示現流見届け人

工藤かずや

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3 討手志願

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ふらつく織部を見かねて、右門がささやく。
「それじゃ表を歩けん。俺が送って行く」
「歩くのは構わんが、お前に話がある」

「なんだ」
「ここでは出来ん」
よろめきながら道場を出て行く織部。

大刀を忘れている。
右門が織部の大刀と自分のを持って後を追う
出口で草履が履けない織部に、右門が履かせてやる。

つぶやく右門。
「こりゃ、やり過ぎたかな」
ふらつく織部を抱え、道場の門を出る右門。

右門が言う。
「なんだ、話って」
「お前、近習だよな」
「それがどうした」

「部屋は目付部屋の近くだよな」
いら立つ右門。
「なにを言いたいんだ!」

「今度上意討ちがあったら、
俺がやると目付に伝えててくれ」
右門が仰天する。

「お、お前、討手になりたいのか!
相手と斬り合いになるぞ」
「やる!だから、お前に示現流をやってもらった」

「無理だ!あんなもの見たくらいで
本物の斬り合いなどできん」
「お前とは違う!俺にはできる」

「呆れたな!なら。あんなことやるんじゃなかった」
「これくらいやらなきゃ、お小夜さんは関心持ってくれん」
絶句する右門。

「お小夜のためか!」
「なにがなんでも、お小夜は俺のもんだ」
「まさに命がけの恋って奴か」

「お目付の件、頼むぞ!話はそれだけだ。
あとは歩ける」
よろめきながら歩いて行く織部を
呆然と見送る右門。

「小夜は間違いなくあばずれだ!」
道を引き返す。
「でも本人がいいならいいか!
女に入れあげる奴の気が知れんが」

道場へ向かう。
「お目付は、織部が討手をやりたいといえば
喜ぶに決まってる!上意討ちの討手になりたい奴などいない!!」



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