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400.不穏5
しおりを挟む「わっちょっと。わわわっ、私、そんな趣味、えっと」
シエンナが頬を染めながら、混乱していた。
サリナが羨ましそうにその光景を眺めていた。
シエンナからキャロリーヌは離れると誠一の前に立った。
絹のように滑らかそうな黄金の髪。
首飾りは彼女の瞳と同じ色のブルーサファイア。
胸元のスリットは下品に見えない程度に上手く調整されており、
彼女の色気を十分に引き出していた。
ドレスは、一見、地味に見える濃い蒼であったが、
彼女自身の魅力をふんだんに引き出して、非常に映えた。
「あっ、いや、似合っているよ」
「まったくもう、アルらしいね」
二人はお互いに笑うと、皆に挨拶をして、馬車に乗った。
通りかかった民は一様に足を止めて、感嘆の声をあげていた。
二人は、宮廷の大広間に到着する前から既に注目の的であった。
二人の一挙手一投足が注目を集めていた。
「ふん、あれが街で話題を集めている金髪の小僧か」
「兄さま、嫉妬ですか?」
「な訳ないだろう。吟遊詩人なんぞに
あの若さで己の功績を謳わせるなんて、小物の所業だ。
気にする程の事もない」
「しかしながら、兄上、神よりお言葉を頂いている以上、
無視は出来かねましょうぞ」
「それに兄さま、詠うのはあの高名偏屈なファーリですわ。
それなりに何か特別なのではないでしょうか?」
「たしか諜報の結果だと、二人ともランクは高いようだな。
皇国の繁栄のためにあの女は俺が貰う。
おまえはエスターライヒの小僧の子を成せ。
高ランクの子を得られる可能性が高い」
「嫌ですわ。あんななよなよした男。
私は強くたくましい男が好みなのです」
「しかし、姉様。あれほどの美人が惚れているところをみると、
何かしら特別なナニなのかもしれませんよ。テクニックが凄いとか」
「いやな弟ね。そんなのどうでもいいわ」
彼等は誠一とキャロリーヌの後ろ姿が人混みで
見えなくなるまで値踏みするようにねめつけていた。
一段高い場所で玉座に腰を下ろしているダンブルは
気だるそうに広間に集まる貴族たちを見下ろしていた。
シャービスがダンブルに何かを囁くと、ダンブルは左手を上げた。
すると、歓談に興じていた貴族たちは静かにした。
ダンブルは立ち上がった。所持全般に動作が鈍かった。
新たに加わった貴族たちは、これで軍を率いることが
できるのだろうか一抹の不安を感じた。
「諸君、本日は突然の招集に応えてくれて、感謝する。
新たに我が皇国に馳せ参じた戦士たちと交流を深めたいと
今日のパーティを開催した。今日は、存分に楽しんでくれたまえ」
ダンブルが持つ盃に酒が注がれた。
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