鏖の季節

阿波野治

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 草の中に身を置いてから、一部始終を見届ける覚悟を決めた今に至るまで、二人は実に仲睦まじそうにしている。トモノリはほぼ一貫して無表情だし、真理愛は時おり笑みを見せてはいるものの、表情はどこかかたい。それでも仲睦まじそうだと感じる。
 真理愛に想いを寄せる隼人としては、気に食わない。いらいらしてくる。嫉妬の念がむらむらと湧く。これ以上言葉を交わすのはやめろ、と叫びたくなる。できるものなら、トモノリに猛然と駆け寄って横面を殴り飛ばしてやりたい。

「……それにしても」
 二人はどのように知り合い、放課後のひとときを共有する関係になったんだ?
 片やいじめられっ子で、片や周囲から孤立した変人。陰があるという部分では重なるが、共通点はそれくらい。少々頭を捻ったところで真実は露わにならない。
 なぜもう少し早く尾行をはじめなかったんだ? 後の祭りだとわかってはいるが、自分の行動の遅さが恨めしくてならない。

 やがて、トモノリばかりが唇を動かすようになった。耳を傾ける真理愛の表情は真剣だ。ほとんど相槌を打たず、話し手ではなく前方の景色を見つめている。
 真理愛は無理矢理話に付き合わされているのではなく、自ら望んで聞き手に回っているらしい。ことによると、彼女のほうからトモノリに話をするように要求したのかもしれない。

 二人は恋仲なのではないか、という疑惑が隼人の胸に浮上した。
 隼人と真理愛の関係は現状、ただのクラスメイトの域にとどまっている。樹音という鬼の目が届かない場所で、真理愛が落としたプリントの束を拾うのを手伝ったこと。あれがもっとも近づいた瞬間だった。
 それにもかかわらず、恋人を奪われたかのようなショックを隼人は感じている。
 関係がさらに深まれば、二人は小屋に閉じこもり、官能的な肉体的交流に汗を流す。きっとそうだ。そうに決まっている。
 腹が立った。嫉妬した。憎しみが湧いた。

 隼人はおもむろに制服のズボンのファスナーを下ろすと、すでになかば膨張しているものを引っ張り出し、右手でしごきはじめた。

 観察した限り、湯田さんがトモノリとの対話を望んでいるのは事実らしい。でも、対話の果てに待ち受けている未来が、湯田さんが望むものかはわからないじゃないか。湯田さんは曇りのない動機からトモノリと交流しているのだとしても、トモノリも同じとは限らない。というよりも、トモノリはトモノリなのだから、なんらかの邪な企みを胸に秘めている可能性が高い。いや、絶対にそうだ。そうに決まっている。

 なんとかしないと。
 取り返しがつかない事態に陥る前に、湯田さんを救わないと。
 二人に密接な繋がりがあるのを承知しているのは、現時点では、本人を除けば俺一人だけ。
 どうにかできるのは俺しかいない。俺がどうにかするしかない。どうにかしなければ。どうにかしたい!

 自己暗示をかけるように胸の内で呟きながら、隼人は己の一部を愚直に刺激しつづける。浅ましい行為は二人が対話を終えるまで続いた。
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