Domは訳ありSubを甘やかしたい

田舎

文字の大きさ
27 / 27

喧嘩(後半)

しおりを挟む
…………どうも、恋人を泣かせちまったクソ野郎です、はい。
真っ暗な公園でひとり、ブランコに座ったままボーっとして既に一時間になる。



(はぁ―――――――――――どうしよう、俺の琥太郎めっちゃいい子)

頭を冷やそうと外に出たはずが、かれこれずっとこの状態で悶絶とグダグダの繰り返しだ。
だって答えなんてとっくに出ている。生活費を琥太郎が気にしていると感じてたなのに一度だって話し合わなかった俺が悪い。

(俺も臆病野郎なんだよなぁ、結局)

ふーっと息を吐き真っ暗な空を仰いで途方に暮れてしまう。
昔っから金銭が絡む話ってのはデリケートで人間が最も敏感になる話題だ。それで俺の場合は所謂ホス狂に走ってしまった恋人と揉めに揉めてた挙句、超一方的にフラれた過去がある。
第二性の問題以外で頭を抱えたのはアレが初めてだ。
理不尽な別れ方で相手に未練もないが、そっからはトラブルになりかねない話題として自然と避けてしまうんだ。

「………や、ちゃんと話し合うつもりだっただろ?」

ボヤく言い訳です、見苦しい事に。

だけど琥太郎一人くらい別にどうにか出来る。
贅沢を沢山させてやるって約束は出来ないが、これまで通りの生活なら問題ない。それに琥太郎が働くにあたって家の近くのカフェで昼間のアルバイトを決めてくれたのは俺の要求我儘に従ってくれたからだ。なら俺が多めにサポートするのは普通の事だろ?
さらにお互いの経済事情を上げると琥太郎は長い期間クソDomに騙されてたせいで貯金もほぼゼロ状態だ(手荷物を漁ったら通帳があった)。
その大事な給料は俺にじゃなくて自分の貯金に回してくれ―――なんてことを言ってみろ?
【俺がいつ楽させてくれって頼んだよ!?アンタがその気ならオレは出てく!!】ってブチ切れたに違いない。俺を押し退けて出て行こうとしたはずだ。


「チッ、今のうちにサブネットで丈夫な鎖を買っとくか」
「なに馬鹿言ってんの」

――――――!?
ビクッと肩が大きく震えた、え…は??なんで此処に琥太郎がいるんだ!?

「こ、琥太郎!?」
「スマホの電源切るなよ…」
「え?あ…、悪い。電池切れだった」
「……」
「琥太郎さん…?」

腰を上げて黙る琥太郎に近づく足を…あと数歩のところで止めた。
俺はまだ、琥太郎を納得させるだけの言葉がまとまってない。

「まだ怒ってるんじゃないのかって…心配した」
「?怒って?それは君の方では??」
「………帰ろうよ、オレだって怒ってない」

ぎゅっと袖を握られた瞬間、ぶわっと毛が逆立った。

なんだこのシチュエーション?普通は迎えに来るのは彼氏側、いや琥太郎も彼氏なんだが…俺がそっち側ってアリか??
けどさ帰ろうって手を引かれたんだ、答えは一つしかない。


「うん、帰ろう。一緒に」










こうして無事に家に帰ったはずが、俺はパートナーから拷問を受けていた。

「いらないって言葉にはまだムカている。勝利の本心でもオレは頑張ったのに、ちゃんと認めて受け取ってもらいたかった」
「ごめ、すみませんでした…その件につきましてはきちんと琥太郎さんに納得してもらえる金額を算出すると約束します」
「それとオレを呼び止めた時にglare出してた……ちょっとだけど」
「マジ!?え、本当にすみません!アレは使おうと思って使ったんじゃなくって完全無意識です、この通り心から反省しております……なので、そろそろ」
「まだダメ」

なんでだよ!?すぐ下に俺の膝枕で繕いで優雅にテレビを観ている琥太郎がいるのに…!?
今すぐ触りたい触りたい触りたい触りたいー…のに繰り出されるNGは拷問だ!!

「…っ、琥太郎」

行き場のない手がぷるぷる震える。せめて首筋の匂い嗅ぎたい思いっきりスーハ―したい、触れていいのが膝だけとか今すぐ俺の手と膝の位置を交換させろ。でないと俺の理性が死ぬ。

「頼むから信じてくれ!確かに俺は勝手に君の生活をサポートしようとしてたけどこんなのは君が初めてだ。だから」
「熊狩の、オレを甘やかそうとするときだけ饒舌になる所が一番ズルい」
(ぐっ!?)

「……けど反省してくれたならいいよ」
「へ!?」
「オレだって悪いところ沢山あるから。言い合って直せるところは直そうよ…オレも喧嘩は得意じゃない」

恋人と喧嘩したことがないのはお互いサマってことだ。
あぁそうだ。怒ってないって、琥太郎は俺に言ってた。

「琥太郎、触るけどいい?」
「あ、待って。この特集観たい」


「ダメ。俺はマテってコマンド、ほんと無理」





end






あとがき

この後、たっぷり琥太郎は搾り取られてしまい翌日のバイトは遅刻ギリギリになってしまいます。
バイトある前日は絶対しない!!と琥太郎に叱られた熊狩は「やっぱ琥太郎は俺が養うか?」と真剣に考えてたり、いなかったり…

ここまでありがとうございました!
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

鈴
2024.02.17

最新の番外編、とても可愛いです…🤦‍♀️
溺愛体質のdomが大好きで、熊狩は理想的なdomなので早く琥太郎を幸せにしてあげてー💦とオロオロしながら読んでいました。
番外編サブドロップに入った可愛い琥太郎を見ることができ、とても嬉しかったです。
最新の番外編のふたりは可愛くて可愛くてこちらまで幸せをもらいました✨
最後のやり取りまで理想のカップルで私にとってすっかり愛しいふたりになってくれました。
いつの日になってもかまいません、またこのふたりの番外編が更新されることを心より願っております(ㅅ´ ˘ `)✨

2024.02.17 田舎

鈴様
この度は星の数ほどたくさんある作品の中より選んでくださりありがとうございます!
また番外編まで読んでくださり、とても嬉しいです…!🙌
本編は熊狩→→→←琥太郎くらいの割合でおさえつつ書いてましたが、お互い一目惚れのような関係でしたし、恋人兼パートナーとなった今ではお互いの気持ちに差はありません😊(熊狩の重さはあるけども)
初挑戦のドムサブで悩むところも多かったのですが、こうして感想をもらえたことが一番の実りだったと思います🙌✨
書いててよかった〜わーい!!!って
書きたいお話もまだありますので、また形にできたとに目にしてもらえると嬉しいです☺️
ありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ

いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。 いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。