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1章 脇役は砂糖と塩と共に
社会の窓を開けても常識は忘れるな
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闇を抜けた瞬間、視界は太陽の光に満たされた。
目の前には、青と緑がまぶしい草原が広がっている。
若草の間には可憐な野花が咲き、遠くでは川が静かにきらめいていた。
――そこはまるで、楽園か天国のように見えた。
今すぐ駆け出して、あの川に飛び込みたい。
誰もがその光景に胸を震わせ、シオウも思わず歓喜の声を上げた。
しかし、隊長だけは誰よりも冷静だった。
即座に動ける者と休息を要する者を見極め、周囲の安全確認・探索を行う班と、水質の確認および川魚の捕獲を担当する班に分けて指示を出す。
その判断の速さと的確さに、歓喜に浮かれていた騎士たちもすぐ我に返っていった。
「後は……」
「あ、はいはい!俺!俺も何かしたいですっ! できることはありませんか!?」
忘れられたら悲しいぞ!?と、俺は必死で手を伸ばして猛アピールした。
けれど、隊長さんを含む全員が「んんー」と揃って悩ましげな表情を浮かべる。
(えぇっ、俺って役立たず!?)
そんなショックを受ける前に、隊長さんがそっと指さした。
その先には、まだ体を起こせずにいるイーリエさん。
『――ここに残って、彼を守ってほしい』
なんとなく、そう言われた気がした。
「はい!了解しました!!」
姿勢を正し、護衛任務にピシッと敬礼する。
隊長さんが小さく笑った気がして、胸の奥がほんの少し誇らしくなった。
(生きてるって、いいなぁ)
すっごく平和だ。
筋肉美と滴る水の勢い、半裸になった男たちの活気ある声――。
ちょっとだけむさ苦しい光景も、今までの地獄を思えば天国だった。
「シ、オウ」
「え、行きませんよ! 俺にイーリエさんを任せてくれてるんだ。俺だって、やれることはやる」
「………」
「って、言葉通じないんですよね。ごめんなさい」
でも‥‥ 包帯でほとんど隠れてるけど、イーリエさんの顔色がずっとよく見える。
ちょっとだけ、いや、だいぶ安心している様子だ。良かった。
何か、俺にも出来るこしかとがあればいいのに……。
(消化によくって、食べられる草とかあればいいのに……ん゛~~~~分からない……)
緑色の柔らかい若葉をくるくる回してみても、異世界の植物なんて未知だ。
塩と砂糖しか出せない脇役に、出来ることはなかった。
「おーい、シオウ」
そのうち、水魔法をたくさん使ってくれたアデルさんとルカルさんが、交代しようと声をかけてくれた。
□ □ □
(~~~~っっ、ちょっと冷たいけど気持ちいい~! すっごく癒されるぅ~~~!)
鎧を脱ぎ捨てた騎士たちが水遊びに興じる傍らで…シオウはひとりのんびりしていた。
もちろん川はお風呂じゃないけど、全裸になって体を清めたい気持ちは誰にだってあるよね。
日本人ならなおさら理解できるはずだ。
(そういや、この世界にも温泉施設や健康ランドってあるんだろうか?)
いいな、行ってみたいな……
「し、シオウ!?」
「ふぇ!?え、なに!?」
びくんっと、水に浸かる俺を見て過剰な反応を見せたのは、そばを通りかかった青年だった。
――――? 誰だ、この格好いい人??
亜麻色の髪に薄緑色の瞳――こんな特徴的な美丈夫がいたっけ?
いや、当然俺が知らない顔もいるはずだ。
隊長を含め、鎧で素顔を隠している騎士は四人。
おそらく彼はそのうちの誰か……なのだろうが。
「XXX、!? XXX、XXXX!!」
「え、ちょ、まって! 早口は無理です!」
現れた美丈夫さんは、片手で目を隠しながら俺を叱っている。
―――あれ、うん…? この声…??
いつも鎧のせいでくぐもっていた声だからピンとこなかったけど、その瞳の色は……
「もしかして、隊長さん!?」
え! 思ってたより断然若いんだが!?
