沖田総司が辞世の句に読んだ終生ただ一人愛した女性の名とは

工藤かずや

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約束

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三人は大刀を振りかざし、一直線に走って来た。
待ち受ける俺は危なかった。
突然、またあの池田屋の兆候があったのだ。

胸の奥から熱い塊が込み上げて来る。
まずい!!
早く勝負を付けなければ、喀血して昏倒する。

先頭の男を出小手と突きで仕留め、振り向きざま二番目の男を斬り上げた。
これは捨て剣で、次の一刀がとどめだ。

相手の腕をかすめた刀をそのまま振りかぶり、真っ向から下ろす。
眉間を両断して、やっと仕留めた。
せき込み、地を吐いた。

意識が遠のいて行く。
あとは、刀をどう使ったか分からなかった。
橋の上の遺体に覆いかぶさるようにして、俺は昏倒した。
闇が来た。

気が付くと夜が明けていた。
橋の上で観柳斎四人たちと折り重なって俺は倒れていた。
最後の一人は無意識のうちに、得意の突きで仕留めていた。

刀を鞘に収め、俺は八木邸へ向かって歩き出した。
ミケに会いたかった。
土方さん始め、新選組の誰とも会いたくはなかった。

よろめきながら払暁の街を歩いた。
だいぶ喀血したらしいが、発作は収まっていた。
町人の通行人たちは、血まみれの俺を避けて行く。

番所に止められなかっただけでも幸いだった。
朝五ツ頃、八木邸に着いた。
探したがミケの姿がない。

俺はまるで恋人を探すように半狂乱だった。
前川邸の土塀の上でミケは寝ていた。
いつものように舌をならしても、見向きもしない。

すでに俺の濃い血の臭いを察知しているのだ。
俺は土塀の前で、ミケを見上げて言った。
「二度と人を斬らない、と言うお前との約束を破ってしまったな」

ミケは反対を向いたまま、身じろぎもしない。
「言い訳にはならないが、土方さんの依頼を断れなかった」
猫は人間が考える以上に、怜悧な生き物だ。

時として人間以上の知恵を見せる時がある。
「今度こそ、本当に今度こそ約束する!二度と人間を斬らない!」
何も知らない通行人がこれを見たら、何んと思うだろう。

何と思われようとよかった。
俺は誠心誠意の約束をミケとした。
屯所へ向かって歩き出した。

行きつける自信はなかった。
ミケが首を上げて後姿を見送っていたのを、俺は知らなかった。
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