。アタシとアキラくんはもう9年近い付き合いですからね。ぽっと出の先輩とは年季が違うんですよ」
その流れで昨日の告白とか佐々木先輩がどれほどアキラくんを大事にしようと思っているのかなど聞かされた・・・その真剣な表情はいつも見せる何処か斜に構えた感じで飄々としているものと違い、本気の度合いを感じさせられた。
悔しいけど、今までで一番カッコいい人だなって思った。
それと、2度もインターホンを鳴らしたのに起きなかった事については、夜遅くまで起きていた結果とのことで、それを自供したアキラくんの恥ずかしそうな表情に大変ほっこりした。
◆岸元美晴 視点◆
明良さんから昨日のことを報告したいから会いたいと電話連絡をもらい、できるだけ人目に付かなそうな所が良いということで、冬樹くんに相談してうちへ来てもらうことにしました。
冬樹くんは明良さんが来ている間に実家に来ている従兄弟に会って、そのついでに引越し先の家の様子を見てくると言って出ていった。
明良さんの他には玲香さんも同伴されるということで、どうしてなのか疑問もありますけど、声の感じからして悪い話ではなさそうと思います。
約束の時間になり明良さんと玲香さん・・・と、佐々木先輩がいらっしゃいました。
『どうして佐々木先輩が?』と思って尋ねたら明良さんは玲香さんと佐々木先輩と一緒に行くと言っていたとのことで、私が聞き逃してしまっていたようでした。
「岸元ちゃん。俺から言わせてもらいたいんだが、アキラと正式に付き合うことになった」
「それはおめでとうございます。明良さんも良かったですね」
「ありがとう。岸元ちゃんには相談させてもらったり煩わせてたからちゃんと礼を言わせてもらいたかったんだ」
「別に私だって友達のためにと、ちょっとお話をしただけですよ」
「岸元ちゃんにとってはちょっとかもしれないけど、俺とアキラが良い関係を築ける大きな土台を作ってくれたことには違いないしちゃんと礼を言わせて欲しい」
「わかりました。過剰なお礼の気がしますけど、お気持ちは受け取らせていただきます」
そう言って差し出されたお菓子・・・しかも私が以前玲香さんに好きだと言っていたお店のものを受け取らせてもらいました。
「ねぇねぇ、聞いてよみはるん。この二人さ、昨日恋人繋ぎで歩いてるところを目撃されてけっこう色んな人に知れ渡ってるんだよ」
「そうだったんですか?
私の友人達からはそう言った連絡が来ていませんね」
「やっぱり玲香はぼくと付き合いが長いから、気になった人達が詳しそうだからと玲香に連絡しただけだったんだよ」
「そうかなぁ・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるよ」
それからは主に玲香さんが質問をして明良さんと佐々木先輩が答えていくような感じで昨日あったという告白の話を中心に談笑しました。
お二人からは秘密にされましたけど佐々木先輩は大学では誰にも言っていない趣味があって、明良さんにだけは話したということで、それだけでも先輩の本気が伺えます。私との付き合いは全然なかった方ですけど、景子先輩が仰っていたように信頼できるのだろうなと思いました。
それにしても、後悔しないようにという話はしていましたけど本当に明良さんが誘って一夜を共にしたというのは驚きましたし、先輩は本気で下心なくデートへ臨み避妊具を用意していなかったから私が差し上げたもので助かったなんて言う話は何の冗談かと思いました。
明良さん達は幸せそうで、冬樹くんと幸せな生活を送っている私でも羨ましくなるほどです。一方で玲香さんの表情には少し陰りが見えますけど、親友を取られたことでの先輩への嫉妬心でしょうか?
昨日、アキラくんと佐々木先輩が手を恋人繋ぎして歩いていたという情報が入ってきていた。
もちろんアキラくんが佐々木先輩とデートをしていた事は知っているし、何なら後押ししたのはアタシだから一番の原因とも言える。
約束していたわけではないけど、アキラくんからどうなったのかの連絡をもらえないまま翌朝を迎えてしまったので・・・悔しかったり詳しいことを聞きたかったりしたので・・・予告のメッセージだけ送ってからアキラくんのアパートまでやってきた。
アパートの前まで着いてもアキラくんからの返答はなく、インターホンを2度鳴らしたものの出てこないので、もらっている合鍵を使ってドアを開けた。
微かだけど今までに嗅いだことがないやや鼻に刺激を感じる匂いがしたけど、その理由が分からなかった。
とりあえず匂いのことは横に置いて部屋の様子を見ると流し台に昨日使ったまま水に浸けただけと思われるマグカップなどがあって、他には不審なところはなかった。
奥の寝室兼個室への引き戸を開いた。
ベッドに横になって反対側を向いているアキラくん・・・
と、そのアキラくんを抱きしめるようにこちら側を向いて寝ている佐々木先輩がいて、このアパートに入ってから感じていた鼻に刺激的な匂いが強く感じられた。
ここに来て、この匂いの正体に気付いた・・・佐々木先輩のアレの匂いだと。
こちとら処女を21年ほど貫き通しているのでご縁がないけど、さすがに知識としてはある・・・ふたりはそういう関係になったのだとわかった。
とは言え、心の準備をしないまま親友のアキラくんの朝チュンの現場を相手とセットで見てしまっては困惑しないわけがなく戸惑ってしまった。
戸惑って動けなかった時間はわずかだと思うけど、アタシが引き戸を開けたことにより明るくなったので、その光で眠りを妨げられたのか佐々木先輩が目を開けた・・・そしてアタシと目が合った。
