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511.閑話 とあるアパートの情景3

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「ちっなんだかな。
おまえも部屋を覗いていたんだから、余計なこと言うなよ」
そう言って、チャラ男は興が削がれたような表情で
部屋に戻ろうとした。

「ちょっと、待ちなさいよ」
千晴が逆にチャラ男の肩を掴んだ。

チャラ男は軽く千晴の腕を振り払った。
しかし、千晴はその場に派手に転んでしまった。

「えっ」
チャラ男の戸惑いに拍車をかけるべく、千晴は叫んだ。

「きゃあ」

「えっいや、そんなに強くした覚えは」

「痛い。痛い。ううっ痛い」
千晴は痛い振りをして中々、立ち上がろうとしなかった。
どこか遠くから視線を千晴は感じた。
今度は千晴にもチャラ男の言っていたことが分かった。
音声までは取れないだろうと思い、千晴はこの機を最大限に利用した。

「ねえ、君。分かるわよね。誰だか知らないけど写真撮られているわ。
どう見ても暴力をあなたからふるわれたしか思えないわよね」
チャラ男は青ざめていた。そして、頷くのみだった。

「ちょっと手を貸しなさい。立ち上がるから。
少し聞きたい事があるだけで素直に教えてくれれば、
何かあってもあなたに不利な証言はしないから」
チャラ男は言われるがまま手を貸して、千晴を立ち上がらせた。
二人はそのまま駅の方へ向かい、
全国チェーン展開されている珈琲ショップに入った。

千晴はチャラ男に適当に何か頼むように促すと、
チャラ男はおずおずと注文をした。
びくびくしながらも一番安いブレンドでなく、
サンドイッチ、ドーナツそして限定フラッペを
チャラ男は受け取っていた。
千晴は、Mサイズのホット珈琲を注文した。
ちぐはぐなペアの様子に店員や客の視線を集めたが、
あまり気にせずに席についた。

「その聞きたいことって何ですか?」

千晴は珈琲を一口飲み、じろりとチャラ男を睨みつけた。
サンドイッチを頬張る口の動きが止まった。
イニチアチブは完全に我にありと千晴は判断して、極上の笑みを浮かべた。

「ひいいいっもぐもぐ、ひいっ」

チャラ男は食べながら小さく悲鳴を上げた。
口の中を見せられた千晴は、不快になった。
「ちょっと、落ち着きなさいって。
少しお隣さんのことを知りたいだけだから」
そう言って千晴は部屋番号を伝えた。

「はあ、そんなことですか。
と言ってもそこの部屋の住人については良く知らないです。
多分、さっきセックスしていた方の部屋の奴も
知らないと思います」
そこからチャラ男は饒舌に語り出した。
どうにも気味悪く感じていたようで、
様々なについて悪態をつきながら話した。
 何かが住んでいたことは確かなようであった。
しかし、隣人の姿を見たことは一度もないようだった。
一度、怖いもの見たさに呼び鈴を鳴らしたことがあったが、
無反応であった。
いつの頃から隣人がそうなったか記憶があいまいで
気味悪かったため、出来る限り関わらないように
しているとのことだった。
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