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540.大会戦12

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「ひいいいっ、殺される。王の威厳、奴らを殺せ」

一際、ジェイコブが大きな悲鳴をあげると、
取り巻き達はその場に縫い付けられたように動けなくなった。

取り巻き達に目もくれず、狂化されて高揚された気分すら振り払い、
強化された能力の全てをもってこの場から逃げ出した。

呆気に取られた誠一たちは一瞬、間を作ってしまった。

「殺すしかねえ」

「こいつらのせいで」

「数人であたれば何とかなるはずだ」

やけっぱちな声を上げて取り巻き達は誠一たちに襲いかかった。

「アルフレート君、ぼやっとするな。
奴をジェイコブを追えー。路は作る。パワーシフト」
数人の敵をロジェが弾き飛ばした。
その後に続く敵をキャロリーヌが射殺した。

「アル、行くぞ!アミラ、ここで兄貴たちと雑魚を叩きのめせ」
途端に不満顔になるアミラであったが、黙って頷いた。

「アル、あの阿保との関わり合いにもいい加減にしたいわ。
終わらせて!地に臥し地に囚われ地に呑まれろ、アースバインド」
シエンナが群がる取り巻き達を地に転ばせた。

「おおっし!いくぞアル。
荒ぶる炎よ、全てを燃やし尽くし、世界を再生しろぉー。
からのぉ合体技だ!」

「行くぞ、先行を頼むヴェル。
鋭き風よ、全てを斬り尽くし、その先に道を示せ、エアチャージ」

ヴェルと誠一が敵軍を貫通して、逃げるジェイコブを追った。

「サリナっ!あの二人を追え」
ロジェが素早く指示を出した。

「はいはいー」
適当に返事を返すと素早くサリナは行動に移った。

 ジェイコブの逃亡によりダンブル皇帝軍の最右翼は
完全に崩壊した。
逆にヴェルトール王国の最左翼を担う傭兵団は最も突出して、
本陣との間に大きな間隙を作った。

ダンブル皇帝軍の本陣にて、ダンブルがにやりと笑った。
「シャービスよ、釣れたな。かなり早いが頃合いだな」

「ははっ、中央に厚みを持たせつつ、精強たる皇太子殿下の軍にて
右翼に出来た間隙を突かせましょう」
シャービスが素早く応じた。
「フハハハハハ。良い許す。グレイガーに伝えよ。
賊軍の本陣を突けと。狙うは、女王バリーシャの首だ。
その他はいらぬ」

ヴェルトール王国の本陣にて、バリーシャの右眉がピクリと動いた。
「最左翼の傭兵団がジェイコブを切り崩したな」

「ははっ、中央、右翼を抜かれぬようにしつつ、
左翼より反乱軍を突きましょう」
待機する将の1人が応じた。
「フハハハハハ。その通りだな。
絶好の好機を逃さずに左翼より反乱軍の本陣を突くぞ。
狙うは、反乱軍首魁ダンブルの首だ。その他は必要なし」

両軍のトップが時を同じくして、高笑いすると
両軍の最精鋭が敵本陣を蹂躙すべく行動に移った。

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