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477.王都6
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「誠一君、バッシュの一派と何らかの接触があったのだな。
でなければ、それを望むことはないからのう」
誠一は素直に頷いた。
納得したようにファウスティノも頷き、話を続けた。
「誰も行方が分からぬ。今代の勇者フリッツが連れ去ったからのう。
恐らくじゃが、世界樹中でも『生命の木』と呼ばれる一木で
ナージャの回復を待っているのじゃろう」
ファウスティノは腕を組み直してから、話を続けた。
「儂から話してやれればいいのじゃが、生憎と左程詳しくなくてのう。
バッシュがファルク家の一族郎党を惨殺して、
リシェーヌは天涯孤独の身となった程度しか知らぬ。
ファルク家については、やはり元女王たるナージャに
尋ねるのが一番じゃて」
誠一は頭を上げて、お礼を伝えると、学院長室を後にした。
学院長室で一人になると、ファウスティノは部屋の天井を見上げた。
「まさかのう。否、確かに可能性はゼロではないがのう。
確かに16年前のあの時、ナージャは、『異世界人の誘い』を唱えたのう。
バッシュを使役する者が未だに現れず、
詳しく知ろうとする異世界人が現れた。
しかし、彼には、郎党全て惨殺などといったような
基地外じみた鬼畜な啓示を下せるものだろうか」
ファウスティノの瞳に映る天井がその問いに
答えることはなかった。
ファウスティノとの面会から数日後、
王都グリーンシティに激震が走った。
その激震はダンブルの謀反以上のものであった。
詳細不明ながら、商人や旅人の持ち込む噂話が
「北関落城」を王都に広げた。
誠一はモリス家の一室でサリナやシエンナから
その情報を聴いていた。
「三角砦での戦が長期戦の様相を呈していたにも関わらず、
北関からの輸送がかなり滞っていたみたい。
それはレドリアン導師の責任のようなんだけど、
糧秣不足で撤退の憂き目にあった総大将のドレルアンに
何か言ったらしく、それでいざこざに発展したみたいなの」
シエンナの話の後をサリナが受けた。
「どうもね、糧秣は足りているはずなのに撤退は如何なものかと
自分のミスを糊塗しようとして、ドレルアンの逆鱗に触れたみたい。
まあ、それで結果、ダンブルに内応というか降っちゃったみたいね」
そのままサリナが続けた。
「それと竜公国エドワード陛下がダンブルと
ヴェルトール王国に反旗を翻したわよ。
その手始めに竜人グロウとその娘アミラを中心とした竜人部隊と
竜騎士が3角砦を撤退中のヴェルトール王国の騎士団を
粉砕したようね」
アミラと言う言葉を聞いて、ヴェルがびくりとしたが、
表情が変わることはなかった。
キャロリーヌとシエンナが気づかわし気にヴェルを見た。
「アルフレート君、表向きは両陣営に布告しているが、
恐らく裏でダンブルと竜公国は繋がっているだろうな」
ロジェが嘆息した。
でなければ、それを望むことはないからのう」
誠一は素直に頷いた。
納得したようにファウスティノも頷き、話を続けた。
「誰も行方が分からぬ。今代の勇者フリッツが連れ去ったからのう。
恐らくじゃが、世界樹中でも『生命の木』と呼ばれる一木で
ナージャの回復を待っているのじゃろう」
ファウスティノは腕を組み直してから、話を続けた。
「儂から話してやれればいいのじゃが、生憎と左程詳しくなくてのう。
バッシュがファルク家の一族郎党を惨殺して、
リシェーヌは天涯孤独の身となった程度しか知らぬ。
ファルク家については、やはり元女王たるナージャに
尋ねるのが一番じゃて」
誠一は頭を上げて、お礼を伝えると、学院長室を後にした。
学院長室で一人になると、ファウスティノは部屋の天井を見上げた。
「まさかのう。否、確かに可能性はゼロではないがのう。
確かに16年前のあの時、ナージャは、『異世界人の誘い』を唱えたのう。
バッシュを使役する者が未だに現れず、
詳しく知ろうとする異世界人が現れた。
しかし、彼には、郎党全て惨殺などといったような
基地外じみた鬼畜な啓示を下せるものだろうか」
ファウスティノの瞳に映る天井がその問いに
答えることはなかった。
ファウスティノとの面会から数日後、
王都グリーンシティに激震が走った。
その激震はダンブルの謀反以上のものであった。
詳細不明ながら、商人や旅人の持ち込む噂話が
「北関落城」を王都に広げた。
誠一はモリス家の一室でサリナやシエンナから
その情報を聴いていた。
「三角砦での戦が長期戦の様相を呈していたにも関わらず、
北関からの輸送がかなり滞っていたみたい。
それはレドリアン導師の責任のようなんだけど、
糧秣不足で撤退の憂き目にあった総大将のドレルアンに
何か言ったらしく、それでいざこざに発展したみたいなの」
シエンナの話の後をサリナが受けた。
「どうもね、糧秣は足りているはずなのに撤退は如何なものかと
自分のミスを糊塗しようとして、ドレルアンの逆鱗に触れたみたい。
まあ、それで結果、ダンブルに内応というか降っちゃったみたいね」
そのままサリナが続けた。
「それと竜公国エドワード陛下がダンブルと
ヴェルトール王国に反旗を翻したわよ。
その手始めに竜人グロウとその娘アミラを中心とした竜人部隊と
竜騎士が3角砦を撤退中のヴェルトール王国の騎士団を
粉砕したようね」
アミラと言う言葉を聞いて、ヴェルがびくりとしたが、
表情が変わることはなかった。
キャロリーヌとシエンナが気づかわし気にヴェルを見た。
「アルフレート君、表向きは両陣営に布告しているが、
恐らく裏でダンブルと竜公国は繋がっているだろうな」
ロジェが嘆息した。
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