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506.使節団19

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「アル、止めを刺すのが無理なら。そのまま放置して!行くわよ」
シエンナに急かされると、アルは馬を急ぎ、走らせた。

「ジェイコブを探して、倒すぞ!それでこの戦は終いだ」
誠一は大声で叫んだ。その情報は直ぐにジェイコブ軍の隅々まで伝搬した。

なすすべもなく『清き兵団』に殺されている一部の
ジェイコブ軍の兵たちは、血眼になって王であるジェイコブを探した。

奴を差し出せば、自分だけは助かるという思いが
ジェイコブ軍の兵士たちに浸透した。
ジェイコブの顔を知っている兵はごく一部であった。
そのため彼の派手で特徴的な鎧が兵たちにとっての目印となった。
しかし鎧は脱ぎ捨ててあり、ジェイコブは逃亡する兵に混じって、
取り巻き達と早々に戦線を離脱したようであった。

 ジェイコブ軍を誠一たちは無事に突破することができた。
暫く進み安全が確保されると『清き兵団』のリーダーが笑った。
「アルフレートさん、上手いですね。咄嗟の機転が素晴らしい。
戦術の妙とはこういうことを言うのですかね」

「たまたま、運が良かったんでしょうね。
そもそもクラン『清き兵団』と竜公国が現れなかったら、
恐らく捕縛されるか化物の群れに殺されていたでしょうし」

ジェイコブ軍を突破した誠一は北関の方へ目を向けた。

手の施しようがない程にジェイコブ軍は瓦解してしまっていた。
追い打ちをかける様にグロウを中心とした竜公国の軍が
ジェイコブ軍に襲いかかっていた。
反攻の意思は全く考えらえずにジェイコブ軍の兵は
散り散りなり逃亡していた。
北関からの追撃は無さそうであった。
グレイガーは兵を北関に撤収した様であった。

「埋伏している兵でもこの先にいるのだろうか?」
目の前に広がる平野には兵が身を隠す場所などありそうになかった。
一体、ダンブルは使節団に対して何をしたかったのだろうか。
いまいち誠一には意図が掴めなかった。

「それは無さそうだけど。
実際のところ、ダンブルの軍には全くの損耗がなかったね。
ゾンビとスケルトンの群れ、それにジェイコブ軍。
もしかして、その辺りを処分したかったのかしら」
シエンナもダンブルの差配の意図が掴みかねていた。

「それにしてはちょっと計画が杜撰かしらね。
そもそも『清き兵団』と竜公国が動かなければ、
この結果にならなかったわよ」
キャロリーヌもダンブルが何をしたかったのか掴みかねていた。

誠一たちは後方で竜公国の軍に蹴散らされているジェイコブ軍を眺めていた。

『誠一さん、ダンブルの目的とするところは、
停戦の使者に会わなかったという結果を得ることですよ』

突然の千晴の声に誠一は驚いた。
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