「あっ、そのっ、おはよう、津島ちゃん」
「おっ、おはようございます」
佐々木先輩からしたら朝チュンの現場を見られたわけで、意識がしっかりしてくると同時に気不味い状況だと感じているのではないかと思う・・・見てしまった側のアタシも十分気不味い。
「その、何も着てないからアキラを起こして見られる様にするから、少しそっちで待っていてくれないか?」
「そうですよね。すみません、一旦ここを閉めてそっちで待ってますね」
「ごめん、その昨日はずっと雷斗さんと居たからスマホをほとんど見てなかったし、返信し忘れてた」
目を覚まし、最低限の支度をしたアキラくんと佐々木先輩が横に並び、反対側にアタシが座るというポジションでこたつに入って対した。
「いや、アタシこそゴメン。アキラくんと佐々木先輩が恋人繋ぎして歩いていたという書き込みがあったから気になって来ちゃったんだよ」
「そ、そんなのが出回ってるんだ・・・」
「うん、けっこう広がっているみたいだよ。
アキラくんも佐々木先輩も学内では有名人だから気になる人が多いみたい」
「そっか・・・」
「あのよ、津島ちゃん。
津島ちゃんは協力してくれたし相談にも乗ってくれたからちゃんと報告したかったんだよ。
昨日の夜に、アキラとふたりで津島ちゃんと、あと岸元ちゃんにはちゃんと報告しに行こうって相談してたから、その事はわかっていて欲しい」
「大丈夫ですよ、先輩。アキラくんがそんな不義理な人間じゃないことはアタシはちゃんと知ってますから・・・噂で知らされた結果は悔しいですけど、それで含むことはないですよ」
「そっか、そうだよな・・・俺なんかよりずっと関係が長いんだもんな」
「そうですよ。アタシとアキラくんはもう9年近い付き合いですからね。ぽっと出の先輩とは年季が違うんですよ」
その流れで昨日の告白とか佐々木先輩がどれほどアキラくんを大事にしようと思っているのかなど聞かされた・・・その真剣な表情はいつも見せる何処か斜に構えた感じで飄々としているものと違い、本気の度合いを感じさせられた。
悔しいけど、今までで一番カッコいい人だなって思った。
それと、2度もインターホンを鳴らしたのに起きなかった事については、夜遅くまで起きていた結果とのことで、それを自供したアキラくんの恥ずかしそうな表情に大変ほっこりした。
◆岸元美晴 視点◆
明良さんから昨日のことを報告したいから会いたいと電話連絡をもらい、できるだけ人目に付かなそうな所が良いということで、冬樹くんに相談してうちへ来てもらうことにしました。
冬樹くんは明良さんが来ている間に実家に来ている従兄弟に会って、そのついでに引越し先の家の様子を見てくると言って出ていった。
明良さんの他には玲香さんも同伴されるということで、どうしてなのか疑問もありますけど、声の感じからして悪い話ではなさそうと思います。
約束の時間になり明良さんと玲香さん・・・と、佐々木先輩がいらっしゃいました。
『どうして佐々木先輩が?』と思って尋ねたら明良さんは玲香さんと佐々木先輩と一緒に行くと言っていたとのことで、私が聞き逃してしまっていたようでした。
「岸元ちゃん。俺から言わせてもらいたいんだが、アキラと正式に付き合うことになった」
「それはおめでとうございます。明良さんも良かったですね」
「ありがとう。岸元ちゃんには相談させてもらったり煩わせてたからちゃんと礼を言わせてもらいたかったんだ」
「別に私だって友達のためにと、ちょっとお話をしただけですよ」
「岸元ちゃんにとってはちょっとかもしれないけど、俺とアキラが良い関係を築ける大きな土台を作ってくれたことには違いないしちゃんと礼を言わせて欲しい」
「わかりました。過剰なお礼の気がしますけど、お気持ちは受け取らせていただきます」
そう言って差し出されたお菓子・・・しかも私が以前玲香さんに好きだと言っていたお店のものを受け取らせてもらいました。
「ねぇねぇ、聞いてよみはるん。この二人さ、昨日恋人繋ぎで歩いてるところを目撃されてけっこう色んな人に知れ渡ってるんだよ」
「そうだったんですか?
私の友人達からはそう言った連絡が来ていませんね」
「やっぱり玲香はぼくと付き合いが長いから、気になった人達が詳しそうだからと玲香に連絡しただけだったんだよ」
「そうかなぁ・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるよ」
それからは主に玲香さんが質問をして明良さんと佐々木先輩が答えていくような感じで昨日あったという告白の話を中心に談笑しました。
お二人からは秘密にされましたけど佐々木先輩は大学では誰にも言っていない趣味があって、明良さんにだけは話したということで、それだけでも先輩の本気が伺えます。私との付き合いは全然なかった方ですけど、景子先輩が仰っていたように信頼できるのだろうなと思いました。
それにしても、後悔しないようにという話はしていましたけど本当に明良さんが誘って一夜を共にしたというのは驚きましたし、先輩は本気で下心なくデートへ臨み避妊具を用意していなかったから私が差し上げたもので助かったなんて言う話は何の冗談かと思いました。
明良さん達は幸せそうで、冬樹くんと幸せな生活を送っている私でも羨ましくなるほどです。一方で玲香さんの表情には少し陰りが見えますけど、親友を取られたことでの先輩への嫉妬心でしょうか?
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