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藤堂救出
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その夜遅く、珍しく土方さんが俺の部屋へ来た。
そして声を潜めて告げた。
「伊東の近藤さん暗殺計画と新選組乗っ取りは、実は隊士たちに伊東と御陵衛士を襲わせるための大義名分の口実で、そんなものは存在しない」
俺は驚いた。
暗殺計画も新選組乗っ取りもない!
なら、あれほど近藤さんが伊東に激怒している根拠は何なのか。
土方さんは静かに言った。
「二条城で幕府と諸大名たちに長州厳罰論を主張する近藤さんに対し、伊東は正反対の寛大な処分を長州に願う建白書を提出した」
何んと大胆不敵な!
これでは、新選組局長としての近藤さんの面目は丸つぶれである。
伊東はかつて近藤さんの参謀であり、配下である。
近藤さんの主張と正反対の建白書を、彼に堂々と出されては立場がない。
三日後に伊東が近藤さんの妾宅へ来るのは、近藤さんに建白書を出した真意を聞きたいと言われたからである。
「伊東はよい機会とばかりに、建白書の写しを懐に近藤さんと俺を勤王倒幕派へ誘うための説得に来るのだ」と土方さんは言う。
まさに裏の描きあいである。
ただ、伊東はまさかそれが、自分を抹殺するための誘いの謀略とまでは読めなかった。
伊東は弁が立つ。
近藤さんと土方さんを説得できると思っているのだ。
まさに策士策に溺れる、である。
土方さんはつぶやいた。
「正直言って、建白書一枚で伊東と御陵衛士を壊滅させるのは、やり過ぎだと俺は思っている」
だが、大恥をかかされた近藤さんの怒りは収まらない。
こうなったら、行くところまで行くしかない。
土方さんが部屋へ来た用件は、ここからだった。
まず伊東を暗殺して遺体を油小路と七条の辻に放置し、御陵衛士を誘き出す。
その中に藤堂平助がいる。
彼だけは助けたいと近藤さんは言う。
多摩の試衛館時代からの仲間なのだ。
それを俺にやれと言うのか!
藤堂が仲間なら、襲う新選組隊士も俺の仲間だ。
乱戦の中で、それをするのは不可能だ。
お前なら出来る!と土方さんは断言する。
新選組隊士を三、四人斬るつもりなら、それは出来るだろう。
それに隊士たちは、俺が藤堂を助けると言う密命を知らない。
裏切り者!と、隊士たちの刃が一斉に俺に向けられるのは目に見えている。
「はっきり言います。これは無理な頼みです!どうしても、と近藤さんが言うなら、作戦そのものを中止するか、土方さんが自分でやればいいでしょう」
土方さんは苦笑した。
当たり前だ。
体を張って藤堂を助けたいのは山々だが、この襲撃を計画したのは元々近藤さんなのだ!
土方さんは唇を噛んで呻いた。
「やはり、お前でも無理か」
「誰でも無理でしょう!」
うなづいて、土方さんは部屋を出て行った。
ミケが床の間で寝ていた。
折角彼女の機嫌がなおったのに、また血を見るのか!
俺はひそかに近藤さんの頼みではなく、俺自身の意思で藤堂を助けようと心に決めた。
そして声を潜めて告げた。
「伊東の近藤さん暗殺計画と新選組乗っ取りは、実は隊士たちに伊東と御陵衛士を襲わせるための大義名分の口実で、そんなものは存在しない」
俺は驚いた。
暗殺計画も新選組乗っ取りもない!
なら、あれほど近藤さんが伊東に激怒している根拠は何なのか。
土方さんは静かに言った。
「二条城で幕府と諸大名たちに長州厳罰論を主張する近藤さんに対し、伊東は正反対の寛大な処分を長州に願う建白書を提出した」
何んと大胆不敵な!
これでは、新選組局長としての近藤さんの面目は丸つぶれである。
伊東はかつて近藤さんの参謀であり、配下である。
近藤さんの主張と正反対の建白書を、彼に堂々と出されては立場がない。
三日後に伊東が近藤さんの妾宅へ来るのは、近藤さんに建白書を出した真意を聞きたいと言われたからである。
「伊東はよい機会とばかりに、建白書の写しを懐に近藤さんと俺を勤王倒幕派へ誘うための説得に来るのだ」と土方さんは言う。
まさに裏の描きあいである。
ただ、伊東はまさかそれが、自分を抹殺するための誘いの謀略とまでは読めなかった。
伊東は弁が立つ。
近藤さんと土方さんを説得できると思っているのだ。
まさに策士策に溺れる、である。
土方さんはつぶやいた。
「正直言って、建白書一枚で伊東と御陵衛士を壊滅させるのは、やり過ぎだと俺は思っている」
だが、大恥をかかされた近藤さんの怒りは収まらない。
こうなったら、行くところまで行くしかない。
土方さんが部屋へ来た用件は、ここからだった。
まず伊東を暗殺して遺体を油小路と七条の辻に放置し、御陵衛士を誘き出す。
その中に藤堂平助がいる。
彼だけは助けたいと近藤さんは言う。
多摩の試衛館時代からの仲間なのだ。
それを俺にやれと言うのか!
藤堂が仲間なら、襲う新選組隊士も俺の仲間だ。
乱戦の中で、それをするのは不可能だ。
お前なら出来る!と土方さんは断言する。
新選組隊士を三、四人斬るつもりなら、それは出来るだろう。
それに隊士たちは、俺が藤堂を助けると言う密命を知らない。
裏切り者!と、隊士たちの刃が一斉に俺に向けられるのは目に見えている。
「はっきり言います。これは無理な頼みです!どうしても、と近藤さんが言うなら、作戦そのものを中止するか、土方さんが自分でやればいいでしょう」
土方さんは苦笑した。
当たり前だ。
体を張って藤堂を助けたいのは山々だが、この襲撃を計画したのは元々近藤さんなのだ!
土方さんは唇を噛んで呻いた。
「やはり、お前でも無理か」
「誰でも無理でしょう!」
うなづいて、土方さんは部屋を出て行った。
ミケが床の間で寝ていた。
折角彼女の機嫌がなおったのに、また血を見るのか!
俺はひそかに近藤さんの頼みではなく、俺自身の意思で藤堂を助けようと心に決めた。
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