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第二部

03

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 ベッドに並んで座って肩を抱き寄せられる。
「まだ少し緊張しているな」
 手を握られて撫で擦られる。彼の手はなめし革のような手触りで少しだけ体温が低い。
「そう、ですね。緊張っていうか、ドキドキしてます」
「それを緊張って言うんじゃないか?」
「ドキドキと、ワクワクしてるので緊張とはちょっと違います」
 ふむ、と彼は嬉しそうに頷いて私の額にキスを落としてきた。
 額、目尻、鼻先、顎先、そして唇。いつもの彼の合図。はじめるよ、の合図。
 私はそれに応えるように薄く唇を開くと彼の人より薄い舌が入り込んできた。
「ん……」
 妊娠している間は性的な刺激はしないと決めていたので舌を入れることも殆どなかった。
「ぁふ……」
 上顎を舌先でくすぐられる。そこが私の弱いところだと覚えていてくれているのだ。
 ぞくぞくする背筋。ずんと重くなるお腹の奥。たったこれだけのことなのに体はもう快楽を思い出している。
「ん、ん……」
 舌を絡めあって手を握りあって舌も指もこすりあって。
「は……」
 唇を離すと銀糸がつうっと光って切れた。
「きもちいい?」
「きもちいいです」
「よかった」
 アデミル様が微笑んでベッドの上に私を引き上げて夜着を脱がせる。
「素敵な下着だ」
 現れた黒に白の刺繍の下着にアデミル様がうっとりと目を細める。
「初めて見るな」
「新作です」
「脱がせるのがもったいないな」
「見てるだけでいいんですか?」
 私の軽い挑発に彼は笑うと脱がすとも、とブラジャーに手をかけた。
「甘い匂いがする」
「あ……お乳が漏れてるのかも……」
 恥ずかしくなって上目遣いで見上げると、舐めてもいいか、と聞かれた。
「アインスが独占している味に興味がある」
「美味しいかはわからないですよ?」
「いい匂いだぞ」
 すんすんと鼻をひくつかせていたアデミル様がちゅうっと片方の乳首に吸い付いた。
「んっ」
 赤ちゃんのようにアデミル様がちゅうちゅうと乳首を吸う。
 こくりこくりと彼の喉が鳴って、べろりと舐めて顔を上げた。
「甘くてサラッとしていて美味いぞ」
「そ、それは良かったですね。でもアインスのものですからね?」
 けれどアデミル様は今は私のものだとまた吸い付いてきた。
「ぁ……」
 今度は先ほどとは違い舌先でころころと乳首を転がしたり潰したりと明確な愛撫の意図をもって弄ってきた。
 もう片方の乳首も指でつままれて潰される。ぴゅっと母乳が飛び出るのが見えた。
「ん、ぁ……」
 お腹の奥がどんどん重くなっていく。それが快楽の芽吹きであると私はもう知っていた。
 アデミル様の手が下に降りていき、腰を撫でる。くすぐったさよりぞわぞわとした気持ちよさに身を捩る。
 彼の手がショーツを脱がしてベッドの上に落とした。
 彼の指が私の入り口に滑らされた。私自身、そこが濡れていると分かるほどそこはぬるりと彼の指を滑らせた。
「良かった、濡れているな」
 ほっとしたような声にああ、この人も本当は不安だったのだなと知る。私が本当に彼を受け入れる気持ちになっているのか、彼も不安だったのだ。
「アデミル様のキスはいつも私を蕩けさせてくれますから」
 私がそう微笑むと彼は嬉しそうに笑って口付けてきた。
「んんっ……!」
 舌を絡めながらぬくんっと入り込んできた指に体を震わせる。アデミル様の指はとても節くれだっていてそこが入り込む感覚がまた気持ちがいい。内壁をごりごりと擦られるのだ。
「んは、は、あ、アデミル様……!」
 金の瞳を間近で見つめ返しながら腰を揺らめかす。もっと、もっと中を擦って。
 指はそれに答えるように二本、三本と徐々に増やされていき、中でごりごりとそれが蠢く。
 気持ちいい。気持ちいいけれど私はもっと気持ちのいいものを知っている。
「アデミル様……も、挿れて……!」
 焦れてそうおねだりすれば彼は指を引き抜いて己の夜着を脱ぎ、下着からいきり勃つそれを取り出して私のそこに押し当てた。
「力を抜いていろ」
「はい……!」
 ずずっと熱くて硬いそれが押し入ってきた。
「ああんっ」
「く……相変わらずキツイな……」
 アデミル様のその一言にホッとする。よかった、アインスを産んで緩くなったんじゃって心配したけど大丈夫みたいだ。
 ずにゅううっと奥までその熱は入ってきて、最奥の子宮口に先端が当たるとぐにっとそこを押し上げて侵攻を止めた。
 アデミル様がぎゅっと抱きしめてくれる。ふかふかの体毛に包まれて気持ちがいい。
「はあ……シオリ、愛してる」
「私も愛してます、アデミル様」
 ちゅっちゅっとキスを交わすとアデミル様が動いてもいいかと聞いてきた。
「はい」
 そう返すとアデミル様がゆっくりと腰を動かし始めた。
 ずるぅーっと引き抜かれて抜ける寸前にぶちゅんっと押し込まれる。
「あんん!」
 脳天をビリビリとした快感が走って私はアデミル様の体にしがみついた。
 ずるぅーっぶちゅんっ、ずるぅーっぶちゅんと何度も繰り返して次第にそれが速くなっていく。
 結合部からぐぷぐぷと音が響いてそれがまた興奮剤となる。
「あっ、あっ、ああっ」
 揺さぶられながらのけぞって強い快感を押し流そうとする。けれどそんな努力など無駄なのだと言わんばかりにアデミル様は私の奥を突いて次から次へと快感を与えてくる。
「あでみるさまっあでみるさまっ激しくしてっイかせて……!」
「一緒にイこうな、シオリ」
 目尻にちう、と吸いつかれて、途端、揺さぶりが激しくなる。
「あっあっあっああっいいっ!いいよぉ!」
「シオリ、シオリ……!」
 がくがくと力任せに揺さぶられながら私は高みへと上り詰めていく。
「イくっ!アデミル様っ!イッちゃう!」
「シオリ……!」
「あんんんんっ!」
「っく……!」
 私が爪先を突っ張らせて達するのとアデミル様が私の子宮口を押し上げて射精するのはほとんど同時だった。
 あ……中でたくさん出てる……。
 私は私を抱きしめてはあ、と熱い息を漏らしているアデミル様の喉をくしゅくしゅとくすぐった。途端に中でまた質量を増すペニス。
 覚えてた。私の合図、覚えてくれてた。
 顔を上げたアデミル様に口付けると深く唇を交わわせてきた。
「いいんだな?」
「はい」
 私はアデミル様の広い背に腕を回してもふもふの首筋に顔を埋めた。
 長い夜は始まったばかりだ。


(続く)
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