67 / 90
2章 脇役と不死の王龍
脇役、キャンプをする
しおりを挟む
「緊急事態!」って慌てて地上に降りるよう飛竜にお願いした。
近くの河原に降り立ってしばらく経つけど……。
「オズさん、大丈夫ですか?」
「…………」
「ふーむ? “貴様が調子に乗って飛ばすせいだぞぉ~!” って嫌味も言えないくらいには堪えてるみたいね。よくやった、飛竜」
「ウギャ!」
こらこら。
オズさんの口真似をして「無様ね」って笑うユリアに注意をしたけど、
「ふん! ママの優しさとゴルディの見逃しに感謝しないから、バチが当たったのよ!」
そう言ってユリアはぷくっと可愛い頬を膨らせちゃったよ。しょうがないなぁ。
「オズさんは具合が悪いんだ。優しくしてあげてね」
そして、何気なく見上げた空。
飛竜のおかげでだいぶ遠くまで飛んできた気がするけど、そろそろ太陽を気にしないと。
「夕暮れになる前に、テントを張って休もうか」
場所も悪くない。
応援してくれたゴルディさんのためにも安全な旅をしなきゃね。
ユリアも頷いて、手伝うと言ってくれた。
「のじゅ、っ……うっ」
「大丈夫ですよ、オズさん。ゴルディさんがお金を貸してくれたおかげで野営の道具は揃ってます」
俺の所持金じゃ飛竜なんて到底借りられなかった。レンタル料を聞いて「むり!」って叫んでしまったほど高かったんだ。
一体オズさんがどうやって飛竜を借りようとしてたかなんて、聞きたくもない。
そういう意味では、ゴルディさんに会えたのはかなりラッキーだった。
【戻ったら覚悟しとけよ?】って、絶対に説教だけじゃ終わらなさそうな圧と念押しはあったけど……。
「ん、あれ? 金具がない……?」
「ママ。テントの組み立てには魔力が必要よ。わたしに任せるといいわ」
「ありがとう、助かる! ほんとユリアがいてくれてよかった!」
「ふふん! 魔力が必要なことは全部わたしに任せるといいのよ」
魔力を注げば勝手に形になるというテント。
ユリアのおかげで、あっという間に設営が完了した。
「お疲れ様、ヒューバート」
「グッ、グルルン?」
夕飯の豆とトマトのスープを煮込みながら、俺は飛竜に近づく。
気難しくて乗せる相手を選ぶと聞いていたけど、いまじゃ大切な相棒だ。
やっぱり聞いてた以上に賢いんだ。
琥珀色の澄んだ瞳の飛竜は、不思議そうに首を傾げていた。
「飛竜や"015"って番号より、一緒に旅する間だけでも名前があった方がいいと思ったんだ。ヒューバートってどう?」
「ギャウ!」
「あはは、気に入ってくれた!」
機嫌良く鳴く飛竜と喜ぶシオウ。
好奇心旺盛の若い雄の竜と仲良さげに心を通わせるシオウに、見守っていたユリアはため息混じりに微笑む。
(ほんとゴルディの賭けは無駄だったわね)
――竜舎でのことだ。
シオウは飛竜たちに向かい、深々と頭を下げて言った。
『こんにちは、俺の名前はサトシオウ!
早速だけど、俺ら三人を西の砦近くまで運んでもらいたいんだ。すごく重労働だし長旅だ、大変だと思う!君たちに払える報酬もないけど、お世話は一生懸命します!安全な旅路を心がけます!
どうか、宜しくお願いします!』
誠心誠意の依頼。
そんなのを竜相手にする人間がいるなど聞いたことがない。
しかし、飛竜達は顔を上げシオウを見ていた。一斉に変わった空気に、ゴルディがふっと笑い諦めた気配もーーー……
「ヤツはわざと飛竜らを威圧して気を荒くさせておったのに……ママったら」
「はい、どうぞ!ヒューバート!」
目の前に置いたのは大きめの鍋。
飛竜は雑食で、そのへんの草でも魚でもなんでも自分で狩って食べるらしい。
そんな彼らが共通で好み、喜んで口にする大好物があった。
「ギャウギャウ!」
あま~い水飴だ。
ベロベロと夢中になって鍋を舐めるヒューバートは、嬉しそうに尻尾をぴんと立てている。
そう。飛竜の大好物とは"砂糖”だった。
「よかった!いっぱい食べて、いっぱい休んでくれ」
「クワゥ!」
「んふふ、かわいいなぁ」
顔はトカゲそっくりなのに、愛嬌があってかわいいんだ。
俺もヒューバートのおやつ代ゼロ円にはほっこりしているし、こうして懐いてもらえて嬉しい。
「~~~~もう!パパに嫉妬されても知らないわよ!」
「ユリアも待ってて。唐揚げも作るから」
「きゃ、ママ大好き!」
――平和で楽しいキャンプだった。
完成した食事を持ってテントを覗いた時、
オズさんがいなくなっていたことを除いて。
◇ ◇ ◇
「ああ、よかった。夕飯できてますよ」
日が落ちても戻ってこないから、少し心配になった。
ユリアは「近くにいるから問題ない」と言ってたけど、具合が悪いにしても長すぎだ。
…… ほんとに、すぐ近くにいたんだけどね
オズグさんは川辺の大きな岩に腰を掛けて、夜空を見上げていた。
川の流れる優しい音と、無数の星がきらめく空。静かに佇むその背中。
……こうして見ると、けっこう絵になる人なんだよなぁ。
