転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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508.使節団21

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『千晴さん、物凄く軍略や政略を考えるのが好きなんですね』
誠一はそれとなく褒めてみた。

『えっ、いや特にそういうの興味ないし。
逆にそういう話をしていると眠くなりません?』
誠一は今の言葉で全てを察した。
おそらく強力なブレーンがいるのだろう。
そして、それは『清き兵団』に啓示を与える人物であろうと推測した。

『もしかして、千晴さん。
いままでの話は清き兵団のプレーヤーの意見ですか?』
誠一が思い切って聞くと、千晴のバツの悪そうな返答がきた。
『いやまあ、そうです。
白状すると、彼の説明をそのまま、貼り付けました』
ふむふむ、男ね。誠一は脳裏に留めた。
過去に北関で助言をしてきたあの失礼な人物であろうと思った。
清き兵団クラスの人数を動員できると言うことは、
それなりのヘビーユーザであることは容易に想像できた。
重課金者、廃課金者であれば、もしかしてエリクサーを
持っているかもしれない。
誠一は上手く気に入られて、エリクサーを下賜されないだろうかと
淡い期待を抱いてしまった。
『そうですか、千晴さんのお知り合いですか。
お手数ですが、お会いした時にお礼をお伝えください。
本当に助かりました』

『ええ、いいですよ。彼、会社の上司だし、会ったら伝えておきます。
彼もどうやら誠一さんのことを気に入っているようで、
何かあればすぐにクランから人を派遣すると言っていました』

 ほいほい個人情報を流す千晴を誠一は頭の軽い女と
心の中では嘲っていた。
上司の方は千晴と違って一筋縄ではいかないような気がした。
そもそもなぜ、その上司と言う男は自分に気をかけるだろうか。
千晴の歓心を得るため。いや違う。
千晴という女はそこまでヴェルトール王国戦記に入れ上げていない。
となるとその上司は、自分の持つ何かしらの情報を
得るために近づいているのだろう。
多分、深淵の回廊、神隠しの山、そしてリシェーヌの
行方あたりの情報だろうか。
考え事に耽ってしまい、少し間が開いてしまったが、
誠一は改めて礼を伝えた。その後、千晴はログアウトしたようだった。
 
自分でも気づいていない価値があるのだろか、それをその男は知っている。
などと先ほどの会話を反芻しながら考えていたら、誠一は眠りに落ちていた。

 誠一たちの王都までの旅路は順調そのものであった。
逃げ延びた使節団の団員を接収しながら、王都へ無事に到着した。
『清き兵団』は途中で別れ、ソルテールの方面に向かった。

「アルフレートさん。我々『清き兵団』以外にも同じ神を
信奉するクランは幾つかあります。
我々のクランは中堅どころになります。
一流と言われるクランを我が神は幾つか抱えています。
彼等もあなたの力になるでしょう。
我々もまたあなたにお会いできれば、お力になります」
『清き兵団』のリーダーは最後に口を濁した。

「ありがとうございました。また、お会いしましょう」
リーダーを始めとした兵団のメンバーはそれには応えずに
次の目的地であるソルテールに向かってゆっくりと動き出した。

怪訝な表情で見送る誠一にリーダーが言葉を残した。
「我が神にとって我々は左程、重要ではないのです。
低ランクで形成されたクランなので死しても補充が容易なのです。
まれにその才を示して、上位のクランに引き抜かれますが、
基本、捨て駒です。
私も彼等も再び会うことを願ってもアルフレートさんに
お会いすることはないでしょう。
あなたの活躍を心から願っています。では」
リーダーは馬を走らすと、二度と振り返ることなく走り去っていった。

 王都に到着した誠一は、エスターライヒ家の屋敷へ向かわずに
エンゲルス家に向かった。
アーロンと顔を合わせることを避けるためだった。
シエンナは、最初ぶー垂れていたが、わがままは
既に使節団随行の件で言ったため、最終的に大人しく引き下がった。
 ヴェルの件、使節団の件、千晴の協力者の件、様々なことが
気になる誠一だったが、久々のベッドでの睡眠の魅力に
抗えずに潜り込むとすぐ眠りに落ちた。
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