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486.反乱軍の事情
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北関を奪取したダンブルは、簡易で拵えられた玉座に
腰を下ろしていた。
あらかたの論功行賞を終え、床に臥して丸まる一人の王を
虚ろな目で眺めていた。
北関周辺の村や町を荒らしまわり、蠢動したこの男は
北関陥落の大きな一因となったことは確かであった。
しかし、皇帝の許しなく王を僭称したことは、
組織の上で許さざることであった。
宮廷魔術師シャービスや皇太子グレイガーは、強く極刑を求めた。
他の貴族たちも言葉遣いは違えども同じ主張であった。
近隣住民の強烈な反感を買っていることも今後、この地を統治する上で
無視できぬ問題であった。
「バリーおらぬか?」
ダンブルの間延びした声が広間に響いた。
「はっここに」
「バリーよ。一族に連なるジェルミラ子爵は、
三角砦の攻防戦で奮闘の末に亡くなったのだな」
ダンブルの言葉の意図が読めずにバリーは即答できずにいた。
一族の不肖の男ジェイコブ・ジェルミラが床に臥せっているのは、
バリーの眼にも映っていた。
「確かに陛下のおっしゃる通りジェイコブ卿は力戦の末に散りました。
惜しい方を亡くしました」
宮廷魔術師シャービスがダンブルの言葉に唱和した。
ここにきて、バリーも皇帝の意図を掴むことができた。
「我が一族に連なる者として、陛下のために命を散らすのは、
至極、当然のことでございます。
死して尚、陛下に忠誠を誓うでしょう」
バリーの答えにダンブルは満足そうに頷いた。
「すると目の前の男は、ジェイコブに似て居るが全くの別人となるな。
バリーそうであろう」
「御意。恐らくはジェイコブの勇戦に感動して、
その名を拝借した不届き者に違いありません」
「そうかそうか、勇将に憧れるのは男の性、仕方あるまい。
北関を攻略するにあたって、どこぞの者とも知らぬ男の活躍もあったな。
シャービスそうであろう」
「はっこの男の北関後方での破壊活動は戦線に多大な影響を与えかと」
シャービスは皇帝の意に沿ったことをつつがなく答えた。
「ならば我が国に従属することを許そう。
敢えて貴様の名は聞くまい。
これより我が陣営の英雄たる男、ジェイコブ・ジェルミラの名を継ぐがよい。
今後の更なる活躍を期待するぞ」
ダンブルが右手を軽く振ると、衛兵がジェイコブの左右の腕を掴んで立たせた。
そのまま引きずられるようにジェイコブは、広間から退出させられた。
「バリーよ。次はないぞ」
ダンブルは気だるそうに立ち上がると、
シャービスとガズンスを伴い、広間を後にした。
バリーは、ダンブルが奥に消えるまで、直角に頭を下げていた。
腰を下ろしていた。
あらかたの論功行賞を終え、床に臥して丸まる一人の王を
虚ろな目で眺めていた。
北関周辺の村や町を荒らしまわり、蠢動したこの男は
北関陥落の大きな一因となったことは確かであった。
しかし、皇帝の許しなく王を僭称したことは、
組織の上で許さざることであった。
宮廷魔術師シャービスや皇太子グレイガーは、強く極刑を求めた。
他の貴族たちも言葉遣いは違えども同じ主張であった。
近隣住民の強烈な反感を買っていることも今後、この地を統治する上で
無視できぬ問題であった。
「バリーおらぬか?」
ダンブルの間延びした声が広間に響いた。
「はっここに」
「バリーよ。一族に連なるジェルミラ子爵は、
三角砦の攻防戦で奮闘の末に亡くなったのだな」
ダンブルの言葉の意図が読めずにバリーは即答できずにいた。
一族の不肖の男ジェイコブ・ジェルミラが床に臥せっているのは、
バリーの眼にも映っていた。
「確かに陛下のおっしゃる通りジェイコブ卿は力戦の末に散りました。
惜しい方を亡くしました」
宮廷魔術師シャービスがダンブルの言葉に唱和した。
ここにきて、バリーも皇帝の意図を掴むことができた。
「我が一族に連なる者として、陛下のために命を散らすのは、
至極、当然のことでございます。
死して尚、陛下に忠誠を誓うでしょう」
バリーの答えにダンブルは満足そうに頷いた。
「すると目の前の男は、ジェイコブに似て居るが全くの別人となるな。
バリーそうであろう」
「御意。恐らくはジェイコブの勇戦に感動して、
その名を拝借した不届き者に違いありません」
「そうかそうか、勇将に憧れるのは男の性、仕方あるまい。
北関を攻略するにあたって、どこぞの者とも知らぬ男の活躍もあったな。
シャービスそうであろう」
「はっこの男の北関後方での破壊活動は戦線に多大な影響を与えかと」
シャービスは皇帝の意に沿ったことをつつがなく答えた。
「ならば我が国に従属することを許そう。
敢えて貴様の名は聞くまい。
これより我が陣営の英雄たる男、ジェイコブ・ジェルミラの名を継ぐがよい。
今後の更なる活躍を期待するぞ」
ダンブルが右手を軽く振ると、衛兵がジェイコブの左右の腕を掴んで立たせた。
そのまま引きずられるようにジェイコブは、広間から退出させられた。
「バリーよ。次はないぞ」
ダンブルは気だるそうに立ち上がると、
シャービスとガズンスを伴い、広間を後にした。
バリーは、ダンブルが奥に消えるまで、直角に頭を下げていた。
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