塵埃抄

阿波野治

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たま

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 二回の表だった。珠美はボールガールとしての役目を果たすべく、主審のもとに真新しい野球ボールを送り届けた。ベンチ脇の定位置に戻るべく、試合の一時中断に伴い打席を外していた打者の真横を通過する。玉木ノボル。推定年俸三億円、日本球界を代表する強打者だ。珠美は顔を斜め下に向けていたため、通り過ぎる際、玉木選手の下半身が目に入った。彼の股間は明らかに隆起していた。両足がその場に停止する。玉木選手が怪訝そうに彼女を見返す。珠美は唾を飲み下して玉木選手に歩み寄り、彼の股間をユニフォーム越しに揉みしだいた。こうして彼女は球場を出入り禁止となった。
 その夜、珠美は自室のバスルームでボディーソープを体に塗りたくりながら、玉木選手の玉の感触を思い返した。大きな玉だった。とても大きな玉だった。知らず知らずのうちに、珠美は劣情を催していた。自らの手でというよりは、他者との交流の中で解消したい、そんな劣情を。
 壁に耳を押し当てる。人が活動する物音が微かに聞こえる。隣室に住んでいるのは、児玉という三十過ぎの夫婦。その児玉家の主人の球児と、珠美は何度か体を重ねたことがあった。球児の妻の鞠子が不在の隙に、彼が妻帯者だと承知の上で、二人きりの甘いひとときを過ごしたのだ。鞠子の帰宅はいつも遅い。今の時間帯、球児は部屋に一人でいるはずだ。裸のままバスルームを出て、自室からも出た。隣室の玄関のドアの鍵はかかっていなかった。中に足を踏み入れる。
 リビングに球児の姿はなかった。バスルームの明かりが灯っている。シャワーの音が聞こえる。ドアの磨り硝子越しに人影が確認できた。珠美はドアを蹴り開けて中に飛び込んだ。案の定、球児がシャワーを浴びていた。後ろから抱きつき、睾丸を揉みしだく。球児は狼狽している。湯船に浸かった鞠子が唖然と珠美を見つめる。日曜日だった。
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