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特別強く打っているわけではないにもかかわらず、鼓動の音がやけにくっきりと聞こえることがある。
「今週末、うちの両親が海外旅行に行って家を空けるから、みんなで遊びに来てよ。もちろん泊まりで」
休み時間、樹音がいつものメンバーの顔を見回しながらそう告げたとき、真理愛はまさにその現象を体験した。
「湯田、あんたも参加。強制ね。どうせ友だちがいなくて暇なんだから、付き合ってよね」
樹音は樹音らしく一方的に命じた。
真理愛がうなずくと、樹音はさっさと仲間との会話に戻った。今週日曜日の予定はどうかと、一人一人順番に訊いて回っている。たまたま予定が空いていたのか、実質的に強制なので無理やり空けることにしたのか、みな判で押したように「暇だから参加できる」という趣旨の返事をしている。
グループのメンバー全員の参加が確定すると、一同はそれについての話で盛り上がった。一人置き去りにされた格好の真理愛は、いつ話を振られてもいいように最低限話の筋を耳で追う。それに並行して、こう考えた。
樹音の両親が不在になる夜が来る。川真田家はたしか、樹音と両親の三人家族だったはず。すなわち、当日、川真田家にいるのはグループの女子たちとわたしだけ。
樹音たちを鏖にする絶好のチャンスだ。
あまりにも突然の幸運に、動揺を隠せない。その意味で、樹音たちが仲間内だけで盛り上がってくれたのは幸いだった。
ただ、真の意味で仲睦まじい者同士だけで楽しい時間を過ごしたいなら、真理愛をわざわざ誘う必要はないわけであって。
「誰の邪魔も入らない環境だから、やりたい放題できるよ。正真正銘のやりたい放題」
「どうやって虐待する? 道具なんかも揃ってるし、いろいろできそうだよね」
「そのときの気分、っていうのも味気ないしな。ゲーム感覚でやったら面白そうだけど」
「そうだね。順位を競い合って、最下位は罰ゲームとか」
「いやいや、罰ゲームはあいつ一人で充分でしょ」
一同の話題はいつの間にか、真理愛をいかに虐げるかに移行している。申し訳程度に抑制した声と、頻繁に投げかけられる上目遣いの一瞥が、いかにもわざとらしい。
どうせわたしのことを小馬鹿にしているんだろうけど、真の愚か者はお前らだよ、川真田とその金魚の糞ども。今までさんざんいじめてきた弱い人間の手で鏖にされるとも知らないで。あと二日の命だとも知らないで。せいぜい粋がってろ、馬鹿どもが。
心の中でこれ以上罵言を吐くと、笑みが表出しそうな気がして、真理愛は頭の中を意識的に空にした。
「今週末、うちの両親が海外旅行に行って家を空けるから、みんなで遊びに来てよ。もちろん泊まりで」
休み時間、樹音がいつものメンバーの顔を見回しながらそう告げたとき、真理愛はまさにその現象を体験した。
「湯田、あんたも参加。強制ね。どうせ友だちがいなくて暇なんだから、付き合ってよね」
樹音は樹音らしく一方的に命じた。
真理愛がうなずくと、樹音はさっさと仲間との会話に戻った。今週日曜日の予定はどうかと、一人一人順番に訊いて回っている。たまたま予定が空いていたのか、実質的に強制なので無理やり空けることにしたのか、みな判で押したように「暇だから参加できる」という趣旨の返事をしている。
グループのメンバー全員の参加が確定すると、一同はそれについての話で盛り上がった。一人置き去りにされた格好の真理愛は、いつ話を振られてもいいように最低限話の筋を耳で追う。それに並行して、こう考えた。
樹音の両親が不在になる夜が来る。川真田家はたしか、樹音と両親の三人家族だったはず。すなわち、当日、川真田家にいるのはグループの女子たちとわたしだけ。
樹音たちを鏖にする絶好のチャンスだ。
あまりにも突然の幸運に、動揺を隠せない。その意味で、樹音たちが仲間内だけで盛り上がってくれたのは幸いだった。
ただ、真の意味で仲睦まじい者同士だけで楽しい時間を過ごしたいなら、真理愛をわざわざ誘う必要はないわけであって。
「誰の邪魔も入らない環境だから、やりたい放題できるよ。正真正銘のやりたい放題」
「どうやって虐待する? 道具なんかも揃ってるし、いろいろできそうだよね」
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「そうだね。順位を競い合って、最下位は罰ゲームとか」
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一同の話題はいつの間にか、真理愛をいかに虐げるかに移行している。申し訳程度に抑制した声と、頻繁に投げかけられる上目遣いの一瞥が、いかにもわざとらしい。
どうせわたしのことを小馬鹿にしているんだろうけど、真の愚か者はお前らだよ、川真田とその金魚の糞ども。今までさんざんいじめてきた弱い人間の手で鏖にされるとも知らないで。あと二日の命だとも知らないで。せいぜい粋がってろ、馬鹿どもが。
心の中でこれ以上罵言を吐くと、笑みが表出しそうな気がして、真理愛は頭の中を意識的に空にした。
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