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269.閑話 とある学食での情景2

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「佐藤さん、どうしたの?このくらいは普通だよ。
伝説クラスの上級者はもっと凄いよ。
僕はまだまださ。それより早く書き込まないと」

急かされた千晴は慌てて、書き込み始めた。
のろのろと書き込んでいるうちに誠一や周りの魔術師が
突然、炎の魔術を放った。
そして、その直後に打ち込みを送信してしまった。

『誠一さん、大丈夫ですか?何か大変そうなので手短に話します。
もし、隠す気が無ければ、大学で所属していた部活や
サークル名を教えてください。
それと学籍番号や学友の名前を教えてください』
千晴はしまったと書き込み直後に思った。
まさか、戦端が開かれるとは予想していなかった。
魔物は遥か城壁の後方であり、まだまだ戦は
先だと思っていた矢先のことであった。

 一発目の魔術を放った誠一の表情が険しかった。
それを目にした千晴は、焦ってしまった。それが清涼にも分かったのだろう。
「佐藤さん、どうしたの?」
千晴の画面を覗き込んだ清涼だった。
「ちょっと、それはまずいよ。
この状況でそれはちょっとまずいね。
アルフレートが戦に集中していないじゃん」

「どうすればいいのよ。もう書いてしまったし」

「佐藤さん、僕が指示出すから、貸して」
清涼が千晴のパッドに手をかけた。
千晴の右手と清涼の右手が触れた。
パッドを無遠慮に覗かれる行為も肌が触れる行為も
千晴には不快だったが、良案など思いつく訳もなく清涼に預けた。
千晴にも分かるように画面を見せながら、
凄まじい速度で書き込みを始める清涼だった。
会社では決して見せぬこの打ち込み速度に何度見ても
感心してしまう千晴だった。

 『周囲の動きに惑わされて、無駄に魔力を使うな。
今は温存しろ。無秩序な魔術の乱射が収まったら、
弓兵と切り替わるはずだ。
弓兵に補助魔術をかけるように周囲に働きかけろ。
良いな。戦場が落ち着いたら、さっきの問いに答えてくれ』

上空を見つめる誠一の表情が怪訝な表情に変わっていた。

「まじかよ、こいつの表情。
指示の出し方や書き方で複数の書き込み者がいることに
気づいたのか」
誠一を見る清涼が驚きの表情をした。

『助言ありがとうざいます。先ほどの問いには必ずお答えします』

「佐藤さん、悪目立ちするかもしれないけど、
一先ずこの戦場で使えそうなアイテムを送るよ」
再び、清涼がすさまじ打ち込み速度でアイテムを選択して、
誠一に送った。
アイテムを受け取った誠一は戦場に目を向けて、
大声で指示を出しながら、補助魔術を展開していた。

「はい、佐藤さん。
まあ、これから先は相当、刺激の強い状況になるから、
苦手なら、画面を閉じた方がいいよ。
時間がなかったとはいえ、少し強引だったかな。
お詫びにそのまあ、ここの学食だけど、奢るよ」

清涼の言葉についつい千晴は笑いを誘われてしまった。
「私じゃ全然、対応できなかったし。
まあ、でもここはそのご好意に甘えますね」
清涼も千晴に釣られて笑った。二人は、券売機の方に向かった。
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