「いやいや、なんで覗いた側がそんな乙女な反応するんですか。別に」
「……っ、シオウ。あれ見て」
「? あれ、って…??」
シオウが見れば、そこには相変わらず楽しそうに水浴びしている騎士達の姿。
そして隊長は指を少し下げた――うん、みんなズボンか下着は穿いている。
「あ」
「シオウ、ダメだ」
「……ごめんなさい。嬉しかったので、つい……」
もしかしなくても、パンツを穿いていないのは非常識だったらしい。
「マナー知らずの不埒な者で、すみませんでした」
「はぁ……。XXXXX、危ない」
「確かに、ポロリはダメだ。危ないデスヨネ……」
ニュアンスでの会話でも、空気でなんとなく通じてしまうのが心苦しい。
ちゃんと心から反省したので、どうか俺を許してほしい……。
「シオウ、服は?」
「あ……すみません、俺の服は」
「あぁ」
そっと背後を指さして、隊長さんは納得してくれた。
俺の靴も含め、汗と泥。他にも色んな汚れでドロドロになった衣類は全部洗って、すぐそばの枯れ木の枝に干してある。
それを、「しょうがない」と思ってくれたのかは分からないけれど、隊長さんはふわっと優しい風魔法で俺の服を乾かしてくれたのだった。
「――!! 隊長さんも魔法が使えたんだ! ありがとうございます!!」
「――――は!? シオウ!?」
「お礼にあとで塩でも砂糖でも、いくらでも提供します!」
そして今度はパンツをしっかり装着して、再び水の中に入る俺。
(せっかくだもん。遊びたいし、交流しないと!)
そう! せっかくなんだ、そろそろ水遊びに混ぜてもらいたい。
それに……一番体格のいいゴルディさんにお願いして、俺を水の中に放り投げてもらえないかな!? 絶対楽しいはずだ。
(やっぱり恩は売っといてよかった…!! 俺、変態にならずに済んだよ、爺ちゃん!!)
日本とは違うけど、郷に入っては郷に従えだ。
いつだって常識は忘れてはいけない。
しかし、おーい!と手を振りながら走っていくと、全員が「キャー――!!!」と悲鳴を上げた。
目の前には、青と緑がまぶしい草原が広がっている。
若草の間には可憐な野花が咲き、遠くでは川が静かにきらめいていた。
――そこはまるで、楽園か天国のように見えた。
今すぐ駆け出して、あの川に飛び込みたい。
誰もがその光景に胸を震わせ、シオウも思わず歓喜の声を上げた。
しかし、隊長だけは誰よりも冷静だった。
即座に動ける者と休息を要する者を見極め、周囲の安全確認・探索を行う班と、水質の確認および川魚の捕獲を担当する班に分けて指示を出す。
その判断の速さと的確さに、歓喜に浮かれていた騎士たちもすぐ我に返っていった。
「後は……」
「あ、はいはい!俺!俺も何かしたいですっ! できることはありませんか!?」
忘れられたら悲しいぞ!?と、俺は必死で手を伸ばして猛アピールした。
けれど、隊長さんを含む全員が「んんー」と揃って悩ましげな表情を浮かべる。
(えぇっ、俺って役立たず!?)
そんなショックを受ける前に、隊長さんがそっと指さした。
その先には、まだ体を起こせずにいるイーリエさん。
『――ここに残って、彼を守ってほしい』
なんとなく、そう言われた気がした。
「はい!了解しました!!」
姿勢を正し、護衛任務にピシッと敬礼する。
隊長さんが小さく笑った気がして、胸の奥がほんの少し誇らしくなった。
(生きてるって、いいなぁ)
すっごく平和だ。
筋肉美と滴る水の勢い、半裸になった男たちの活気ある声――。
ちょっとだけむさ苦しい光景も、今までの地獄を思えば天国だった。
「シ、オウ」
「え、行きませんよ! 俺にイーリエさんを任せてくれてるんだ。俺だって、やれることはやる」
「………」
「って、言葉通じないんですよね。ごめんなさい」
でも‥‥ 包帯でほとんど隠れてるけど、イーリエさんの顔色がずっとよく見える。
ちょっとだけ、いや、だいぶ安心している様子だ。良かった。
何か、俺にも出来るこしかとがあればいいのに……。
(消化によくって、食べられる草とかあればいいのに……ん゛~~~~分からない……)
緑色の柔らかい若葉をくるくる回してみても、異世界の植物なんて未知だ。
塩と砂糖しか出せない脇役に、出来ることはなかった。
「おーい、シオウ」
そのうち、水魔法をたくさん使ってくれたアデルさんとルカルさんが、交代しようと声をかけてくれた。
□ □ □
(~~~~っっ、ちょっと冷たいけど気持ちいい~! すっごく癒されるぅ~~~!)
