転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

584.狩猟祭9

「ヴェルの言う通りだ。俺は俺の神に敬意を表する。
そしてどうしようもない啓示を下す神へ礼節を以て接することはない」

「貴様、それは我が女神様への侮辱と受け取った。許せぬ暴言。
ここへ神託は下った『アルフレート・フォン・エスターライヒを捕らえ、
死ぬより悲惨な現世の地獄に落とせ』」

互いに無言であった。

既に美女5人は立ち上がり、
神具という名の禍々しい武器を手にしていた。

緊張感漂う中に剣豪がゆっくりとした足取りで
両者の間に入った。
「ふむ、つまらぬ幕引きであった。
毎度毎度、面白き噺が見られるという訳では
ないということでござるな。
それとも敵役が役者不足であったか。
ごくありきたりでつまらぬ噺でござった。
故にアルフレート様、さっさとこの場を去るでござる」
いつの間にか剣豪の右手には大太刀が握られていた。
莉々の名を冠する面々に極度の緊張が走ったことが
目に見えて分かった。
「ふむ、啓示に抗うつもりはなさそうでござるな。
まあ、それも良し。同じS級の冒険者、少しは楽しませて貰おう」

剣豪が下品な笑みを浮かべて、目の前の美女たちを眺めた。

一方、剣豪に下品な笑みを向けられた莉々たちは動揺していた。

「おい、莉々。どうすんだよ？」
莉々火が判断を促した。莉々は重々しく口を開いた。
「どうするも何もやるしかないだろう。それしか道はない。
それとも女神様に慈悲を請うか」
莉々は話しながらもかぶりを振った。
女神の慈悲なくここから撤退すれば、神罰が下ることは明白だった。
莉々の名を取り上げられ、貴族、教団や商会の有力者の協力を
得るための慰みモノにされるだけだった。
クランには自分たちの代用品が幾らでも準備されていることを
莉々は承知していた。
先代たちの惨状を知っている莉々には到底、
この場を逃げ出す選択肢などなかった。

莉々は空を見上げた。一点の曇りなき青空から女神は
自分たちを覗いているのだろうと思った。
唾を吐きつけたくなる気持ちを抑えて、仲間に告げた。
「剣豪さえ倒せば、どうとでもなる。
何、同じS級の冒険者だろう、左程の力の違いはない。
他の連中は、先ほど剣を交えて分かっただろう。
厄介なのはキャロリーヌとアルフレートだけだ。
槍兵は得物なく竜人は幼い。
戦士と盗賊は言うに及ばず、魔術師は抑えられる。いくぞ」

莉々の名を冠する騎士、戦士、そして暗殺者が
無言のまま一斉に剣豪へ襲いかかった。
剣豪の動きを抑制するように矢が数本、剣豪の周囲に飛来した。
剣豪の脳天に向かって天空より雷が落ちた。