462 / 978
456.再会4
しおりを挟む
こいつは何を言っているんだ、誠一は、
自分がそんなことを指示した覚えはなかった。
そもそもその当時、ファルク家など知らなかった。
しかし何かしらの自分の指示のためにリシェーヌの一族が
皆殺しに合い、彼女は天涯孤独になった。
「神は俺に天啓を与えた。己の能力を向上させろと。
そうだから、手っ取り早く女王の近衛隊長の一族を皆殺しにしたのだ。
皆殺しの後に神は仰せになった。この場を去れと。
去り際を心配されて、力まで与えたもうたのだ」
誠一は、バッシュの言葉に動揺した。
危うく悩乱して暴れそうになった誠一を
後ろからやさしく包み込む人がいた。
「アル、不快になるのは分かるわ。
この男は悪神に取り憑かれているのよ。
貴方の動揺を誘っているのよ。落ち着いて」
キャロリーヌに囁かれて、誠一は更に動揺した。
まさしく自分の所業が仲間から悪神と呼ばれているに
相違なかったからであった。
バッシュの目は相変わらず誠一の瞳孔を捉えて離さなかった。
「次の質問だったな。俺は管理者に接触したい。
そのために情報を集めている。
歴代の学院長が何かをそこでしているはずだ。それを知りたい。
アルフレート、貴様もおかしいと思わないか?この世界の在り様を」
誠一の瞳孔はどこを映しているのか
最早、本人にも分からなくなっていた。
頭が身体がくるくると回ってぼんやりとしていた。
バッシュの吐く情報は、脳の中をめちゃくちゃにした。
誠一を観察するバッシュの表情は変らない。そして、続けた。
「最後の質問だったな。まあ、フリッツはどうでもいい。
ナージャが持っているだろう称号『異世界人の誘い』・『管理者との対話』だ。
特に奴がまだ、『異世界人の誘い』を行使せずに保持しているかどうかだ」
バッシュの目が一際大きく見開き、誠一の全てを覗き込もうと
試みたように誠一の瞳には映った。
それは錯覚であったが、誠一は酩酊したように
ふらふらとして、その場に吐瀉した。
それでも尚、キャロリーヌは誠一を離さなかった。
シエンナがゲロで汚れた口元を拭った。
ロジェとヴェルが誠一の前に立ち、バッシュの視線を遮った。
『ちょっと、誠一さん。大丈夫ですか?
そっそうだ、心を強く持って。大丈夫、あなたは悪くない』
プレーヤーの言葉が誠一の心に染み渡ると、
動悸が落ち着き、思考が戻って来た。
「はぁはぁ、神ヨ、感謝いたします。
お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
ここにいる全員に聞える様に誠一は叫んだ。
『いやいや、それより大丈夫ですか?
何だか恐ろしく性悪の男に見えますから、
気を付けてくださいね』
『ええ、ありがとうございました』
プレーヤーとの対話を終えて、再び誠一はバッシュと対峙した。
お互いに無言であった。
自分がそんなことを指示した覚えはなかった。
そもそもその当時、ファルク家など知らなかった。
しかし何かしらの自分の指示のためにリシェーヌの一族が
皆殺しに合い、彼女は天涯孤独になった。
「神は俺に天啓を与えた。己の能力を向上させろと。
そうだから、手っ取り早く女王の近衛隊長の一族を皆殺しにしたのだ。
皆殺しの後に神は仰せになった。この場を去れと。
去り際を心配されて、力まで与えたもうたのだ」
誠一は、バッシュの言葉に動揺した。
危うく悩乱して暴れそうになった誠一を
後ろからやさしく包み込む人がいた。
「アル、不快になるのは分かるわ。
この男は悪神に取り憑かれているのよ。
貴方の動揺を誘っているのよ。落ち着いて」
キャロリーヌに囁かれて、誠一は更に動揺した。
まさしく自分の所業が仲間から悪神と呼ばれているに
相違なかったからであった。
バッシュの目は相変わらず誠一の瞳孔を捉えて離さなかった。
「次の質問だったな。俺は管理者に接触したい。
そのために情報を集めている。
歴代の学院長が何かをそこでしているはずだ。それを知りたい。
アルフレート、貴様もおかしいと思わないか?この世界の在り様を」
誠一の瞳孔はどこを映しているのか
最早、本人にも分からなくなっていた。
頭が身体がくるくると回ってぼんやりとしていた。
バッシュの吐く情報は、脳の中をめちゃくちゃにした。
誠一を観察するバッシュの表情は変らない。そして、続けた。
「最後の質問だったな。まあ、フリッツはどうでもいい。
ナージャが持っているだろう称号『異世界人の誘い』・『管理者との対話』だ。
特に奴がまだ、『異世界人の誘い』を行使せずに保持しているかどうかだ」
バッシュの目が一際大きく見開き、誠一の全てを覗き込もうと
試みたように誠一の瞳には映った。
それは錯覚であったが、誠一は酩酊したように
ふらふらとして、その場に吐瀉した。
それでも尚、キャロリーヌは誠一を離さなかった。
シエンナがゲロで汚れた口元を拭った。
ロジェとヴェルが誠一の前に立ち、バッシュの視線を遮った。
『ちょっと、誠一さん。大丈夫ですか?
そっそうだ、心を強く持って。大丈夫、あなたは悪くない』
プレーヤーの言葉が誠一の心に染み渡ると、
動悸が落ち着き、思考が戻って来た。
「はぁはぁ、神ヨ、感謝いたします。
お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
ここにいる全員に聞える様に誠一は叫んだ。
『いやいや、それより大丈夫ですか?
何だか恐ろしく性悪の男に見えますから、
気を付けてくださいね』
『ええ、ありがとうございました』
プレーヤーとの対話を終えて、再び誠一はバッシュと対峙した。
お互いに無言であった。
1
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜
犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。
異世界を救ってほしい。
そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉
異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。
転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど?
人がいいって言ったのに。
竜人族?
竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ!
それ以外はおおよそ希望通りだけど……
転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。
まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。
もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。
竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる