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繰り返された
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一週間ぶりに「ミヤグニ心療内科」を訪れると、先週と同じく待合室でゴスロリ女史を見かけた。しかし彼女は僕に一瞥をくれることすらなく帰って行き、やがて僕の診察の番が回ってきた。
「ニシハラさん、どうですか。一週間お薬を飲んでみて、体調や精神状態に変化はありましたか?」
と、ミヤグニ医師。相変わらずバーコードヘアに丸眼鏡、温厚な笑顔。
「特に変わりないですね、心も体も。全然変わりないです」
包み隠さずに答えた。あまりにも変わりがなさすぎて、今朝、薬をうっかり飲み忘れそうになるという小事件があったが、薬は毎日ちゃんと飲みましたかと訊かれたわけではないので、そう答えるに留めた。
「働かなければいけないことは分かっているが働く気になれない、とのことでしたが、この一週間で、労働に対する意識、考え方などに変化はありましたか?」
「いえ、全然」
「そうですか。はあ、はあ。なるほど、なるほど……」
ミヤグニ医師は何度も頷きながら椅子を回し、キーボードをかたかたっとやり、またこちらを向いた。
「そういうことでしたら、また同じお薬を出しておきますね。前回と同じで、一日二錠。七日分出しておきますので、また一週間様子を見てみましょう」
「同じ薬って、不安が和らぐ薬のことですか」
「はい、そうです」
「その不安が和らぐ薬というのは、要するに、なんなんですか?」
ミヤグニ医師は眼鏡のブリッジを右手の中指で押し上げ、答えた。
「不安が和らぐお薬は、不安が和らぐお薬です。それ以上でもそれ以下でもありません。ではニシハラさん、お大事に」
*
心療内科から帰宅し、庭の片隅のひょろ長い雑草の穂先を見てみると、カメムシが二匹いた。確証はないが、日曜日にもいた二匹だと思われる。いること自体はまあいいとして、尻をくっつけ合って交尾をしていたのには呆れた。よほど頻繁にしているのか、それともまさか、三日前からずっとしているのか。
「ニシハラさん、どうですか。一週間お薬を飲んでみて、体調や精神状態に変化はありましたか?」
と、ミヤグニ医師。相変わらずバーコードヘアに丸眼鏡、温厚な笑顔。
「特に変わりないですね、心も体も。全然変わりないです」
包み隠さずに答えた。あまりにも変わりがなさすぎて、今朝、薬をうっかり飲み忘れそうになるという小事件があったが、薬は毎日ちゃんと飲みましたかと訊かれたわけではないので、そう答えるに留めた。
「働かなければいけないことは分かっているが働く気になれない、とのことでしたが、この一週間で、労働に対する意識、考え方などに変化はありましたか?」
「いえ、全然」
「そうですか。はあ、はあ。なるほど、なるほど……」
ミヤグニ医師は何度も頷きながら椅子を回し、キーボードをかたかたっとやり、またこちらを向いた。
「そういうことでしたら、また同じお薬を出しておきますね。前回と同じで、一日二錠。七日分出しておきますので、また一週間様子を見てみましょう」
「同じ薬って、不安が和らぐ薬のことですか」
「はい、そうです」
「その不安が和らぐ薬というのは、要するに、なんなんですか?」
ミヤグニ医師は眼鏡のブリッジを右手の中指で押し上げ、答えた。
「不安が和らぐお薬は、不安が和らぐお薬です。それ以上でもそれ以下でもありません。ではニシハラさん、お大事に」
*
心療内科から帰宅し、庭の片隅のひょろ長い雑草の穂先を見てみると、カメムシが二匹いた。確証はないが、日曜日にもいた二匹だと思われる。いること自体はまあいいとして、尻をくっつけ合って交尾をしていたのには呆れた。よほど頻繁にしているのか、それともまさか、三日前からずっとしているのか。
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