巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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2章 脇役と不死の王龍

脇役、語らう

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オズさんはよっぽど乗り物酔い――いや、飛竜酔い?がひどかったらしく、何度も吐いていた。
今は落ち着いているみたいだけど、心配だ。

「大丈夫ですか? ちょっとくらい食べられそう?」

水と回復薬も持ってきたよって伝えると、はぁー……と嫌味な、深いため息。
よかった。少しでも調子が戻ったみたいで。

「唐揚げの妖精様はどうした?連れていないのか?」
「ユリアは、19時を過ぎたら屋外への外出は禁止です。それに、テントに戻ってきたオズさんと俺がすれ違いになったら困るので」
「……洗脳した飛竜もいるだろう」
「あっ、ヒューバートにはユリアを守ってほしいとお願いしましたよ」
「ッ、頭が痛くなるな。貴様」

飛竜に精霊を守らせて、一番の雑魚が夜中に動き回るだの……オズさんは小声でブツブツ呟く。
その小言を聞きながら、俺の顔は少し引き攣っていた。

(聞き、間違いじゃないよな……?)

今さっき、「洗脳」という言葉を聞いた。
俺を出会い頭から“魔の者”と呼んで、差別めいた嫌悪を抱いているマクミランの魔法使いオズグさん。
もしかして、俺がシュヴァル国内で魔法やアイテムを使って人を操っていると考えている……のか。

(はは……めちゃくちゃ極悪人扱いされてんだ)

ここまで一緒に来たのに、俺は――――
一つも信用されてない。
普通にショックだし、傷ついてしまった。

「っ、……オズグさん、ひとりで逃げても構いませんよ」
「………なんだと?」
「俺とユリアは徒歩で西の砦を目指します。ヒューバートには、あなたを乗せて国境付近まで行くようお願いします」

――――俺は大丈夫だ。
だけど、それじゃダメだって俺なりに考えてはいた。

【飛竜は、乗り手がいなくなれば帰巣本能で必ず竜舎に戻る】
竜舎の人から、その説明を受けていた。
とくに俺が選んだヒューバートは、成竜並みに賢いって。
だからきっと、行き先の変更も受け入れてくれる。

「ただし、条件付きです。
あなたはゼアロンさんに会ってはいけません。おとなしくマクミランに帰ってください」

オズグ=リュスターは、シュヴァル国内の犯罪者だ。
今日協力してくれたゴルディさんは、俺たちに会ったことはなかったことにすると約束してくれた。
だから、俺とユリアを連れていないオズグさんがゼアロンさんに会えば――騎士から見れば「人質を連れていない指名手配犯」だ。
戦いはオズさんの本望かもしれないけどさ……きっとゼアロンさんには手加減してもらえない。

「貴様は、俺が奴に劣ると思っているのか」
「違います。俺は、まだ生きてるのに敵討ちなんてされちゃ困るって話です」
「………。最初から陸路でもどんな道でも、唐揚げの妖精様に自分を守らせれば良かったはずだ。なぜ私を頼った?」
「それはだって、」

「貴方を脱獄させちゃったもん」。明るいノリで言えたことじゃないけど、ゼアロンさんに危害を加えようとする人を放置もできなかったし、まだ真里亜のことも聞けていない。
だけど、そんな説明は後だ。

「………それよりもオズさん。ユリアは俺を信じてついてきてくれているんです。あの子は、俺の大切な友人で、かけがえのない娘です」
「馬鹿を言うな。精霊は精霊だ、ヒトから生まれるものか」
「うーんー…」

――――それがあったんです!とは、信じてもらえないだろうな。
人間とは生まれ方や種族が違っても、俺にとってあの子は家族同然で可愛い娘なんだよ。

「へらっとするな、気持ち悪い」
「俺の、かけがえのない存在です。危険を回避するための精霊じゃないし、ユリアが戦わないといけないような危険な道は通らせたくない。だから俺も、地理以外にも知恵や知識のある貴方を頼りたかった」

俺が‥‥‥怖かったからこそ、ユリアを同じ目に遭わせない。
それにオズさんはマクミランからやって来て、シュヴァル城に潜入できた人だ。魔法使いなら万が一魔物と遭遇しても、自分の身は守れるでしょうし‥‥。

「ユリアの交渉は好都合だったんです。俺も、貴方が可哀想だったんで」
「は?」

――ボロボロだった、でしょう?
誰も信じられなくて、ご飯も食べられなくて。怪我だらけで……あんなに狭い牢屋の中だ。
暗くて、冷たい……孤独しかない。
俺も一時だけど、マクミランで似た経験をした一人だ。

「くだらん。同情など」
「境遇は違います。だけど、貴方は、ユリアを信じてくれた」

俺を信じなくてもいい。
でも、俺が大事にしている、娘を信じてくれた。

「オズグさんに言いたいことはあります。ずっと魔の者呼ばわりされたり、上から目線だし! でも……」

言っても届かないなら諦めます。
こうして話をするのも最後……って? あれ??

オズさん、すっごく落ち着いた雰囲気で、俺と話をしてくれてないか?

――そういえば今日は、「邪教徒」も「魔の者」って、一度も聞いてない。ような?


「で、なぜ今さら俺を一人逃がす?利益はないだろう」
「俺は‥‥。貴方の言う『魔の者』は知らない。俺とは関わりない存在だけど、もし俺の見た目が貴方にとって苦痛になるなら、一緒にはいられません」
「それだけか?」
「……そんなの、一緒にいて楽しくないだろ?」

最初の旅は、しんどかった。
痛いことも苦しいことも、我慢だってたくさんした。
ひたすら歩いて、疲れて、………誰も弱音を許されなかった。

「でも、笑顔がない旅は、ダメなんだよ」

どんなに過酷でも、希望がない旅は……。
嫌われたままは寂しい。でも無理強いはできないし、したくない。


無言になったオズさんに深々と頭を下げて、今までのことへの感謝を伝えた。


「朝になったら砂糖を準備するので、黙って旅立つのはやめてくださいね」

今夜はもう真っ暗で、ヒューバートも寝ている。
魔物が出ると危険だ。

スープは温め直してあるので、よければ食べて寝てください――そう言って、俺は先にテントに戻った。
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