BL短編集

田舎

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執着幼馴染×妊娠して逃げたΩ(オメガバ設定)

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(オメガバ設定)
執着幼馴染β?×妊娠して逃げたΩ

前半の感覚的には攻め→←←Ωくん

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「に、妊娠って…どうゆうことなの!?何があったか教えてちょうだい!!」


高校三年生の冬。
俺の突然の告白に母さんは酷く取り乱し、父さんは一体どこの男だと怒り狂った。

――――この子に父親なんてのは存在しない。だって俺は路上でいきなり発情して、その場にいただけの知らないαに襲われてしまったんだ。
幸い頸は噛まれなかったけど男に襲われただなんて…、怖くて言い出せなかった。

「発情期になっても来なくておかしいから…こっそり産婦人科に行って調べたんだ。したら、いるって」

ごめんなさい…。
泣き崩れる母さんを見て酷い罪悪感に駆られたが、俺はゆっくり腹をさすって……何度も何度も謝った。
でも、俺の心は決まっていた。

『馬鹿なことを…』

何度も言われて説得をされた。だけど俺の決意は揺らぐ事なく、【産みたい。産めないなら俺は家を出る.】を貫いた。

子供に罪はない…と両親は最終的に折れてくれたけど、こんな治安の悪いところには住めないと家族で引越しをすることになった。俺だって文句はない、それにあと数ヶ月後には卒業式だ。

意外にも腹ん中に子供がいると思えば、何もないフリをするのは平気だった。
だって他ならぬ俺が決めた事だ。

妊娠を隠したまま、卒業式を終えると共に友達ら全員と連絡を断った。






それから数年後.


【たまには家に帰ってきなさい】。

はは。先週も帰ったばっかじゃん、と母さんからのLIMEに俺は失笑した。

「ママ?どうかしたの?」
「んー?ばぁばが会いたいってさ」
「ばぁば!!」

父親のいない。愛娘との二人だけど平凡で幸せな毎日だ。
LIMEのアプリを閉じようとした時、『放課後、うちにくるよな?』と未だに残るメッセージにじわっと悲しい、というより心残りが滲み出そうになった。

いや、ダメだ。
小さく首を振って、そばにある小さな手を繋いで家を出た。



「ちょおちょちょおちょ、なのはにと、ま、れ♪」
「おうた上手になったね」
「うん!一番好きな歌!」

ニッコリと微笑む娘を愛おしく思う。パッとしない俺の遺伝子はどこへやら?まだ5歳なのに目鼻立ちもしっかりしてるし、愛嬌がある明るい性格だ。
将来はアイドルか女優さんになれるかもしれない。

(ほんと父親の血が、濃いんだろうな…)

だから両親に勘付かれる前に、この子が保育園に上がる前に俺は家を出るしかなかった。


―――――見知らぬαに襲われたなんてのは、嘘だ。


この子の父親は、隣の家に住んでいたβの幼馴染で、俺の初恋相手。
勉強が大嫌いの野球バカなのに陽キャでクラスの人気者だった。

あれはいつもの放課後。アイツの家で俺達二人は流行ってたゲーム”デビハン”をしながら過ごしていたんだ。

「今日はどの討伐クエストからやる?」
「んーイシュタルかな、もっと黄金属性あげてマモンに挑戦してみたい」
「OK。じゃ回復役は任せた」

もうすぐこの穏やかな日々も過ごせなくなる。
俺だけがこの馬鹿が県外の、それも某名門大学の内定を貰っていたことを教えてもらっていた。
さびしいな…とずっと思ってはいた。俺はΩだから大学受験なんて早々に諦めて、県内の製菓専門学校に通うのが決まっていたし、そもそもβとΩだ。


(いつまでも一緒にはいられない…)


そんなのイヤだよ、俺はお前と一緒にいたいだけなのに……。
受験疲れか、それとも初恋に敗れると感じた心因的ストレスか―――― 俺は、その場で発情してしまった。



「おねがいっ、っ…、抱けよ、そっちのほうがっ、すっきりするから…」

Ωのフェロモンに反応できないアイツは戸惑って救急車を呼ぼうとしていたのに、その腕を捕まえて引き寄せたのは俺だ。



アイツに抱かれたのも、妊娠が分かった時も… 俺は嬉しくてしょうがなかった。

けど俺達は学生で別に付き合ってたわけじゃない。それに名門大学に受かっているアイツには、これから華々しい学生生活が待ってんだ。
人生を壊したくないと、俺は嘘を突き通すしかなかった。
愛する娘から父親という存在を奪うことになったとしても―――――……。






