29 / 107
29
しおりを挟む
草の中に身を置いてから、一部始終を見届ける覚悟を決めた今に至るまで、二人は実に仲睦まじそうにしている。トモノリはほぼ一貫して無表情だし、真理愛は時おり笑みを見せてはいるものの、表情はどこかかたい。それでも仲睦まじそうだと感じる。
真理愛に想いを寄せる隼人としては、気に食わない。いらいらしてくる。嫉妬の念がむらむらと湧く。これ以上言葉を交わすのはやめろ、と叫びたくなる。できるものなら、トモノリに猛然と駆け寄って横面を殴り飛ばしてやりたい。
「……それにしても」
二人はどのように知り合い、放課後のひとときを共有する関係になったんだ?
片やいじめられっ子で、片や周囲から孤立した変人。陰があるという部分では重なるが、共通点はそれくらい。少々頭を捻ったところで真実は露わにならない。
なぜもう少し早く尾行をはじめなかったんだ? 後の祭りだとわかってはいるが、自分の行動の遅さが恨めしくてならない。
やがて、トモノリばかりが唇を動かすようになった。耳を傾ける真理愛の表情は真剣だ。ほとんど相槌を打たず、話し手ではなく前方の景色を見つめている。
真理愛は無理矢理話に付き合わされているのではなく、自ら望んで聞き手に回っているらしい。ことによると、彼女のほうからトモノリに話をするように要求したのかもしれない。
二人は恋仲なのではないか、という疑惑が隼人の胸に浮上した。
隼人と真理愛の関係は現状、ただのクラスメイトの域にとどまっている。樹音という鬼の目が届かない場所で、真理愛が落としたプリントの束を拾うのを手伝ったこと。あれがもっとも近づいた瞬間だった。
それにもかかわらず、恋人を奪われたかのようなショックを隼人は感じている。
関係がさらに深まれば、二人は小屋に閉じこもり、官能的な肉体的交流に汗を流す。きっとそうだ。そうに決まっている。
腹が立った。嫉妬した。憎しみが湧いた。
隼人はおもむろに制服のズボンのファスナーを下ろすと、すでになかば膨張しているものを引っ張り出し、右手でしごきはじめた。
観察した限り、湯田さんがトモノリとの対話を望んでいるのは事実らしい。でも、対話の果てに待ち受けている未来が、湯田さんが望むものかはわからないじゃないか。湯田さんは曇りのない動機からトモノリと交流しているのだとしても、トモノリも同じとは限らない。というよりも、トモノリはトモノリなのだから、なんらかの邪な企みを胸に秘めている可能性が高い。いや、絶対にそうだ。そうに決まっている。
なんとかしないと。
取り返しがつかない事態に陥る前に、湯田さんを救わないと。
二人に密接な繋がりがあるのを承知しているのは、現時点では、本人を除けば俺一人だけ。
どうにかできるのは俺しかいない。俺がどうにかするしかない。どうにかしなければ。どうにかしたい!
自己暗示をかけるように胸の内で呟きながら、隼人は己の一部を愚直に刺激しつづける。浅ましい行為は二人が対話を終えるまで続いた。
真理愛に想いを寄せる隼人としては、気に食わない。いらいらしてくる。嫉妬の念がむらむらと湧く。これ以上言葉を交わすのはやめろ、と叫びたくなる。できるものなら、トモノリに猛然と駆け寄って横面を殴り飛ばしてやりたい。
「……それにしても」
二人はどのように知り合い、放課後のひとときを共有する関係になったんだ?
片やいじめられっ子で、片や周囲から孤立した変人。陰があるという部分では重なるが、共通点はそれくらい。少々頭を捻ったところで真実は露わにならない。
なぜもう少し早く尾行をはじめなかったんだ? 後の祭りだとわかってはいるが、自分の行動の遅さが恨めしくてならない。
やがて、トモノリばかりが唇を動かすようになった。耳を傾ける真理愛の表情は真剣だ。ほとんど相槌を打たず、話し手ではなく前方の景色を見つめている。
真理愛は無理矢理話に付き合わされているのではなく、自ら望んで聞き手に回っているらしい。ことによると、彼女のほうからトモノリに話をするように要求したのかもしれない。
二人は恋仲なのではないか、という疑惑が隼人の胸に浮上した。
隼人と真理愛の関係は現状、ただのクラスメイトの域にとどまっている。樹音という鬼の目が届かない場所で、真理愛が落としたプリントの束を拾うのを手伝ったこと。あれがもっとも近づいた瞬間だった。
それにもかかわらず、恋人を奪われたかのようなショックを隼人は感じている。
関係がさらに深まれば、二人は小屋に閉じこもり、官能的な肉体的交流に汗を流す。きっとそうだ。そうに決まっている。
腹が立った。嫉妬した。憎しみが湧いた。
隼人はおもむろに制服のズボンのファスナーを下ろすと、すでになかば膨張しているものを引っ張り出し、右手でしごきはじめた。
観察した限り、湯田さんがトモノリとの対話を望んでいるのは事実らしい。でも、対話の果てに待ち受けている未来が、湯田さんが望むものかはわからないじゃないか。湯田さんは曇りのない動機からトモノリと交流しているのだとしても、トモノリも同じとは限らない。というよりも、トモノリはトモノリなのだから、なんらかの邪な企みを胸に秘めている可能性が高い。いや、絶対にそうだ。そうに決まっている。
なんとかしないと。
取り返しがつかない事態に陥る前に、湯田さんを救わないと。
二人に密接な繋がりがあるのを承知しているのは、現時点では、本人を除けば俺一人だけ。
どうにかできるのは俺しかいない。俺がどうにかするしかない。どうにかしなければ。どうにかしたい!
自己暗示をかけるように胸の内で呟きながら、隼人は己の一部を愚直に刺激しつづける。浅ましい行為は二人が対話を終えるまで続いた。
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる