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5 初めての人斬り
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近くの寺の鐘が鳴っている。
朝六つ(午前七時)を告げる鐘だ。
織部は本田帯刀の屋敷の
庭に潜んでいたが
討手の市原蔵人が現れない。
まずい!これでは
見届け人の俺がやるしかない。
まだ鐘は鳴っている。
鳴り終わるまでに来い!
俺は刀の鯉口を切った。
庭へ出て、八双に構え、
奇声を発して帯刀へ走る。
準備はできていた。
最後の鐘がなり終わると
同時に門に蔵人が姿を現した。
ホッとした。
蔵人を見て屋敷から帯刀が
刀を下げて出て来た。
果し合いの全てを確認して
お目付に報告する。
それが俺の役目だ。
両者間合いを取って向かい合った。
が、いつまでたっても抜かない。
何をしてんだ。
話をしているらしい。
この期に及んで何を話している。
突然、蔵人がまた門へ向かって歩き出した。
帯刀も屋敷へ引き返して行く。
まずい!最悪だ!
蔵人は帯刀を見逃すつもりだ!
こんな時のために俺がいる。
俺は茂みを飛び出して
蔵人の前に立ちふさがった。
「何をしている!斬れ!」
蔵人が冷静に言った。
臆しているのではないらしい。
「帯刀の一人娘が重い病に臥せっている。
明日までの命らしい。
せめて、それまで待ってくれと言っている」
「確かめたのか」
「そんな酷いことはできない」
「ならば、俺はあんたを斬らなければならない」
「待ってやれ!その後、帯刀も後を追うと言っている」
俺は刀を抜いた。
父の言っていたのは、こういうことか!
「お主を斬って、帯刀を斬る!
それが俺の役目だ」
「武士の情けということを知らんのか」
蔵人の言葉が痛かった。
いつもの俺なら、当然待ってやる。
だが、斬らねば俺が腹を切らねばならない。
「よし、相手になろう!俺はを信じる」
決まった!まず俺と蔵人の勝負だ。
蔵人が刀を抜いた。
「上意討ちとはいえ、討手には血も涙もある!」
俺は刀を八双にあげた。
右門のやった通り奇声をあげた。
八双の構えを示現流では蜻蛉と言い、
規制をさ猿叫と言う。
無論、織部はそんなことは知らない。
織部は走った。
全力で蔵人に体当たりする勢いで。
蔵人は二尺四寸の大刀で
俺の刀を受けようとした。
体で振り下ろした俺の刀は
蔵人の大刀を折り、
その脳天に斬り込んだ。
刀を引き抜きながらなおも走った。
前方に帯刀がいる。
八双に構えながらそこを目指した。
帯刀が刀を抜いた。
それを構える間も無く、俺の刀が額を割った。
俺はさらに血刀を手に走った。
全力で!
右門がそうしたように。
屋敷裏まで走って、止まった。
縁側の向こうの座敷に
幼い娘が布団に寝ていた。
血刀を下げて俺はそれを見ていた。
動けなかった!
背後の庭に蔵人と帯刀の遺体が転がっている。
俺は役目を成し遂げた!
お小夜はこんな俺を、褒めてくれるだろうか。
朝六つ(午前七時)を告げる鐘だ。
織部は本田帯刀の屋敷の
庭に潜んでいたが
討手の市原蔵人が現れない。
まずい!これでは
見届け人の俺がやるしかない。
まだ鐘は鳴っている。
鳴り終わるまでに来い!
俺は刀の鯉口を切った。
庭へ出て、八双に構え、
奇声を発して帯刀へ走る。
準備はできていた。
最後の鐘がなり終わると
同時に門に蔵人が姿を現した。
ホッとした。
蔵人を見て屋敷から帯刀が
刀を下げて出て来た。
果し合いの全てを確認して
お目付に報告する。
それが俺の役目だ。
両者間合いを取って向かい合った。
が、いつまでたっても抜かない。
何をしてんだ。
話をしているらしい。
この期に及んで何を話している。
突然、蔵人がまた門へ向かって歩き出した。
帯刀も屋敷へ引き返して行く。
まずい!最悪だ!
蔵人は帯刀を見逃すつもりだ!
こんな時のために俺がいる。
俺は茂みを飛び出して
蔵人の前に立ちふさがった。
「何をしている!斬れ!」
蔵人が冷静に言った。
臆しているのではないらしい。
「帯刀の一人娘が重い病に臥せっている。
明日までの命らしい。
せめて、それまで待ってくれと言っている」
「確かめたのか」
「そんな酷いことはできない」
「ならば、俺はあんたを斬らなければならない」
「待ってやれ!その後、帯刀も後を追うと言っている」
俺は刀を抜いた。
父の言っていたのは、こういうことか!
「お主を斬って、帯刀を斬る!
それが俺の役目だ」
「武士の情けということを知らんのか」
蔵人の言葉が痛かった。
いつもの俺なら、当然待ってやる。
だが、斬らねば俺が腹を切らねばならない。
「よし、相手になろう!俺はを信じる」
決まった!まず俺と蔵人の勝負だ。
蔵人が刀を抜いた。
「上意討ちとはいえ、討手には血も涙もある!」
俺は刀を八双にあげた。
右門のやった通り奇声をあげた。
八双の構えを示現流では蜻蛉と言い、
規制をさ猿叫と言う。
無論、織部はそんなことは知らない。
織部は走った。
全力で蔵人に体当たりする勢いで。
蔵人は二尺四寸の大刀で
俺の刀を受けようとした。
体で振り下ろした俺の刀は
蔵人の大刀を折り、
その脳天に斬り込んだ。
刀を引き抜きながらなおも走った。
前方に帯刀がいる。
八双に構えながらそこを目指した。
帯刀が刀を抜いた。
それを構える間も無く、俺の刀が額を割った。
俺はさらに血刀を手に走った。
全力で!
右門がそうしたように。
屋敷裏まで走って、止まった。
縁側の向こうの座敷に
幼い娘が布団に寝ていた。
血刀を下げて俺はそれを見ていた。
動けなかった!
背後の庭に蔵人と帯刀の遺体が転がっている。
俺は役目を成し遂げた!
お小夜はこんな俺を、褒めてくれるだろうか。
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