 * * *




「今日も宜しくお願いします」

娘を保育園に送り届けたあとは出勤だ。
番いのいない発情期はつらいけど、娘に発情期を見られないようキツめの抑制剤は必須だった。
さらに番いがいないクセに子供がいるΩに対して、世間は勝手な妄想をして中には心無い言葉を浴びせてくる。

―――平気だ、そんなことにいちいち凹んじゃいられない。
命よりも大事な娘がいるんだ。悪意も受け流して気丈に振る舞い仕事をこなす。


そして今回派遣されたビルの清掃で、運命的な再会を果たした。



「お前、……どうして」

―――――あの幼馴染だった。
あぁ、このオフィスで働いてんのか…。高そうなスーツなんか着ちゃってさ。
けど記憶よりずっと彼の声は低くなっていたし、逞しくなった気がする。


「それはこっちの台詞だ。連絡も全部無視しやがって」
「…、急にごめん。俺にも事情があったんだよ。……あ、お前今から打ち合わせ?頑張ってな、それじゃあ、っ!?」

ガラッと、
通り過ぎようとしたのは無駄だった。俺はすぐそばにあった、誰もいない会議室に連れ込まれた。


「また逃げる気か?」
「……逃げてねぇし、離せよ。俺も仕事があるんだよ」
「話したい事がある」
「俺にはないよ、第一仕事中だぞ」

ずっと、出来るならお前の声を聞いていたいけどさ…
そんな気持ちに強く首を振った。

「お前の働いてる清掃会社、それがこのビルの子会社だって知ってた?」
「へ、へぇそうなんだ…。悪いけど入社したばっかりで知らなかったや」
「じゃあ、この会社の相談役が俺のじぃちゃんで、社長が俺の親父ってのは?」
「っらねぇよ!なに?脅しか…?なにか黙ってて欲しい事でもあった?」

なにか確執でもあったか??
Ωを正社員採用してくれる会社や企業は少ない。実際クビにされると困るけどコイツがそんなことをするはずないと、心のどこかでは信じていた。

「そんなことしない。でも、俺の子供がいるよな?」
「――――っ!?」
「ダメだろ鍵垢にしただけじゃ。フォロワーが誰かも知らねぇのにさ?SNSやるときは写真の風景とかも気を付けないと」

ドクドクと、鼓動がさらに速くなった。
子育ての情報が欲しくてはじめたSNSだった。何気なく子供の写真を載せるとアドバイスやコメントももらえたから………少しだけやっていた。
は?なに、なんでそれを知ってんだ…。

「探すのめっちゃ苦労したんだからな?こうしてまた会えて嬉しいよ」
「……、さがす…?」
「産んだのはお前かもしれないけどさ、俺だって文句くらい言える立場だろ?だってこっちは、ヤり逃げされてんだぞ?」
「ち、違う…あの子は、お前の子じゃない」
「なら証明しろよ?DNA鑑定すりゃ一発で分かることだよな?後で金に困ったΩから、お前にも養育する義務があるって訴えらたαなんて、」


「――――ッッ、俺は、そんなことしないっ!!!」

怒りの感情のままキッと睨んだ。
ただ俺達が若かった、そして卒業後のお互いの道も決まってた。
――――それだけのことだ。



「なら証明して」


「しょ、証明……?」
「そうだなぁ次のお前の発情期、俺と一緒に過ごしてくれたらもう言い寄ったりしない」
「は?どういうことだよ」
「心配なんだよ。勿論俺は指一本触れないし、βだからお前には反応しない。αも、俺を頼らないでちゃんと一人で過ごせてるって分からせてくれたら、俺も安心できるからさ」
「それなら、……分かった」

こうして俺はブロックを解除して、連絡が取り合えるようにした。

「そういえば、お前のアイコン相変わらずササミン選手なんだよな。今も野球好きなの?」
「あぁ、そりゃ…カッコいいって言ったから」
「……?」
「覚えてない?めっちゃカッコよくて漢気がある、硬派な感じがいいって言ったの」


――――???そんなこと言っただろうか、いつの話だよ。
確かに一度プロ野球の試合を見たことがあるけど、小3くらいの記憶だぞ??


「いいよ。俺が、どれだけお前を想ってたかとか知らなくて。そのうち全部分からせてやるから」



覚悟しとけよ、と雄の…、 

まるでΩを狙う、αのような目の色に カッと耳の奥から全身が熱くなりそうだった。






―――――――――――――――



あとがき


こうして仕事というより親権を盾に取られたΩくんは、大好きな幼馴染だったβ→受けが逃げたあと後天性αと判明した、攻めからドロドロに執着されて激重な愛情をそそがれまくるよ。

ちなみに大学が別々になってもΩくんが離れないよう、ちょーっと細工をしたのは…ね??

Ωくんに逃げられたのは予想外だったけど、元々両想いなので一応ハッピーエンドです。




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