近くの河原に降り立ってしばらく経つけど……。
「オズさん、大丈夫ですか?」
「…………」
「ふーむ? “貴様が調子に乗って飛ばすせいだぞぉ~!” って嫌味も言えないくらいには堪えてるみたいね。よくやった、飛竜」
「ウギャ!」
こらこら。
オズさんの口真似をして「無様ね」って笑うユリアに注意をしたけど、
「ふん! ママの優しさとゴルディの見逃しに感謝しないから、バチが当たったのよ!」
そう言ってユリアはぷくっと可愛い頬を膨らせちゃったよ。しょうがないなぁ。
「オズさんは具合が悪いんだ。優しくしてあげてね」
そして、何気なく見上げた空。
飛竜のおかげでだいぶ遠くまで飛んできた気がするけど、そろそろ太陽を気にしないと。
「夕暮れになる前に、テントを張って休もうか」
場所も悪くない。
応援してくれたゴルディさんのためにも安全な旅をしなきゃね。
ユリアも頷いて、手伝うと言ってくれた。
「のじゅ、っ……うっ」
「大丈夫ですよ、オズさん。ゴルディさんがお金を貸してくれたおかげで野営の道具は揃ってます」
俺の所持金じゃ飛竜なんて到底借りられなかった。レンタル料を聞いて「むり!」って叫んでしまったほど高かったんだ。
一体オズさんがどうやって飛竜を借りようとしてたかなんて、聞きたくもない。
そういう意味では、ゴルディさんに会えたのはかなりラッキーだった。
【戻ったら覚悟しとけよ?】って、絶対に説教だけじゃ終わらなさそうな圧と念押しはあったけど……。
「ん、あれ? 金具がない……?」
「ママ。テントの組み立てには魔力が必要よ。わたしに任せるといいわ」
「ありがとう、助かる! ほんとユリアがいてくれてよかった!」
「ふふん! 魔力が必要なことは全部わたしに任せるといいのよ」
魔力を注げば勝手に形になるというテント。
ユリアのおかげで、あっという間に設営が完了した。
「お疲れ様、ヒューバート」
「グッ、グルルン?」
夕飯の豆とトマトのスープを煮込みながら、俺は飛竜に近づく。
気難しくて乗せる相手を選ぶと聞いていたけど、いまじゃ大切な相棒だ。
やっぱり聞いてた以上に賢いんだ。
琥珀色の澄んだ瞳の飛竜は、不思議そうに首を傾げていた。
「飛竜や"015"って番号より、一緒に旅する間だけでも名前があった方がいいと思ったんだ。ヒューバートってどう?」
「ギャウ!」
「あはは、気に入ってくれた!」
機嫌良く鳴く飛竜と喜ぶシオウ。
好奇心旺盛の若い雄の竜と仲良さげに心を通わせるシオウに、見守っていたユリアはため息混じりに微笑む。
(ほんとゴルディの賭けは無駄だったわね)
――竜舎でのことだ。
シオウは飛竜たちに向かい、深々と頭を下げて言った。
『こんにちは、俺の名前はサトシオウ!
早速だけど、俺ら三人を西の砦近くまで運んでもらいたいんだ。すごく重労働だし長旅だ、大変だと思う!君たちに払える報酬もないけど、お世話は一生懸命します!安全な旅路を心がけます!
どうか、宜しくお願いします!』
誠心誠意の依頼。
そんなのを竜相手にする人間がいるなど聞いたことがない。
しかし、飛竜達は顔を上げシオウを見ていた。一斉に変わった空気に、ゴルディがふっと笑い諦めた気配もーーー……
「ヤツはわざと飛竜らを威圧して気を荒くさせておったのに……ママったら」
「はい、どうぞ!ヒューバート!」
目の前に置いたのは大きめの鍋。
飛竜は雑食で、そのへんの草でも魚でもなんでも自分で狩って食べるらしい。
そんな彼らが共通で好み、喜んで口にする大好物があった。
「ギャウギャウ!」
あま~い水飴だ。
ベロベロと夢中になって鍋を舐めるヒューバートは、嬉しそうに尻尾をぴんと立てている。
そう。飛竜の大好物とは"砂糖”だった。
「よかった!いっぱい食べて、いっぱい休んでくれ」
「クワゥ!」
「んふふ、かわいいなぁ」
顔はトカゲそっくりなのに、愛嬌があってかわいいんだ。
俺もヒューバートのおやつ代ゼロ円にはほっこりしているし、こうして懐いてもらえて嬉しい。
「~~~~もう!パパに嫉妬されても知らないわよ!」
「ユリアも待ってて。唐揚げも作るから」
「きゃ、ママ大好き!」
――平和で楽しいキャンプだった。
完成した食事を持ってテントを覗いた時、
オズさんがいなくなっていたことを除いて。
◇ ◇ ◇
「ああ、よかった。夕飯できてますよ」
日が落ちても戻ってこないから、少し心配になった。
ユリアは「近くにいるから問題ない」と言ってたけど、具合が悪いにしても長すぎだ。
…… ほんとに、すぐ近くにいたんだけどね
オズグさんは川辺の大きな岩に腰を掛けて、夜空を見上げていた。
川の流れる優しい音と、無数の星がきらめく空。静かに佇むその背中。
……こうして見ると、けっこう絵になる人なんだよなぁ。
246
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる