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510.閑話 とあるアパートの情景2

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 千晴は珈琲を口に含んだ。
「あちっ、にがっ」
慌てて、カップから唇を離した。

街中にも関わらず、千晴は舌を出して、
息を大きく吸い吐き出して舌へ空気を必死に当てた。
急ぎ近くの自動販売機で水のボトルを買うと口に含んだ。
暫く飲み込まずに口の中に含み、舌を冷やした。

「なんなのよ。まったく。熱過ぎ」
少し離れたところから恨めしそうにお洒落なカフェを睨みつけた。
一向に冷めそうにない珈琲カップへ水を補給すると
何とか飲めそうな熱さになった。
水のボトルをバックにしまい、千晴は珈琲を再び呑み始めるが、
どうにも苦みが強く、千晴の顔は渋くなってしまった。

「ふううううぅ、砂糖とクリーム貰っとけば良かった。
慣れないことはすべきじゃないな。
コンビニの珈琲にしとくべきだった」
ちびちびと飲みながら、トボトボと歩く千晴であった。

しばらくちんたら歩くと千晴は目的地付近に到着した。
学生向けのマンションやアパートが立ち並ぶ中に
目的のアパートもあった。
それとなく千晴はアパートの周りを一周した。
カーテンがきっちりと閉められてなく、
部屋の中が視界に入る部屋が幾つかあった。
目的の部屋はカーテンがきっちりと閉められており、
中を観察することはできなかった。

千晴は左右の部屋に目を向けた。

右側の部屋では若い半裸の男女が抱き合っている姿が
千晴の目に入った。
くそったれ、そんなことを朝からするならちゃんとカーテンを
閉めとけと悪態をつく千晴だった。
気を取り直して左側の部屋に目を向けると若い男性と
ばっちり目が合ってしまった。窓越しに男はにやりとした。
どうしようこちらから視線を切るべきか迷った挙句、
冷えた珈琲を口にして男から視線を外した。

男の視線を千晴は感じていた。
ジロジロと見られていることが分かった。
暫くすると男の視線を感じなくなったが、
カンカンと階段を駆け下りる音が千晴の耳に聞えた。

やばっ、千晴は慌ててこの場から離れようと動き出した。
「ねえ、お姉さん。俺の部屋、覗いてたでしょ」
にやにやとしながら、チャラい男が千晴の前に立った。
男を無視して千晴は立ち去ろうと男の横を素通りしようとした。

「何それ、俺、傷ついちゃうな。なあ、待てよ。この覗き野郎」
千晴は男に肩を掴まれて、立ち止まらざるを得なかった。

「ちょっと、止めてください」

「へへへっ。それよりちょっと話そうよ。
なあ、あそこの部屋も見たんだろう」
チャラ男は、若い半裸の男女がまぐわっている部屋を指差した。

千晴はチャラ男を一睨みした。意外なことにチャラ男は怯んた。

「なんか今、写真でも撮られなかかった?」
慌てて千晴の肩から手を離して、周囲をきょろきょろと
探る様にチャラ男は見渡した。

「えっ気のせいだと思うけど」
千晴も周囲を見渡すが、それらしき人物を見つける事はできなかった。
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