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学食でランチ
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待ち合わせ場所を決めていなかったが、学食でおごると言ったからには学食へ行けば会えるはず。昼休みになるとただちに目的地へ向かった。
学生食堂の中は、早くも学生たちで大いに賑わっている。元日の神社の境内、という比喩が一番しっくりくるだろうか。薄々想定していた事態だから驚きはないが、よくぞこれだけの人が集まるな、と呆れてしまう。
サチはピンク色の髪で目立つから、すぐに見つかるだろう。そう楽観して空間内を見回したが――いない。どこにも見当たらない。
すっぽかされたのかな。それとも、約束は口から出任せのでたらめだった?
「……そっか。そうだよな……」
冷静に考えてみろ。冷静に考えてみるんだ、籾山直太郎。あんなかわいい子が、俺みたいな魅力的じゃない男子といっしょに食事をしてくれる? 命を助けたとかならともかく、廊下でぶつかったお詫びとか、財布探しを手伝ってもらったお礼とか、そんなつまらない理由で? マンガやアニメの見過ぎだ。そんな出来すぎた展開が現実と化すなんて、有り得ない。
すっかり惨めな気持ちになった。このまま学食で食べるのも、なんか嫌だ。……帰ろうかな。
そう思ったとたん、慌ただしい足音を聞きとった。もしやと思って音源を見向くと――サチだ。額の入り口、すなわち俺が突っ立っている方に猛然と向かってくる。……胸の揺れがすげぇ。
「ごめんねー、待たせちゃって」
そう長い距離ではなかったし、全力疾走というわけでもなかったが、サチは肩で息をしている。呼吸が整うと僕に目を合わせ、高一にしては子どもっぽい笑顔を見せる。――今朝、俺を虜にした笑顔を。
「いや、待ってない。……なんて言うと嘘くさいけど、マジで待ってないから。三十秒とか、そのくらいかな」
「あっ、そうなんだ。どんぴしゃだね。運命感じちゃうね、運命」
「運命ねぇ。言うことがいちいち大げさだよな、サチって」
「大げさ? そうかなぁ」
「俺はそう思うけどね。まあ、それはともかく、メシの時間だからメシを食おうぜ」
「そうだね」
高校入学して以来、昼休み時間があったのが今日が初めてだから、当たり前だが俺もサチも学食を利用するのは初めてだ。学食内の様子や雰囲気、販売されているメニューについてなど、話題には事欠かさなかったので、沈黙が降りて気まずい思いをする事態は免れた。そうでなくても、サチは気さくに話しかけてきて、なおかつ気軽に話しかけられる人なので、重苦しい空気にはならなかっただろうが。
世間一般の学食と比べてどうなのかは知らないが、うちの学食はなかなかメニューが豊富だ。俺もサチも迷ったが、けっきょく、お互いに日替わり定食をオーダーした。
支払いを済ませ、トレイを手に空いた席を探す。そうする中で気がついたのは、周りの人間の視線がサチにかなり集中している、ということだ。髪の毛を派手なパステルピンクに染めていて、ブレザー越しにも分かるほど胸が大きく、上中下で分ければ文句なしで上にランクされるほどの美人なのだから、無理もない。
そんな彼女と行動をともにしている俺は、周りの人間からはどう思われているのだろう? 真実は俺にとって不愉快なものであると予想されるので、あまり考えたくない。ただ一つたしかなのは、嫉妬される立場に立たされるのも悪い気分ではない、ということだ。
「人、結構多いねー。もう少し遅い時間に来た方がよかったのかも」
「まあ、みんなも腹減ってるだろうし、しょうがないよ」
「あっ、それもそうだね」
「納得するの早すぎでしょ。サチはなんていうか、頭の造りがシンプルなんだな。よくも悪くも」
「そう? ありがとう! 直太郎って褒め上手なんだねー」
「いや、よくも悪くもって言ったんだけど。まあ、サチがそう思うなら――あっ、あった」
俺は左斜め前方を指差す。長いテーブルの端に、奇跡的に二人分の空きがある。
「ほんとだ。急げー!」
マナーもクソもなく走るサチについていき、誰かに横取りされるよりも早く空席に座る。俺たちは顔を見合わせ、安堵の笑みを交わした。サチは無邪気だから、こういうちょっとしたやりとりが凄く楽しかったりする。
学生食堂の中は、早くも学生たちで大いに賑わっている。元日の神社の境内、という比喩が一番しっくりくるだろうか。薄々想定していた事態だから驚きはないが、よくぞこれだけの人が集まるな、と呆れてしまう。
サチはピンク色の髪で目立つから、すぐに見つかるだろう。そう楽観して空間内を見回したが――いない。どこにも見当たらない。
すっぽかされたのかな。それとも、約束は口から出任せのでたらめだった?
