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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㊲
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お姉様に私の存在を植え付ける活動を、学園に入学してからずっと続けている。そうしていくことで、私という存在がどんどんこの学園に刻まれていきますようにと望みながら。
「お姉様、今日はデル兄様たちと――」
「お姉様、今日は教師の方の手伝いをいたしました」
お姉様に話しかけて、今日やったことを口にする。乙女げぇむの中の私は決してこんなに目立つような存在ではなかったのだという。悪役令嬢の妹として出てくる、アクノール・カプラッドの後ろに控えているような少しだけ登場シーンがあるようなキャラクターだったと。
ウーログが「髪型を変えてみたりしたら?」と言っていたので、今まで結んでいなかった髪を結ぶようにもしている。印象を変えて、目立つようにしていく。私の名が、お姉様の名より有名になるぐらいに。
此処が違うんだと、理解してくれるように。
そう願って、私はずっと行動している。
それでもお姉様は、やっぱり私の事を見ることはせずに、ただ乙女げぇむの世界の私だけを見ている。お姉様の言うイエルノ・カプラッドと、現在の私が乖離していて――、周りが訝しんでいるのにお姉様は気づかない。
私はお姉様と仲が悪いの? などと周りに聞かれてしまった。——お姉様の見ている世界は、私たちの見ている世界と、やはり違うのだ。
そのことを私は実感する。
――ちゃんと、周りを見て、私を見ていたら、もっと違う言葉が出てくるだろう。でもお姉様にとってイエルノ・カプラッドは目立たない妹でしかない。
学園に入学してまもなく一年が経過する。
私は中等部の二年生にあがり、お姉様は高等部の一年生になる。……お姉様はようやく乙女げぇむと呼ばれる世界の舞台に足を踏み入れることになるのだ。
私は来年から中等部の生徒会に入ることになっている。ウーログも一緒である。教師の手伝いをずっと頑張ってきたからだ。
お姉様は私が生徒会に入ることを聞いても、全く私の事を見ない。聞いているはずなのに、私が生徒会なんてありえないと思っているのか、私に対して興味がないのか、すぐに忘れてしまうのだ。
私は学園でのお姉様を一年見かけていて、思ったのはなんと危ういのだろうということだ。だってお姉様はいつだって、前世の乙女げぇむという世界を見ている。それは乙女げぇむの世界が近づいてきていて顕著になった。
お姉様は私のことも、他の誰かのことも見ていなくて。だからこそ、周りとの乖離が少なからずある。そのことであれ? と思っている生徒は何人かいるようだ。
お姉様は、私が現実を叩きつければ壊れてしまうだろうか。——でも、もう一回、もう一度だけ――、お姉様に現実を見てもらうための行動を起こしたいと思った。
今だって、徐々にお姉様は少しずつ此処ではない別の何かを見ているのが外にも出てきている。このまま高等部に入ってしまったらお姉様はどうなるのだろうか。
まずはお姉様に手紙を書いてみた。……お姉様付きの侍女に聞いたところによると、その手紙を見たお姉様は変な行動を起こしたのだという。結局その手紙はお姉様に再度読まれることなく処分されてしまった。その後、やっぱり何事もなかったかのようにお姉様は日常を謳歌する。
やっぱりお姉様は、私の手紙なんてちっとも見てくれない。ウーログに習って、お姉様とウーログの世界の言葉で書いたのに。それでもお姉様は、此処が現実だというのを拒否する。
「お姉様、お話があります」
二度目のリベンジ。
お姉様ともう一度向き合いたいと思って、だからこそお姉様の部屋に来た。
「お姉様、ちゃんと私を見てください」
「見ているわ。不出来でも可愛い妹だもの」
「……お姉様、私が生徒会に入ることが決まっていて、この学園でも評判を高めていることは分かっていますか?」
「まぁ、そうなのね」
そうなのね、と口にしながらやっぱり私の事を見ていないお姉様。
今回、お姉様付きの侍女と私付きの侍女だけはこの場にいる。お姉様が以前暴れたことも軽く説明した上で、そこにいてもらっている。
本当はお姉様の変な部分を、周りの人に見せないでいられたら一番良いけれど、私にはお姉様が暴れた時に抑えつける力はない。
「お姉様、私はお姉様にちゃんと周りを見てほしいです。私が何を好きで、私が何を思っているかも、お姉様は知らないでしょう? ねぇ、お姉様、知ってますか?」
お姉様は、黙ったままだ。ああ、私が乙女げぇむの世界ではないと以前言いにいった時と同じような状況にもう陥っている気がする。
それでも私の口はとまらない。
「お姉様、改めていいます。ちゃんと聞いて。これは夢ではないから」
夢ではないからと口にして、私はお姉様を真っ直ぐに見る。この前は夢としてお姉様の中で処理されてしまったから。だから……お姉様がちゃんとこれが現実だと分かってくれるように言葉を紡ぐ。
「お姉様、私は私。お姉様はお姉様。——イエルノ・カプラッドという記号でも、アクノール・カプラッドという記号でもない」
お姉様は虚ろな瞳をしている。
「お姉様、此処は現実なの。お姉様の行動が未来を決めるの。——だから、ちゃんと周りを見てほしいの」
お姉様の目がカッと開かれた。そのまま、またぶたれるか思ったけれど、お姉様はそのまま倒れてしまった。
