転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

592.狩猟祭17

「アルフレート、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
難度も繰り返されるサリナの謝罪の言葉。

「いやあれはもう気にしないで。
狡猾な神々がこの世界には溢れている」
誠一は荷車から青空を見上げて、
視界に決して映ることのないプレーヤーを
厳しい表情で睨みつけた。

『ひっごめんなさい。役に立てなくて』
誠一の心に千晴の言葉が浮かんできた。
最近、千晴とは良好な関係を築けている。
だが性根の底に隠れている闇のある
ヒステリックな女性プレーヤーであることを
今回の件が誠一に思い出させた。

こちらの思いを悟られてはならない。
誠一は青空に向かって何とか笑いかけた。
『いえ、千晴さんには十分に助けられていますから、
感謝しかないですよ。
僕は理不尽な命令を下すプレーヤーに腹を立てているんです』

『ほっそうですか。
知人からでなく私から強く彼女に注意します』

それは逆効果にならないだろうかと
誠一は一抹の不安を感じたが、
千晴のやる気を削ぐことは得策でないと判断した。
『千晴さんの負荷にならない程度にお願いします。
逆上したその女性に襲われたら、こっちと違って
冗談じゃ済まないですから』

『ありがとうございます。
そうだ！落ち着いたら改めて連絡しますね。
こちらの調査状況もお伝えしたいので』
心に浮かび上がる千晴の言葉に
誠一は心なしか千晴が嬉しそうに感じられた。

目の前では相変わらずサリナが
ごめんなさいごめんなさいと連呼していた。
気持ちは分からないでもないが、
流石に誠一は鬱陶しくなってきた。

「サリナ、気にしていないから。
そもそも謝罪は必要ないから」

「アルフレート私には無理だ。
あの騎士のように啓示に抗うなんて無理だ。
もしこの首飾りのアミュレットがなければ、
簡単に負けてしまう。
どんな酷い啓示でも従ってしまいそうで恐ろしい」

誠一はまだこちらの世界をサリナの瞳を通して
覗いているであろうサリナのプレーヤーを
一睨してから、サリナに微笑んだ。
「大丈夫さ。そうなった時は、ここにいるみんなで助けるからさ。
まっそれよりもそのアミュレットを学院長から買い取らないと。
そっちの費用の方が心配だよ」

「アルっ！それって、相当、高額なんでしょ。
遺跡や迷宮を攻略しまくるしかないわね。
サリナ、やるわよ」
キャロリーヌはおどけた様に笑った。誠一もおどけた様に笑った。
つられたようにサリナも笑った。

笑いながらも誠一は胸の内で啓示について考えを
巡らせていた。啓示は完全完璧なものではない。
啓示を構成するシステムが命令を遂行されたと
認識できればいい筈であった。
抗うのでなく上手くあしらうことができれば
何となると考えた。

「アル、ぼんやりとしてないで早く話をして」
誠一はシエンナの声で現実に引き戻された。
「あっ、ごめん」
後に剣豪とこのことについて話してみるのも
いいかもしれないと思いながら、
誠一は荷車より下りて、皆に集合をかけた。