「……そっか。そうだよな……」
冷静に考えてみろ。冷静に考えてみるんだ、籾山直太郎。あんなかわいい子が、俺みたいな魅力的じゃない男子といっしょに食事をしてくれる? 命を助けたとかならともかく、廊下でぶつかったお詫びとか、財布探しを手伝ってもらったお礼とか、そんなつまらない理由で? マンガやアニメの見過ぎだ。そんな出来すぎた展開が現実と化すなんて、有り得ない。
すっかり惨めな気持ちになった。このまま学食で食べるのも、なんか嫌だ。……帰ろうかな。
そう思ったとたん、慌ただしい足音を聞きとった。もしやと思って音源を見向くと――サチだ。額の入り口、すなわち俺が突っ立っている方に猛然と向かってくる。……胸の揺れがすげぇ。
「ごめんねー、待たせちゃって」
そう長い距離ではなかったし、全力疾走というわけでもなかったが、サチは肩で息をしている。呼吸が整うと僕に目を合わせ、高一にしては子どもっぽい笑顔を見せる。――今朝、俺を虜にした笑顔を。
「いや、待ってない。……なんて言うと嘘くさいけど、マジで待ってないから。三十秒とか、そのくらいかな」
「あっ、そうなんだ。どんぴしゃだね。運命感じちゃうね、運命」
「運命ねぇ。言うことがいちいち大げさだよな、サチって」
「大げさ? そうかなぁ」
「俺はそう思うけどね。まあ、それはともかく、メシの時間だからメシを食おうぜ」
「そうだね」
高校入学して以来、昼休み時間があったのが今日が初めてだから、当たり前だが俺もサチも学食を利用するのは初めてだ。学食内の様子や雰囲気、販売されているメニューについてなど、話題には事欠かさなかったので、沈黙が降りて気まずい思いをする事態は免れた。そうでなくても、サチは気さくに話しかけてきて、なおかつ気軽に話しかけられる人なので、重苦しい空気にはならなかっただろうが。
世間一般の学食と比べてどうなのかは知らないが、うちの学食はなかなかメニューが豊富だ。俺もサチも迷ったが、けっきょく、お互いに日替わり定食をオーダーした。
支払いを済ませ、トレイを手に空いた席を探す。そうする中で気がついたのは、周りの人間の視線がサチにかなり集中している、ということだ。髪の毛を派手なパステルピンクに染めていて、ブレザー越しにも分かるほど胸が大きく、上中下で分ければ文句なしで上にランクされるほどの美人なのだから、無理もない。
そんな彼女と行動をともにしている俺は、周りの人間からはどう思われているのだろう? 真実は俺にとって不愉快なものであると予想されるので、あまり考えたくない。ただ一つたしかなのは、嫉妬される立場に立たされるのも悪い気分ではない、ということだ。
「人、結構多いねー。もう少し遅い時間に来た方がよかったのかも」
「まあ、みんなも腹減ってるだろうし、しょうがないよ」
「あっ、それもそうだね」
「納得するの早すぎでしょ。サチはなんていうか、頭の造りがシンプルなんだな。よくも悪くも」
「そう? ありがとう! 直太郎って褒め上手なんだねー」
「いや、よくも悪くもって言ったんだけど。まあ、サチがそう思うなら――あっ、あった」
俺は左斜め前方を指差す。長いテーブルの端に、奇跡的に二人分の空きがある。
「ほんとだ。急げー!」
マナーもクソもなく走るサチについていき、誰かに横取りされるよりも早く空席に座る。俺たちは顔を見合わせ、安堵の笑みを交わした。サチは無邪気だから、こういうちょっとしたやりとりが凄く楽しかったりする。
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