転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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287.旅路5

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「アル、何か何の物音一つしないな。不気味だよな。
何かこう風の音一つしない暗闇って不気味だよな」
誠一とヴェルは夜警の番をしていた。
確かに焚き火にくべられた燃え朽ちる枝の音以外に何の音もしなかった。
二人の会話の音が妙に暗闇に向かってこだましていた。

誠一はヴェルの声を聞きながら、首を傾げた。
「アル、どうした?もしかして怖いのか?」

「いや、そうじゃなくて。馬車は平坦な道を進んでいたよね」
誠一は手を思い切って叩いた。
叩いた直後に音が聞えた。いわゆる残響が聞えた。

その独特な音に休みを取っていた他のメンバーもすぐさま起きた。
「アルフレート君、何が起きた?」
ロジェが剣を取り、すぐさま臨戦態勢をとった。

「アル、大丈夫?」
キャロリーヌは焚き火を囲んで座っている誠一の側に直ぐに移動した。
シエンナは杖を構え、ライトの魔術を展開していた。
サリナも短剣を持ち、周囲を警戒していた。

剣豪は欠伸をしながら、ゆっくりと起き上がった。
「鳴龍でござるな。懐かしき響きでした。
我が故郷の寺社仏閣の堂内で手を叩くと起きる残響ですな」
誠一は詳しいことは知らなかった。
知っていることと言えば、確か狭い部屋などで
壁にぶつかった音が反響して、音が重なり合い独特な音を
奏でる現象のことくらいであった。
その程度であったが、皆に説明をすると、剣豪が珍しく感心していた。

「アルフレート君。この現象についての話は中々興味深いが、今は夜だ。
冒険者として疲労を回復するのが大切な時ではないかな。
身内とはいえ、なかなか許容できない」
ロジェが誠一の行動を窘めた。
ロジェの言わんとすることを理解した誠一は素直に頭を下げた。
何故かシエンナの耳がロジェの言葉にピクリと反応していたが、
何の言及もしなかった。

「それでアル。その現象がここで生じていているとして、
あなたの言わんとすることはどんなことなの?」
キャロリーヌが誠一に尋ねた。
キャロリーヌの右腕と誠一の左腕は密着するほどに近かった。
何故かシエンナの目が二人の距離を睨みつけていたが、無言であった。

「そうですね。論より証拠。そうした方が分かりやすいと思います。
シエンナ、ヴェル、すまないけど手伝って貰える?」
誠一は二人に説明をした。
二人は驚いたが、頷き、杖とハルバートを構えた。
誠一は7面メイスを同じように構えた。
そして、三人は同時に同じ詠唱を始めた。

三人の声が重なり合い、こだました。
「氷の塔よ。ここに天高く顕現せよ」
三人の中心の地より氷の塊が現れ、夜空に向かって伸びていった。

ガキィーン。

何かにぶつかる音がすると勢いよく伸びていた氷の塊が派手に砕けた。
ぱらぱらと氷の礫が落ちて来た。
そして、彼等の周りに一瞬、凄まじい振動が生じた。
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