……そして目が覚めたお姉様はすっかり私と話したことをやっぱり忘れていた。それどころが全部リセットしたかのように、益々私や周りのことを乙女げぇむの登場人物のようにしか接しなくなってしまった。
「お姉様、今日はデル兄様たちと――」
「お姉様、今日は教師の方の手伝いをいたしました」
お姉様に話しかけて、今日やったことを口にする。乙女げぇむの中の私は決してこんなに目立つような存在ではなかったのだという。悪役令嬢の妹として出てくる、アクノール・カプラッドの後ろに控えているような少しだけ登場シーンがあるようなキャラクターだったと。
ウーログが「髪型を変えてみたりしたら?」と言っていたので、今まで結んでいなかった髪を結ぶようにもしている。印象を変えて、目立つようにしていく。私の名が、お姉様の名より有名になるぐらいに。
此処が違うんだと、理解してくれるように。
そう願って、私はずっと行動している。
それでもお姉様は、やっぱり私の事を見ることはせずに、ただ乙女げぇむの世界の私だけを見ている。お姉様の言うイエルノ・カプラッドと、現在の私が乖離していて――、周りが訝しんでいるのにお姉様は気づかない。
私はお姉様と仲が悪いの? などと周りに聞かれてしまった。——お姉様の見ている世界は、私たちの見ている世界と、やはり違うのだ。
そのことを私は実感する。
――ちゃんと、周りを見て、私を見ていたら、もっと違う言葉が出てくるだろう。でもお姉様にとってイエルノ・カプラッドは目立たない妹でしかない。
学園に入学してまもなく一年が経過する。
私は中等部の二年生にあがり、お姉様は高等部の一年生になる。……お姉様はようやく乙女げぇむと呼ばれる世界の舞台に足を踏み入れることになるのだ。
私は来年から中等部の生徒会に入ることになっている。ウーログも一緒である。教師の手伝いをずっと頑張ってきたからだ。
お姉様は私が生徒会に入ることを聞いても、全く私の事を見ない。聞いているはずなのに、私が生徒会なんてありえないと思っているのか、私に対して興味がないのか、すぐに忘れてしまうのだ。
私は学園でのお姉様を一年見かけていて、思ったのはなんと危ういのだろうということだ。だってお姉様はいつだって、前世の乙女げぇむという世界を見ている。それは乙女げぇむの世界が近づいてきていて顕著になった。
お姉様は私のことも、他の誰かのことも見ていなくて。だからこそ、周りとの乖離が少なからずある。そのことであれ? と思っている生徒は何人かいるようだ。
お姉様は、私が現実を叩きつければ壊れてしまうだろうか。——でも、もう一回、もう一度だけ――、お姉様に現実を見てもらうための行動を起こしたいと思った。
今だって、徐々にお姉様は少しずつ此処ではない別の何かを見ているのが外にも出てきている。このまま高等部に入ってしまったらお姉様はどうなるのだろうか。
まずはお姉様に手紙を書いてみた。……お姉様付きの侍女に聞いたところによると、その手紙を見たお姉様は変な行動を起こしたのだという。結局その手紙はお姉様に再度読まれることなく処分されてしまった。その後、やっぱり何事もなかったかのようにお姉様は日常を謳歌する。
やっぱりお姉様は、私の手紙なんてちっとも見てくれない。ウーログに習って、お姉様とウーログの世界の言葉で書いたのに。それでもお姉様は、此処が現実だというのを拒否する。
「お姉様、お話があります」
二度目のリベンジ。
お姉様ともう一度向き合いたいと思って、だからこそお姉様の部屋に来た。
「お姉様、ちゃんと私を見てください」
「見ているわ。不出来でも可愛い妹だもの」
「……お姉様、私が生徒会に入ることが決まっていて、この学園でも評判を高めていることは分かっていますか?」
「まぁ、そうなのね」
そうなのね、と口にしながらやっぱり私の事を見ていないお姉様。
今回、お姉様付きの侍女と私付きの侍女だけはこの場にいる。お姉様が以前暴れたことも軽く説明した上で、そこにいてもらっている。
本当はお姉様の変な部分を、周りの人に見せないでいられたら一番良いけれど、私にはお姉様が暴れた時に抑えつける力はない。
「お姉様、私はお姉様にちゃんと周りを見てほしいです。私が何を好きで、私が何を思っているかも、お姉様は知らないでしょう? ねぇ、お姉様、知ってますか?」
お姉様は、黙ったままだ。ああ、私が乙女げぇむの世界ではないと以前言いにいった時と同じような状況にもう陥っている気がする。
それでも私の口はとまらない。
「お姉様、改めていいます。ちゃんと聞いて。これは夢ではないから」
夢ではないからと口にして、私はお姉様を真っ直ぐに見る。この前は夢としてお姉様の中で処理されてしまったから。だから……お姉様がちゃんとこれが現実だと分かってくれるように言葉を紡ぐ。
「お姉様、私は私。お姉様はお姉様。——イエルノ・カプラッドという記号でも、アクノール・カプラッドという記号でもない」
お姉様は虚ろな瞳をしている。
「お姉様、此処は現実なの。お姉様の行動が未来を決めるの。——だから、ちゃんと周りを見てほしいの」
お姉様の目がカッと開かれた。そのまま、またぶたれるか思ったけれど、お姉様はそのまま倒れてしまった。
……そして目が覚めたお姉様はすっかり私と話したことをやっぱり忘れていた。それどころが全部リセットしたかのように、益々私や周りのことを乙女げぇむの登場人物のようにしか接しなくなってしまった。
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