鎧を脱ぎ捨てた騎士たちが水遊びに興じる傍らで…シオウはひとりのんびりしていた。
もちろん川はお風呂じゃないけど、全裸になって体を清めたい気持ちは誰にだってあるよね。
日本人ならなおさら理解できるはずだ。
(そういや、この世界にも温泉施設や健康ランドってあるんだろうか?)
いいな、行ってみたいな……
「し、シオウ!?」
「ふぇ!?え、なに!?」
びくんっと、水に浸かる俺を見て過剰な反応を見せたのは、そばを通りかかった青年だった。
――――? 誰だ、この格好いい人??
亜麻色の髪に薄緑色の瞳――こんな特徴的な美丈夫がいたっけ?
いや、当然俺が知らない顔もいるはずだ。
隊長を含め、鎧で素顔を隠している騎士は四人。
おそらく彼はそのうちの誰か……なのだろうが。
「XXX、!? XXX、XXXX!!」
「え、ちょ、まって! 早口は無理です!」
現れた美丈夫さんは、片手で目を隠しながら俺を叱っている。
―――あれ、うん…? この声…??
いつも鎧のせいでくぐもっていた声だからピンとこなかったけど、その瞳の色は……
「もしかして、隊長さん!?」
え! 思ってたより断然若いんだが!?
「いやいや、なんで覗いた側がそんな乙女な反応するんですか。別に」
「……っ、シオウ。あれ見て」
「? あれ、って…??」
シオウが見れば、そこには相変わらず楽しそうに水浴びしている騎士達の姿。
そして隊長は指を少し下げた――うん、みんなズボンか下着は穿いている。
「あ」
「シオウ、ダメだ」
「……ごめんなさい。嬉しかったので、つい……」
もしかしなくても、パンツを穿いていないのは非常識だったらしい。
「マナー知らずの不埒な者で、すみませんでした」
「はぁ……。XXXXX、危ない」
「確かに、ポロリはダメだ。危ないデスヨネ……」
ニュアンスでの会話でも、空気でなんとなく通じてしまうのが心苦しい。
ちゃんと心から反省したので、どうか俺を許してほしい……。
「シオウ、服は?」
「あ……すみません、俺の服は」
「あぁ」
そっと背後を指さして、隊長さんは納得してくれた。
俺の靴も含め、汗と泥。他にも色んな汚れでドロドロになった衣類は全部洗って、すぐそばの枯れ木の枝に干してある。
それを、「しょうがない」と思ってくれたのかは分からないけれど、隊長さんはふわっと優しい風魔法で俺の服を乾かしてくれたのだった。
「――!! 隊長さんも魔法が使えたんだ! ありがとうございます!!」
「――――は!? シオウ!?」
「お礼にあとで塩でも砂糖でも、いくらでも提供します!」
そして今度はパンツをしっかり装着して、再び水の中に入る俺。
(せっかくだもん。遊びたいし、交流しないと!)
そう! せっかくなんだ、そろそろ水遊びに混ぜてもらいたい。
それに……一番体格のいいゴルディさんにお願いして、俺を水の中に放り投げてもらえないかな!? 絶対楽しいはずだ。
(やっぱり恩は売っといてよかった…!! 俺、変態にならずに済んだよ、爺ちゃん!!)
日本とは違うけど、郷に入っては郷に従えだ。
いつだって常識は忘れてはいけない。
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