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1章 脇役は砂糖と塩と共に
加護はまさかの―――
しおりを挟むそれからも、なかなか大変だった。
「真里亜、大丈夫だ。彼らに敵意はなかっただろ?」
「誘拐犯の肩を持つの…?」
「まさか!」
もっと落ち着いた場所で説明を求めたところ、俺たちは礼拝堂から広くて豪華な応接室に案内された。
そこで真里亜は司祭と名乗る人物から、"異世界召喚"の目的を教えてもらったのだ。
この国で魔物を活性化させ、人に害を与える瘴気と呼ばれる”禍い”の存在。
それを唯一浄化できる聖女様として星の神様に選ばれたのが、俺の妹"真里亜"だったというわけだ。
―――しかし、その聖女様は大変憤慨していらした。
「この人たち、嫌い」
「俺も好きじゃない。でも……ここは日本じゃない、たぶん地球ですらないと思う」
でも言葉が通じるんなら、半信半疑でも受け入れなくちゃ状況の整理も理解もできない。
それに彼らの話が嘘か本当かよりも、いま優先するべきは身の安全だ。真里亜だってそれが分からない子じゃない。
「なにがあっても兄ちゃんが真里亜を守る。だから、まず彼らの話に耳を傾けてくれ。とても困ってるみたいだしさ?」
「…………ふふっ。ほんと何処に行っても、お兄ちゃんはお人好しだね」
「いくらでも人を助けて恩を売っておけって、爺ちゃんの好きな言葉だったもんな」
くすっと妹が笑ってくれて俺も肩の力が抜けた、少しだけど。
たとえ私利私欲でも、彼らなりの目的があって”聖女様”の存在を必要としているのなら、今のところ安全なはずだ。
もどかしいけど俺に出来るのは、前向きに妹を励ますことだけだった。
「でも、あたし達を兄妹なのかって疑ったことは許さないもん」
「はは……」
それは無理だろうよ、妹よ。
並んでも疑われるのはしょうがない。とにかく妹は美人で可憐なのだ。
幼い頃からモデルをやってて、近いうちにアイドルか芸能界デビューもできるくらいの素質と演技力も備わっている。
それだけじゃなくて、小・中と常にトップの成績、運動神経もいい。
俺は…………言わせんな、平々凡々で目立ったスキルも能力もない20歳だ。恋人ナシ、童貞の…
とにかく!!
真里亜は目に入れても痛くない自慢の妹なのだ。
だから――― 俺は俺に出来る最善を尽くすつもりだった。
そして後日。
コレは適正試験と言えばいいのか?
水晶に手をかざすと自分の能力値や属性が見えるという、ステータス鑑定的なことをさせられた。
「おぉ!!!」
沸きあがった周囲の歓声に、妹が紛うことなき聖女様だと分かった。
まぁ肝心の主人公兼ヒロインの真里亜はすっごく不服そうにしてるが……きちんと”光の聖女様”と分かりやすい属性の加護が与えられていたようだ。
それが、この国を蝕む瘴気を浄化できる加護。
(ん?なんか、引っかかるような…?)
「次!お兄ちゃんの番だよ」
「えぇ~?俺はいいって、どうせしょぼいって~」
「そんなわけない!お兄ちゃんなら絶対、すごい属性か加護を持ってるって!」
妹よ、その自信はどこからくるんだい?
しかし、俺の目の前にずいっと差し出された透明の水晶。
異世界から来たんだから、一応俺も見ておけってことだろ。
力を水晶に込めるってイマイチ分かんないけど、両手に手をかざすとぱぁっと暖かい光が……
【…………うま】
は???う、馬???
誰かの声を聞いた気がするけど、こんな異世界で霊的なものが見えるようになったなんて… 怖すぎて無理。
「……えぇっと数値がでたけど、これってどのレベルなんだ?」
「ん-っと、普通だって」
「ですよねぇ」
「あ、でもちゃんと加護あるよ!やったね!!」
さすがお兄ちゃん!!と笑うけど、もう周りの連中は嗤ってんよ。
心の中でイメージすれば出てくる。
俺が与えられたのは、右手からは塩、左手からは砂糖を生成できる加護だった。
ちなみに魔法の適正はない、ゼロだ。
「………」
なお、俺の作った料理を食べてもバフの効果はない。ただお腹が普通に満たされるだけ。
純粋な塩と砂糖。
純粋な塩と砂糖って、なんですか……?
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