沖田総司が辞世の句に読んだ終生ただ一人愛した女性の名とは

工藤かずや

文字の大きさ
40 / 56

謀略戦

しおりを挟む
翌日の朝、俺は近藤さんの部屋へ呼ばれた。
行くとすでに土方さんがいた。
三人で何を話すのか。

まず近藤さんが言った。
「斎藤から連絡があった。伊東が俺を斬り、組を乗っ取る計画が進んでいると言う」

俺は思わずつぶやいた。
「まさか・・・」
「総司、有り得んと言うのか」

土方さんが俺の言葉を咎めた。
「だってそうでしょう。新選組は隊士三百人を越え、近藤さんや土方さん大幹部は幕府直参だ。御霊衛士は人数わずかに十五人ですよ」

「新選組相手に何が出来るか、と言いたいのか」
土方さんが鋭く俺を凝視した。
でも、ここまで来ると常識の問題だろう。

仮に近藤さんや土方さんを謀略戦で斬ったとしても、十数人いる俺たち副長助勤はどうする!
俺にしても、永倉、原田、松原、井上、山崎たちにしても、一人で御霊衛士を相手に十分戦える強者ばかりだ。

そのことは、伊東が一番よく知っているはずだ。
御霊衛士の背後に薩摩がいるらしいのは分かるが、今は表立っては出て来れない。

薩摩には御霊衛士のために、新選組、会津、幕府と一戦交えるつもりはない。
「お前の考えは分かった。分かった上で敢えて言おう」
敵は長州、薩摩、土佐だけで十分だ。

御霊衛士まで敵に回すことはないだろう。
「俺たちはいかなる機会があろうと、御霊衛士を乗っ取るつもりはない。その時が来たら皆殺しにする!それが血肉を分けた味方が、敵となった時の鉄則だ!」

近藤さんは腕組みしてうなづいた。
土方さんの言いそうなことだった。
「俺はやめた方がいいと思いますよ。遺恨が遺恨を生み、決していい結果にはならない」

「三日後、伊東が近藤さんの別宅へ来ることになっている。その時に殺る!まず伊東をやり、その後に残党を誘き出して皆殺しにする」
土方さんが俺に指示した、銭取橋で観柳斎を殺った時の謀略戦だ。

おぞましかった。
血塗られた謀略戦に、また手を貸したくはなかった。
ミケとの約束もある。

「総司、お前は服部と篠原を斬れ」
「体調次第です。先日、銭取橋で血を吐いて、まだ回復していない」
近藤さんが口を開いた。

「無理をするな。お前に今欠けられては困る!」
そうだ、俺なんかいなくたって、土方さんの作戦は出来る。
俺をにらんで、土方さんが言った。

「三日後の御霊衛士始末は、新選組の総力戦になる!戦わなくてもよい。屯所で待機していろ」
無言で俺は部屋を出た。

その夜、俺は屯所にはいないつもりだ。
空き家になっている前川邸で、多分ミケを抱いて寝ているだろう。
土方さんがいかに怒ろうと、今度こそかつての仲間相手に俺は刀を手にしない!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

葉桜

たこ爺
歴史・時代
一九四二年一二月八日より開戦したアジア・太平洋戦争。 その戦争に人生を揺さぶられたとあるパイロットのお話。 この話を読んで、より戦争への理解を深めていただければ幸いです。 ※一部話を円滑に進めるために史実と異なる点があります。注意してください。 ※初投稿作品のため、拙い点も多いかと思いますがご指摘いただければ修正してまいりますので、どしどし、ご意見の程お待ちしております。 ※なろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿中

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...