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散りゆく此花㈡
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「……先ほど、愚弟と言を交わしまして」
くすぶる声音をひそめた紅に、真知は腕を組み、「へぇ」と興味深げに片眉を持ち上げた。
「で、景気よく恒例の火だるま祭り?」
「まさか。れっきとした真剣勝負――今宵、誓約を執り行いまする。貴方様もお越しになるとよろしかろう」
「対価は」
「己が命」
「褒美は」
「無論、八百万にふたつとない麗しき花を。貴方様がご所望であれば、ですけれど」
「ふ……愚問だな」
起伏に乏しい頬の筋肉を弛め、真知は薄笑う。
「もう二度と、あいつは散らせない」
凛然たる宣言の余韻に、対峙する二柱。
その間を春の夕風が肩身を狭そうにして吹き抜け、宵の向こうへ消えてしまった。
「かしこまりまして。では――」
優雅な所作で辞儀をするものと思われた一瞬のうちに、鈍い輝きが鼈甲をよぎる。
「愉しみに、しておりますね……?」
穂花の後を継いだ右手は、竹箒を握っていたはずと記憶していたが。
押し当てられた硬質なそれは、研ぎ澄まされた冷たさで頸動脈をしかと捉えていた。
白銀の片手剣。構えの風格から、にわか仕込みでないことは容易に見て取れよう。
「宜しく」
微塵も動じぬ単調な返答に、花の笑みがひとつ、ほころぶ。
茜に散らされ、舞い狂う薄桃の、此花のように。
くすぶる声音をひそめた紅に、真知は腕を組み、「へぇ」と興味深げに片眉を持ち上げた。
「で、景気よく恒例の火だるま祭り?」
「まさか。れっきとした真剣勝負――今宵、誓約を執り行いまする。貴方様もお越しになるとよろしかろう」
「対価は」
「己が命」
「褒美は」
「無論、八百万にふたつとない麗しき花を。貴方様がご所望であれば、ですけれど」
「ふ……愚問だな」
起伏に乏しい頬の筋肉を弛め、真知は薄笑う。
「もう二度と、あいつは散らせない」
凛然たる宣言の余韻に、対峙する二柱。
その間を春の夕風が肩身を狭そうにして吹き抜け、宵の向こうへ消えてしまった。
「かしこまりまして。では――」
優雅な所作で辞儀をするものと思われた一瞬のうちに、鈍い輝きが鼈甲をよぎる。
「愉しみに、しておりますね……?」
穂花の後を継いだ右手は、竹箒を握っていたはずと記憶していたが。
押し当てられた硬質なそれは、研ぎ澄まされた冷たさで頸動脈をしかと捉えていた。
白銀の片手剣。構えの風格から、にわか仕込みでないことは容易に見て取れよう。
「宜しく」
微塵も動じぬ単調な返答に、花の笑みがひとつ、ほころぶ。
茜に散らされ、舞い狂う薄桃の、此花のように。
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